第五話: 星々の導き
【第五話: 星々の導き】
1.
かつて戦乱に見舞われた王国に、ついに平和が訪れた。人々は喜び合い、街角では至るところで祝祭の態勢が見受けられた。
勇者たちの活躍を祝う晩餐会が、王城で開かれた。勇者の一人である翔太は、仲間たちと笑顔でごちそうを味わっていた。
「おい翔太、お前さっきからずっと笑顔だぜ?」
「ああ、そりゃあおかしくてな。平和が戻れてよかったんだ」
はしゃぐ仲間たちの姿を見て、翔太は心の底から安堵した。しかし、運命のいたずらか、その晩、異変が起こる。
2.
突如、暗黒の力が街に忍び寄った。遥か彼方から、ある不気味な気配が迫ってくる。まるで全てを飲み込もうとするかのように。
「ぐわあああっ!?」
晩餐会場が暗闇に包まれ、大混乱に陥る。翔太は早速、街の外に飛び出した。
そこには巨大な翼を広げた魔物の姿があった。その圧倒的な力で、街は次第に蝕まれていく一方だった。
「くっ、なんてコテンパンな化け物だ...!」
翔太は仲間を呼び集め、魔法と剣を以て魔物に対抗する。しかし魔物の力には敵わず、次第に追い詰められていく。
3.
「ガハハハ!お前たちの力ではこの私に勝てるものか!」
不意に、魔物の咆哮が響いた。甲高い声と共に、魔物が放つ魔力の塊が勇者たちをさらに追い詰める。
「くそっ!このままじゃ世界が滅んでしまう!」
そんな絶望的な瞬間、ガルシア族長老が伝説の大魔導書の存在を教えてくれた。
「あの書にはかつて先人たちが、 最後の望みとして記した封印魔法が書かれているのだ」
「封印魔法...!? まさかあれを...!」
翔太は思わず目を見開いた。魔導書の封印魔法は、危険極まりないものとされていた。しかし今の事態を打開するには、それしか望みはなかった。
4.
ガルシア族長老から魔導書の在り処を聞き、翔太と仲間たちは古い神殿に急いだ。
しかしそこで驚くべき出来事が起きていた。暗黒の魔導師が現れ、既に魔導書を手に入れていたのだ。
「ぐはははは!望むところだった!」
その魔導師はたちまち、魔導書の力を解き放ち始めた。魔導書の奥に隠された力が、やがて街を蝕み始める。
「ならば俺たちもあの封印魔法で、お払い箱だ!」
魔物を倒そうと試みるが、どうしても魔導師の力が強すぎて、目的を果たせない。
「くそぅ...!このままじゃ俺たち、何も手に入れられねえ!」
絶望に打ちひしがれながらも、翔太は諦めきれずにいた。そんな折、日本の恩師のある言葉が頭をよぎった。
5.
昔、翔太が恩師に星の伝承を教わった時のことだった。
「占星術の根源は、星を見上げる事にある。星々の輝きを無視してはならぬ。その導きを感じ取ることから、未来を切り拓く力が湧いてくるのだ」
自分が星の加護を受けていると気づいたのは、この時のことだった。恩師の言葉を胸に刻み、翔太は今も星を見上げて生きているのだ。
「そうだ、俺は星の導きに従ってきた!俺自身が星の加護を受けているのだ!」
ふと、魔物との戦いで手にした大怪我の跡を見つめ直す。星の導きがあればきっとこの傷も癒されると信じたのだ。
6.
「おのれ...!星の導きを無視するものか!」
翔太は立ち上がり、再び仲間たちと魔道師に挑んだ。
そして遥か宇宙の彼方に、意識を向けた。
すると不思議なことに、星々の煌めきがこの惑星の上空に広がり始める。
「な、なんだ!?」
魔導師は戸惑い、露骨に不安げな表情を見せる。そしてその隙を翔太たちがついた。
「裏切り者め!この私の手から去れっ!」
翔太は仲間たちとともに、魔導書の封印呪文を唱え始める。魔導師の術中に割って入り、その魂を星々の煌めきに包み込んでいく。
「おのれらこの野郎らぁっ!」
魔導師の絶叫が聞こえたが、翔太たちはその呪文を止めることなく続行。
やがてそれはあまりの大きな魔力に、この次元を離れていってしまった。
7.
魔導師を封印してしまった翔太たちは、最後に大魔物に立ち向かった。
民衆の祈りが一つになり、王国全土から希望の光が放たれる。
そのエネルギーが翔太たちを守り、彼らに最後の力を与えた。
「この世界の平和を守る! 星々の導きを!!」
呪文と共に翔太たちから放たれた大魔力が、魔物を包み込む。
そして遂に地鳴りとともに魔物は封じられ、この惑星から去っていった。
晴れ渡る空からは、太陽がまた優しく光を放っていた。
人々は歓声を上げ、翔太を英雄と称えた。
しかしひとり、翔太は宇宙を見つめていた。恩師の助言を思い出し、新たな世界を目指す道を決意したのだ。
数日後、勇者としての役割を終え、翔太は占い師の一人旅に出発した。
旅立つ間際、ガルシア族長老から星の加護された杖を授かる。
「行きなさい、 未 知 なる世界へ」
「はい、私は星の導きに従い、世界中を見渡す所存です」
長老の言葉を胸に、翔太は新たな道を踏み出した。
終わりなき大いなる星々の導きを求め、新しい出会いを願いつつ。