第五夜
こんな夢を見た。
何でもよほど未来の事、数千年後の話と思われるが、自分が戦いをして運悪く敗北ために、生捕になって、敵の司令官の前に引き据えられた。
その頃の人はみんな背が高いようだ。そして、みんな長い髯を生やしていた。革の帯を締めて、それにレーザー銃を指している。背中には剣を背負っていた。それは野蛮な敵の種族(所詮、戦いは野蛮な方が勝つものだ。)の権力の象徴であって、特別な場合(敵の司令官の首をはねる時)にしか使わない。
もっとも、知的な我が種族にはそんな無意味な習慣はない。
敵の大将は、宇宙艦のブリッジの司令官の椅子に腰かけていた。それはとても硬そうな椅子で、三十分も腰かけていたら尻が痛くなりそうだった。
自分は虜だから、腰かける訳には行かない。床の上に胡坐をかいていた。裸足だった。戦いの終盤、その混乱の中、いつ・何処で脱げたのか覚えがなかった。
敵司令官は自分の顔を見て、死ぬか生きるかと聞いた。これはその頃の習慣のようで、捕虜には誰でも一応はこう聞くようである。生きると答えると降参した意味で、死ぬと言うと屈服しないという事になる。自分は一言死ぬと答えた。
敵司令官は背中の剣に手をかけた。自分は両手で押し止める合図をした。敵司令官は剣から手を離した。
その頃でも恋はある。自分は死ぬ前に一目思う女に会いたいと言った。敵司令官は六宇宙標準時間だけなら待つと言った。六宇宙時間が経過するまでに女をここへ呼ばなければならない。六宇宙時間が経過しても女が来なければ、自分は逢わずに殺されてしまう。
自分は拘束室に連れていかれた。
拘束室の壁にデジタル時計があった。
表示は「00:05:54:××・・・」
この時女は母星の宮殿にいた。
女は急いで宇宙エレベータに乗って、惑星軌道上の宇宙港に向かった。
女は自分が囚われている位置を確認した。距離は五光年。残り時間は五宇宙時間と少し・・・。安全な大型の宇宙艦を選んでいては間に合わない。小型(当然、それだけ危険だ。無事に目的地に着けるか分からない。)のそれも片道分の燃料で直ぐに出発しないと間に合わない・・・。
それでも女は迷わなかった。小型の宇宙艦に片道分だけの燃料を積むと直ぐに出発した。
操縦席の時計の表示は「00:04:54:××・・・」
女は迷わず小型宇宙艦の限界を超えたスピードをコンピュータに指示した・・・。
拘束室の壁の表示が「00:00:04:××・・・」になった時、“小型の宇宙艦が着いた”と自分を見張っていた敵兵が言った。
その男は“乗員は若い女がたった一人だ”と続けて言った。
自分は“自分の女だ”と言った。自分は“早く会わせて欲しい”と続けて言った。
しかし、三十分後拘束室に現れたのは女ではなく、敵の司令官だった。
司令官は言った。
「お前の女はなかなか美しい。それに知的で、しかりしている。正直、我々の種族でもなかなかいない。
あの女を私に譲ってくれないか?お前の首を刎ねて、自分のものにしてもいいが、それではおれの気持ちが治まらぬ。
お前の女を正式、正当に手に入れたい。
女をおれに譲ってくれたら、お前の命を助け城と使用人十人を与えよう。勿論、一生その城の中に住む事にはなるが・・・」
自分は迷わず言った。「女を譲る!」
司令官は肩を竦めて保安室を出て行った・・・。
あれから二十年・・・。
自分は小さな城の中に幽閉されている。使用人達の目は自分を見下しているが、私の命令を素直に聞いてくれる。自分はそんな生活にそれなりに満足している。
今日、城の外は王子(あの司令官の息子)の二十歳の誕生日に沸いている。
自分の母星では自分が囚われると直ぐに革命が起きて国民政府が成立(誰も抵抗しなかった)し、国民達は歓喜した。今、二つの惑星は友好的な関係にある。
女を裏切り国民に嫌われた自分を、自分が生きている限り嫌いだ。
でも、死ねはしない・・・。
自分はそんな男だ。




