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FILE.7 「帰りたいのに帰れない」

話は戻り、取調室へ。

局長によって突き付けられる現実に、美玖は出来る限り反抗するのだが。

「なんでっ!? なんで他のみんなは元の世界に帰れたのに、私だけダメなの!?」


 理不尽の連続で、美玖はついにブチ切れて机をバンバン叩きまくる。納得がいかない。説明も足りない。何もかもが不当だと言わんばかりに。

 それでも美玖がこれだけ喚いても、文句を言っても、白髪の局長は顔色ひとつ変えることなく淡々と事実だけを述べていった。


「それもさっき説明しましたよね。あなたは我々の言葉を理解出来る。この翻訳アミュレット無しに、ニノンやユーゴと会話をしていた。それは本来あり得ないことなんですよ」


 そう言って局長は左胸に付けていた、赤い宝石付きのバッジを美玖に見せる。

 一見するとそれは弁護士や議員が付けているようなバッジに似ていた。

 こんな小さなものなのに、翻訳機能という高性能っぽいことが出来るとは到底思えない程に小さい便利アイテム。

 彼の言葉に美玖は「あぁ」と生返事をした。

 確かにあの後、ただなんとなく彼らに話しかけたことを思い出す。


『みんなめっちゃ綺麗に染めてんじゃん! どこの美容院で染めたの?』


 ここが自分たちが住んでいた世界とは異なる場所だとやはり信じられず、美玖としてはちょっとしたカマをかけたつもりでニノンに話しかけた。

 軽いノリで、馴れ馴れしく。

 だがそうやって話しかけた瞬間、彼らが美玖のことを珍獣か何かを見るような表情に早変わりしたのは今でも覚えている。

 それから彼らだけで会議が始まって、あれこれと話し合った結果……こうなった。


「いや、なんでよ!」


 思い出した内容に、また突っ込む。

 それでも局長はコバエが飛んでる程度に流して、話を続けた。


「マヨイなら我々とはそもそも言語が違うんです。つまりあなたはなんらかの理由があって地球に迷い込んだ。つまりあなたは地球にとってのマヨイであり、実際は我々の世界の住民……ということになる」


 多分これはさっきも、バスのあった場所でも同じ説明を聞いた気がする。

 でもその時はあまりに唐突で、衝撃的で、頭が理解することを拒んだからかもしれない。


「だって、そんなこと言われて……あ、そうなんだーって納得出来るわけないじゃん。何よ、元々はこの世界の人間って。じゃあお母さんは? お父さんは? 私の本当の両親じゃないって言いたいわけ?」


 それこそあり得ない。なぜなら美玖が生まれた瞬間の写真が、動画が残されている。

 美玖を妊娠中だった母親の大きなお腹だって、母親の嬉しそうな表情をした写真を見せてもらった。

 幼稚園の入園式、卒園式、小学校の入学式、遠足、修学旅行、卒業式……。数え上げればきりがない。そこに写っていたのは紛れもなく、美玖本人なのだから。

 途中で地球にやって来た、迷い込んだ、なんてことは起きるはずがない。

 それをどう説明するつもりなんだと、そう反論しようとした矢先に局長が答える。説明する。


「ごく稀にあるんです。過去の報告事例だってある。まだ生まれていない胎児の状態で、なんらかの事故が発生して異世界に転移してしまう……という事象が。おそらくあなたはその類に入ると思われる。だからあなたが生まれる瞬間の証拠もあるし、途中で転移した可能性もない。生まれる前に転移したという事実だけが残るんです」

「はぁ~!?」


 何をどう言ったところで、この事実が覆ることはない。

 そう言われた美玖は胸の奥のムカムカとモヤモヤが取れないまま、最終的には無理やりにでも納得するしか道は残されていなかった。

 そして突き付けられた結論。結末。答え。結果。


「ようこそ、アルミナへ。今日から君は、マヨイ保護局の職員だ」


【アルミナ】

美玖たちが住む世界、地球とは全く異なる世界のこと。

近代的な街並みで、一見すると某有名作品に登場するようなファンタジー世界とは少々異なる。

しかし街中を見渡せば多種多様な人種が存在しており、乗り物や扱う道具などで、ここアルミナが地球にとってファンタジー世界であることがわかる。

基本的に「一般的な人間」が大半を占めており、エルフ、ドワーフ、ホビットといった種族とは共存関係にある。

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