表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

第二夜

 こんな夢を見た。

 坊主の居室を出て自分の部屋に向かった。

 ルーム・ナンバーは「3565」

 研究所のコンピュータにログインする時に使っているパスワードの一部と同じなのは、単なる偶然なのだろうか?

 宿泊者達の寝室が、ロッカー式墓地のように続いている。でも、今、この山寺に実際にいるのは坊主と二人だけだ。こんな山寺に何千人も修行に来るとも思えない。意味の無いものが続いていて、果てが見えなかった。

 どれくらい歩いただろう?ルーム・ナンバー「3565」の前に来た。

 部屋のドアを押すと、苦も無く開いた。こんな山の中のボロ寺の、無数にある部屋のたった一人の宿泊者の部屋に鍵など必要ないという事だ。部屋の中にはベッドがあるだけで、テーブルも無ければテレビもない。勿論、電話もない。上着の内ポケットから携帯電話を出したが、予想通り「圏外」だった。

 もともと、テレビなど見ないのでテレビがないのは構わないが、インターネットができないのは正直寂しかった。

 今夜は我がジャイアンツはどうなっているのだろう?ヤフーのプロ野球サイトの試合経過に伴なう“負け犬どもの遠吠えコメント”を今日は読めないのは残念だ!それから、あのアダルトサイトは更新されているのだろうか・・・?


 庭の出る扉があった。

 庭に出ると満月で真昼のように明るかった。庭は荒れ放題だった。振り返ると、自分がたった今出てきた山寺がそこにあった。小さな今にも崩れそうな建物で、幅は十メートルもなさそうだ。奥行きもその程度だ。

 それでも、つい先永遠とも思われる廊下を歩いた事を別段不自然に思わなかった。

 辺りを見回すと、三百六十度同じ高さの山に囲まれているのに気づいた。

 これではどちらが街なのか見当もつかない。ここを逃げ出す事は出来そうになかった・・・。

 それにしても、ここまでどうやって来たのだろう?記憶が全くなかった。


 糞坊主(※)は言った。

「宇宙の果てはどうなっているか?分かるまい!


 こんな山寺の坊主にも分かっているのにお前に分からないのなら、お前の知識など偽者だ。お前の地位もお笑い草だ・・・。明け方までに悟られなかったら、お前は偽者だ」


 糞坊主の右目が笑っていた。

 左目は黒目が異常に大きく、そこには何も写っていなかった。


 明け方までには、まだ数時間ある。それまでに宇宙の果てを理解してやる!理解して糞坊主のあの禿げ頭・・・。禿げ頭は差別用語になるのか?なら、あのスキン・ヘッドを殴ってやる。

 もし、宇宙の果てを理解できずにあのスキン・ヘッドを殴れなかったら、この山寺を出て行く。そしたら百パーセントあの山中で野垂れ死にだ。そして、三百パーセントおれの死体は誰にも発見されない・・・。

 でもここで生き恥を曝すより、その方が何倍もマシだ。

 おれは部屋の中に戻った。

 窓から差し込む月明かりで、ベッドだけの部屋がますます寒々しかった。


 宇宙の果てはどうなっている?

 第一、宇宙に果てなどあるのだろうか?

 この宇宙は百三十七億年前のビック・バンから始まり、それ以来この宇宙は光速で広がっているのなら、もし光速の何千・何万倍で航宙が出来る宇宙艦が地球の東の空から旅立ったら、いつしか宇宙を一回りして西の空から現れるのではないだろうか?

 それとも、やはり宇宙には果てがあり、宇宙艦が宇宙の果ての一線を越えたら消滅してしまうのだろうか?もし、消滅してしまうとしたらそれは何処へ行くのだろう?

 少なくとも『宇宙の果ての壁に衝突』はないだろう・・・。

 ひょっとすると、別の宇宙への入り口があるかもしれない・・・?


 考えが何度も何度もどうどう巡りをした。

 何時しか、辺りが明るくなってきた。夜明けが近いのだ!

 結局、分からなかった。

 こうなったら予定変更だ!宇宙の果てがどうなっているかは分からないが、構うものか!あの糞坊主の禿げ頭、失礼、スキン・ヘッドを殴り、この山寺を出よう。そして、山中で野垂れ死にしよう!


 糞坊主の居室に向かった。

 廊下に出るとあの無意味な宿泊者の寝室が続いていて、やはり果てが見えなかった。でも、いつしか糞坊主に居室に着いた。

「糞坊主」と、叫びながら糞坊主の居室に踏み込んだ・・・。

 

 そこは、暗黒の世界だった。

“ああ、ここはあの糞坊主の左目だ”と思った。“ここはブラック・ホールだ。ブラック・ホールに飲み込まれたのだ”

 体が空中を漂っているの感じ、体が何処かへ向かっているのを感じた。

 どれくらい経っただろう?ほんの数秒のようにも、永遠の時(?)が経ったようにも思えた・・・。


 そして、放り出された。

 そこは・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ