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第二話


「はぁー…… 」

ユアンは似合わない暗いオーラを纏ってネルデン支部を歩いていた。清掃報告に支部にやって来たところ、朝に対峙したばかりの支部長アルヴァに呼び止めらた。そして、ヴィニーやユアンの努力も虚しく、ユアンのポートア本部への赴任が正式に発表されたことを聞かされたのだ。



ちょうど曲がり角を曲がってきたディランと鉢合わせした。

「よぉ、5時間ぶり。って……暗っ! なに? 結局そのまま決まったのか? 」

「あぁ、そうなんだよぉ。希望に満ち溢れてた未来が奈落の底に落ちてったよ」

ユアン何においても冗談を忘れない。が、今回はその冗談もスルーされた。

「ま、頑張れや。俺はカーター支部だけどな! 」

心底嬉しそうにディランが笑う。カーター地方は世界で最初に動物達が進化した場所であると言われ、今でも彼らの温床となっている。そのため、カーター支部は武闘派の者がこぞって集まるところとなっている。ユアンが狙っていたのもその支部だ。

「うわっ! いいなぁ」

「だろ! というわけで、お互い頑張ろうや」

「ま、決まったからにはちゃんとやるさ」

ユアンはにっと笑い、力こぶしを作って見せた。



誰がどこの支部に配置になったとか、実習中に怪我した奴がいるらしいとか、世間話をしながらユアンの帰り道にあるディランの実習マンションまで歩いた。ディランと別れ、夜道を1人行く。


大きな通りであるにもかかわらず、人っ子ひとりいないのは夜だからというわけではなく、この町、ネルデンの人々は動物達への恐怖心から外を出歩くことをやめてしまったからだ。地下通路を使って通勤通学、すべてを済ませていた。地下室で作物の栽培も行っている所もあれば、地上から入る玄関すらない建物すらある。なので、外を出歩くのは余程の物好きか管理人や大工ぐらいなのだ。


( よくずっと籠ってられるよな )

ユアンはネルデンに来たばかりの頃、灯りの漏れる窓を見上げ、よくそんなことを考えていた。ユアンはこの街の出ではない。近場で管理人育成学校があるのはこの街だけだった。ユアンの出身地であるレンディーは、田舎にあり、畑も市場だって外にあった。子ども達も外で遊んでいた。この街よりずっと動物達に襲われていたのに……だからこそ、この街の徹底した対策には衝撃を受けた。都会であり、かつ、財力があるからこそ成せる技なのだろう。



管理人室に戻るとヴィニーがパソコンの前で船を漕いでいた。もう還暦の近いヴィニーには身体的に辛いものがあるのだろう。起こさないように仮眠用ソファーの毛布をヴィニーに掛け、部屋の電気をすこし暗くして、睡眠の邪魔をしないように外に出る。

( 屋上に居ればブザーは聞こえるよな )

屋上の縁に座り、空を見上げ寝転がる。



窓を木でがっちりと固められている家も多く、街の大きさは街の周囲をぐるりと歩いても1時間もかからないほどと小さくはあるが、8万人が所狭しと住む都市とは到底思えない暗さだ。今夜は雲もなく、満天の星空が広がっていた。

( こんなに綺麗な空なのに見ないなんてもったいねぇよな )

ユアンはぼーっと空を眺めていた。と、いきなり勢いを付けて起き上がると後ろを振り向いた。



線が細く背の低い、髪を束ねてポニーテールにした女性、いや少女ががっくりと肩を落としていた。

「あーあ、折角驚かせようと思ったのにー。ユアンはいつでも気付いちゃうんだもんなぁ」

リアは育成学校の同級生で、ディランとユアンと共に3年間同じ教室で教育を受けた。ユアンの隣まで歩いてくるとユアンと同じように足を投げ出して座った。


「だったらもっと気配を消して近付かなくちゃだめだろう? あ、リアみたいなお子様には難しいか? 」

にっと笑って茶化す。

「うわっ、お子様じゃないし! ちょっと童顔なだけだし! もう16だからね! 」

必死に弁明するその行動がまた笑いを誘った。リア本人も言っているように、年相応の顔をしているかと訊かれると頷き難い。

「わーらーうーなぁー」


ぎゃあぎゃあと騒ぐ彼女もまたネルデルの、ユアンの所と通りを一本挟んで隣のマンションで実習中だ。

「実習はどうしたよ。すっぽかしてきたのか? 」

「そんなことな!……くはないけど……」

「あちゃー、さぼりか」

ユアンがからかうと、うぅーと黙りこくってしまった。


「お前、もう赴任先は決まったのか? 」

リアがぱっと顔をあげる。

「うん! カーター! 」

「は? お前もかよ! 」

リアは見た目こそおとなしそうにみえるが、実際は積極的に身軽で小さい身体を生かして戦い、育成学校時代の戦闘教科の成績は優秀だ。

「ユアンもカーター支部なの? 」

「いや、俺じゃなくディランがさ……」

「本当? 良かった。一人じゃ心細かったんだぁ」

ほっと息をつく。

「リア奥義 "人見知り" 発動ってか? 」

えへへと笑って頭をかく。今でこそ仲良く話しているが、知り合った頃は話しかけても返事は妙に間の空いた "うん" などだけだったのだ。


「で? ユアンはどこなの? 」

さっきまで忘れていたことを思い出し、ユアンは少しテンションが下がったように、ため息混じりに応える。

「……ポートア」

「え! すごいじゃん! おめでとう! 」

リアは目を輝かせて嬉しそうだ。まるでユアンとは正反対の表情だった。

「おめでたかねぇよぉ…… 俺もカーターに行きたかったっつの」

「あ、そっかぁ、言ってたね。うーん、じゃあ待ってるから早く来てね」

にっこりと笑って、ユアンが思いもしなかったことをいった。

「……なるほどね、わかった。待ってろ! 」

ユアンの目は火がついたようであった。

「うん! 」





登場人物をまとめてみました。

話が進むごとに書き加えて行こうと思います


メモに近いです…… 笑



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