第一話:異世界への招待
【第一話:異世界への招待】
大山翔太は、現代日本で小さな占い師の店を営んでいた。彼の占いは的中率が高いと評判だったが、なかなか客足は伸びない。ある日、翔太の元にひとりの青年が訪れた。青年は「将来の夢が見つからない」と悩みを打ち明ける。翔太は星々に導きを求め、水晶玉を覗き込むが、何も見えてこない。いつになく集中できず、うまく占いができない。
落ち込んだ翔太はその日、いつもより遅く店を閉めた。トボトボと家路につく翔太だったが、途中で立ち寄った公園で不思議な光を目にする。近づいてみると、その光は翔太を包み込むように輝きを増していった。目を閉じた翔太が再び目を開けると、そこは見知らぬ異世界だった。
翔太が立っていたのは、まるで中世ヨーロッパのような街並み。石畳の通りを、鎧を着込んだ騎士たちが歩いている。魔法使いのようなローブを羽織った人々の姿もある。剣と魔法のファンタジーの世界に迷い込んでしまったようだ。
呆然とする翔太に、ひとりの少女が声をかけた。「あなたも、"異世界から召喚された勇者"なのですね!」。少女の名前はカティア。この世界に古くから伝わる伝説によれば、世界が危機に瀕した時、異世界から勇者が召喚されるのだという。
カティアの案内で、翔太は占い師ギルドを訪れる。そこでギルドのマスター、ガルシアと出会った。ガルシアは翔太の力を見抜き、弟子入りを持ちかける。「星々の導きを読み解く力は、この世界でも有用だろう」と。
ギルドには個性豊かな仲間たちがいた。気の強い剣士の少女・カティア。物静かだが魔法の腕は確かな青年・リオン。人懐っこい笑顔が魅力的な占い師・セレスタ。翔太はすぐにギルドに馴染み、充実した日々を送るようになる。
ガルシアのもとで修行を積む翔太。しかし、占いがうまくいかない日が続いた。「この世界の星々の動きが、僕にはまだよく分からない」と翔太は悩む。すると、セレスタが翔太に助言をくれた。「星々の声に耳を澄ませて。あなたにしか聞こえない、大切なメッセージがきっとあるはず」と。
セレスタの言葉を胸に、翔太は星空を見上げる。すると、星々が輝きを増し、まるで翔太に語りかけてくるかのよう。「私たちはいつもあなたを見守っています。あなたの力を信じて」。星々のメッセージを受け取った翔太は、自信を取り戻していく。
ある日、占いの最中に翔太は不思議な映像を目にする。それは、剣士たちが魔物と戦う姿だった。翔太がギルドの仲間たちにそのことを話すと、リオンが言った。「それは予知能力だ。優れた占い師だけが持つ力だと言われている」。
その夜、翔太は星々からのメッセージを受け取る。「あなたの力は、剣の力にも匹敵する。仲間たちと共に、この世界を救ってください」。翔太は、占い師として、そしてこの世界の勇者として、新たな使命を自覚する。
ギルド仲間たちと共に、剣術や魔法の手ほどきを受ける翔太。日本では味わえなかった、刺激的な毎日だ。時折、日本での生活や両親のことを思い出すが、「この世界で自分にしかできないことがある」と、翔太は前を向いて生きる決意をする。
そんなある日、カティアがギルドに飛び込んできた。「大変よ、マスター。王宮からの知らせです。第二王女が魔物に攫われたそうです!」。事態を聞いたガルシアは、「これは占星術師の出番だな」と、翔太に救出任務への同行を命じる。
翌朝、翔太は仲間たちと共に王宮へと向かった。王宮では国王から事の詳細を伺う。王女は先日、近くの森へ狩りに出かけたまま戻らないのだという。翔太は占星術で王女の居場所を探ろうと試みる。初めはうまくいかなかったが、星々を信じる翔太の力は、やがて王女の居場所を示してくれた。
星々の導きに従い、森の奥深くへと分け入る翔太たち。道中、魔物の襲撃にも遭ったが、仲間たちの力を借りて撃退する。ようやく王女のもとにたどり着いた翔太たちだったが、そこには凶暴な魔物が立ちはだかっていた。
カティアとリオン、そしてセレスタが魔物と戦う中、翔太は王女の救出に向かう。魔物に気づかれないよう、そっと王女に近づいた翔太だったが、不運にも魔物に見つかってしまう。牙をむき出しにして襲いかかる魔物。絶体絶命の瞬間、翔太の手が不思議な光に包まれた。
次の瞬間、翔太の手には星々の光を放つ剣が握られていた。導かれるまま、翔太はその剣を振るう。不思議な力が魔物を切り裂き、あっという間に魔物は倒れた。あまりの出来事に、翔太も仲間たちも言葉を失う。
王女を無事に救出し、王宮に戻った翔太たち。国王から手厚い感謝を受けるが、翔太の頭の中は占星術と剣の力のことでいっぱいだった。自分には、まだ知らない力が備わっているのかもしれない。
王宮を後にした翔太は、星空を見上げる。「僕は、この世界で何をすべきなんだろう」。すると、星々が優しく瞬いた。まるで、「あなたの冒険は、まだ始まったばかり」と言っているかのように。
新たな力と使命を感じながら、翔太は仲間たちと共に、占い師ギルドへと戻っていく。これは、売れない占い師が異世界で英雄となる物語の、始まりに過ぎない。
翔太の異世界での冒険は、これからが本番だ。彼がどんな活躍を見せてくれるのか。心躍らせながら、私たちは彼の成長を見守っていこう。