5つめ:じかく、じかく、じかく
長く間空けてすみません。
ちょっといろいろありまして。
間あけてしまったせいで今までと少し雰囲気がちがっちゃってるかもしれませんが、どうかお許しください。
西校舎屋上。普段ここは立ち入り禁止で鍵が掛ってるんだけど、俺と文也は入れる。
兄貴から貰った屋上の鍵。
当時、兄貴の大瑚と天子の兄の律には仲の良い若い先生がいて、先生が秘密で合鍵を作ってくれたらしー。
現在、その先生は他の学校に行っちゃったし、兄貴たちも大学生だから鍵は必要ないって。
俺はその鍵でもう一つ合鍵を作って、文也にやった。だから俺らだけ自由に屋上に出入りできんだ。
入学してから天気のいい日はいつも来てるけど、いままで誰にも会ったことは無いから、今んとこ俺らだけの憩いの場になってる。カナ?
今日も誰にも見つかんよーに階段をあがり、ドアを3回叩いてから、鍵開けて、ドア開けて、入って、閉めて、鍵掛けた。
3回叩くのは俺たちの合図みたいなもんだ。
「あぁ──やっぱ気持ちーや」
のびーっとして辺り見回す。
屋上には兄貴たちがどっかから持ち込んだベンチ3つとアルミ製のあみあみのゴミ箱、それから遊び道具とかレジャーシートとかが入ってる箱が2つある。
俺はベンチの1つに寝転がっておにぎりを食べながらゆっくり流れる雲を見ていた。
“いーよなー雲は”
コンコンコン--ガチャガチャ--キィー
「あれ?早いな恵介」
文也はそう言ってもう1つのベンチに座ってご飯を食べる。
「今日は天子が勝手に弁当作っちゃったの、だから早いの」
「ふーん、手作り弁当ねぇうらやましい」
「お前さー、毎回あんな高い学食食えるほうがよっぽどいいぜー。坊ちゃんはいいよなー」
ここの高校は“お金持ち”の人が通うことで有名な学校で、文也は大手企業の社長の息子。
6、7割の生徒が毎日送り迎えをしてもらっている。チャリ通の俺にとっちゃ憎たらしい話だ。
「じゃこれやるから、お前の弁当くれよ」
「へ?ふざけんなこれは俺のだ」
「ふーん」
「・・・何がふーんだよ」
「お前さぁ、好きなんだろ?告らないの?」
「!!!」
ゴホゴホとむせりながら驚きの眼差しを文也に向ける。
「ったく何急に言い出すんだよ!!」
「好きなんじゃないの?」
「俺たちは幼馴染で・・・・」
「で?」
“早く言えよ”と恵介を促す。
「俺は・・・・天子の・・・・」
「天子の?」
「・・・・・・・・何なんだ?」
はぁ?とさせた顔をいつものクールな顔に戻して眼鏡をくいっとあげて文也は立ち上がった。
「お前さ、どこの誰が見たってお前は天子ちゃんのことが好きなようにしか見えないぞ!?」
「えっ?何?そーなの、俺ってそーゆー風に見られてたの?」
「見られてたも何も、一目瞭然だ」
びしっ言い放つ。
「うそ、そーなの?俺が?天子を?好き?えっと、好きってなんだ?好きなのか?俺、いつの間にか天子にすきをつかれてすきになってたの?うっそー信じられない、驚きだよ、驚かすなよ、驚かされたよ?つーか文也、なんで俺に教えちゃうわけ?教えていいことと悪いことがあんだろ?こーゆーのは本人が気づくまでそっとしておくもんだろー?きゃー意識したらなんかむずがゆくなって来ちゃったじゃんか!!・・・・・・・・・・はぁぁぁぁ〜」
紅茶を優雅に飲みながら“あれ?やっと終わったの?”と恵介を見て「頑張ってね」と言った。
恵介は曖昧な返事をしてお弁当の残りを食べ始めた。
「いいんじゃないか?少しは自覚しといたって。何か発展するかもしれないしな。今は席替えして、天子ちゃん後ろで一人の席だからあんまり悪い虫付くことも無いだろうしね」
天子のことを好きだと自覚してしまった恵介、何か面白いことないかなと楽しそうにする文也だった。
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