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第三話:異世界からの訪問者

【第三話:異世界からの訪問者】


1.

晴れ渡る朝日が王都に差し込む。勇者たちの活躍により、ひとまず平和が戻った。


翔太は城下町のカフェで一服していた。そこへ、見知らぬ男が現れる。


「あなたが翔太くんですね。よろしくお願いします」


男の様子は、まるで日本人のようだった。しかし翔太はこの世界に生まれた。


「私は日本から、あなたの帰還を手伝しに来ました」


男はそう切り出した。翔太は絶句し、戸惑いの色を浮かべた。


「日本...?そんな国は存じ上げません。一体どういうことですか?」


隣の客が振り返るほどの大きな声で、男は話し始めた。


2.

「2年前、あなたは病院で昏睡状態にあり、私はその最中に別の世界に意識を転移させられたのです」


男の不可解な言葉に、翔太は首を傾げた。


「そのとき、この世界であなたの姿を見かけたのです。きっとこの世界に神々に選ばれて、転移してきたのでしょう」


しかし翔太にはその言葉が理解できなかった。この世界に生を受け、両親に愛され、幼少期を過ごした思い出が胸に去来する。


男の言葉を聞いても、翔太の心に引っ掛かるものは何もなかった。むしろこの世界を守る使命を与えられていると確信していた。


「では、両親に会うために、帰還してはどうですか?」


そう男が言うと、翔太は静かに答えた。


「申し訳ありませんが、そのような両親は存じません。私はこの世界が故郷であり、皆様を守る義務がある者なのです」


3.

言葉を失った男に、翔太はさらに続けた。


「昔、自分が他の世界から来たという手紙を受け取りましたが、それがいつの間にか途絶えてしまいました。きっとそれは私を試す、何者かの仕掛けだったのでしょう」


男はしばし黙り込んだ後、ため息をついた。


「そうですか...分かりました。では、もうこの世界に帰る事はできません。申し訳ありませんでした」


男は肩を落とし、立ち去ろうとした。それを見た翔太は、慌ててその男を呼び止めようとしたが、

ある老人の声が二人の耳に飛び込んできた。


「では、その手紙は誰からの導きであったのだ?」


4.

老人は長身の上着に身を包み、長い銀髪を垂らしていた。

二人を見つめながら、静かに、しかし威厳に満ちた口調で言葉を続けた。


「君は、この世界に守護者として選ばれし者。我々ガルシア族の長老に、その儀式を執り行われたのだ」


翔太はその言葉に思わず膝を下ろした。

ガルシア族の老長は敬われる存在だったのだ。


「僕には、ここで戦う使命がある。それは守護者への道しるべとして、はるばる遠くの国からの手紙だったのでしょうか」


長老は頷き、そう答えた。


「その通りだ。だが今、汝の使命は新たな局面を迎えようとしている。各地で魔物の気配が醸し出され始めている」


5.

さらに長老は続けた。


「この世界は平和を守るため、守護者が必要なのだ。今こそ汝が全力を尽くす時である」


心なしか、遠くから獣の雄叫びが聞こえた気がした。


長老の言葉に、翔太の胸中に熱い決意が渦巻いた。


「分かりました。私はこの世界の守護者として尽力する所存です!」


そう言い残し、翔太は仲間を募るべく、街へと走り出した。


6.

翌日、街角に勇者たちが集まっていた。翔太の仲間たちだ。


「みなさん、私たちに新たなる試練が訪れようとしています。しかし、そこから逃げ出すつもりはありません!」


勇気ある勇者たちは翔太の呼びかけに応えた。


「我らには特別な力が備わっている。ガルシア族長老からも示された通り、この世界の平和を守り抜くことが使命なのです!」


翔太の言葉に、仲間たちは剣を振るった。

時を同じくして、獣の雄叫びが街中に鳴り響いた。


「行くぞ!魔物の巣に!」


翔太の導きの下、勇者たちは血気にあふれながら街を駆け抜けていった。奇しくも、太陽が雲によって少しずつ覆われていく。

まるで、新たなる闇が訪れようとしていた。

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