第四話: 戦場の絆
【第四話: 戦場の絆】
春暖かな陽射しが、王国の平和を運んでくる。しかし遥か遠くの国境線では、ある兆しが垣間見られていた。
国境を挟んで相対する隣国の動きが、いつもより活発になってきたのだ。スパイの報告では、軍の動員が本格化したらしい。翔太たち勇者の一行は、危惧を抱かずにはいられなかった。
「戒厳令が敷かれ始めたようです。いつ戦が始まってもおかしくありません」
ガルシア族の長老がそう伝えると、翔太は険しい表情を見せた。
そしていずれ予想された通り、一報が入った。隣国から兵を動かし、突如として国境線を越えて侵攻を開始したというのだ。
「行くぞ!我が国を守るため、勇者の力が必要とされている!」
翔太は仲間たちを従え、王国軍に合流して戦地へと赴く。
一行が到着した戦場では、すでに銃火と剣戟が絶え間なく交わされていた。王国軍は隣国の猛攻に苦しめられ、次第に劣勢に立たされていく。
「翔太お主!我らに勝機はありません!」
そう言って、剣を持ちながら這う王国軍兵が現れる。翔太はその哀れな姿に言葉を失ったが、早速行動に移った。
不気味な雲行きが戦場に垂れ込めていく中、翔太は星々の導きを求め、仲間たちと共に王国軍を率いて反撃を開始する。
しかし隣国軍に圧倒されたのか、勇者たちの立場は一時的に窮地に立たされてしまった。
魔法の行使や武器の使用を許可されているにもかかわらず、敵の数は絶え間なく現れ、容易には退けられなかった。
「くそっ...このままでは、全軍が壊滅してしまう!」
翔太は心の底から危機感を募らせる。剣を振るう腕も徐々に重くなり、足元も乱れていった。
そんな中、一人の仲間が翔太に声を掛けてくる。
「離れ離れになってはダメだ!私たち勇者の絆を信じるんだ!」
絶望的な状況の中で、仲間の言葉が翔太の心に火を灯した。
「そうだ...!私たちには特別な絆がある!この試練に打ち勝つため、強い決意を持たねばならない!」
そう呟きながら、翔太はもう一度戦場を見渡す。
王国軍の惨状を見て、気持ちを奮い立たせた。
そして不思議なことに、翔太の周りに輝く星屑が舞い始め、仲間たちを包み込む。
その現象は徐々に広がり、遂に戦場全体に星屑の光が差し込むようになっていった。
「おのれたちに、私の国を傷つけさせるものか!」
翔太は叫び声を上げると同時に、持っていた剣に莫大なる魔力を注ぎ込んだ。
その剣から、まばゆい光が放たれる。
その一撃を合図に、勇者たち一行は再び隣国軍へと切り込んでいく。星屑の光と勇者たちの剣戟が相まって、王国軍の戦力は一気に回復。隣国軍は押し返されていった。
やがて戦場の一角に、双方の大将同士によるひとくくりの戦いが始まる。
隣国大将の手にかかれば、戦況は決すると思われた。
「王国の野郎ども!この私がついにおまえらを倒す!」
隣国大将は豪語し、禍々しい大剣を翔太に向けた。
「そうはいかせない!国民のためにここは倒れられない!」
剣を交える二人の間に、高熱の攻防が幕を開ける。
しかし隣国大将の力は翔太の想像を絶するものだった。翔太の防御は幾度となく突き破られ、遂には地面に体勢を潰されてしまう。
「はあ...はあ...」
そのたび、勇者仲間の声援が背中を押してくれた。
「負けるな翔太!俺たちは絶対におまえを見捨てない!」
「ああ、もちろんだ!俺にはみんながいる!」
翔太は仲間の気持ちに支えられながら、立ち上がる。
そして大将に向かって、念入りな構えを取った。
「おのれの野望をここで断ち切る!」
二人の剣が打ち合い、火の粉が弾ける。
そのたび、翔太の剣に込められた魂の力が、大将を押し返していく。
遂に翔太は仲間の想いと絆の力を振りかざし、大将の剣を叩き折った。
大将が動揺していると、翔太は大げさに構えを崩し、ある呪文を唱え始める。
「汝の望みを...永遠の眠りに_」
その瞬間、大気中の星々の煌めきが集まり、大きな魔力の渦が巻き起こる。
そしてその渦が大将に向かって放たれた。
打ちのめされた大将は身動きがとれなくなり、睡りに就いた。
それにより、隣国軍は混乱に陥り、戦意を失っていく。
王国軍から大歓声が沸き起こる。
勝利の立役者である翔太は、仲間たちに笑顔で迎えられた。
かくして勇者たちの力と絆により、戦乱の世は終結を迎える。
そしてこの戦いを経て、翔太は新たな力を手に入れたのだった。