FILE.4 「謎の集団」
ぷすぷすと焼け焦げた煙を上げて、黒焦げになっているもの。
地面に串刺しになったまま血まみれで動けなくなっているもの。
さっきまで耳に響いていた騒音や化け物の奇声が、嘘のように全くしなくなっていた。
化け物たちは、彼らの手によって一掃されたのだ。
「局長! オークの群れ、片付きました」
「ご苦労。まずはマヨイたちの安全確保、それから怪我人の治療を最優先」
局長と呼ばれた白髪の男性が次々に指示を出す。
最初に報告をしたのは、紫色の長い髪を三つ編みにした綺麗な女性だった。
まるで軍人のように敬礼をしている。
恰好からして、制服だろうか。
男女でデザインの差があるものの、どれも似たような恰好をしている。
「もう治療は開始してまーす! 偉いでしょ局長! ほめてほめて!」
可愛らしい声をした女の子が、さっき髪を掴まれて逃げようとしていたOLを介抱していた。
美玖はそこで信じられないものを、また目にすることになる。
オレンジ色のツインテールの女の子がOLに向かって両手をかざし、そこから優し気な光が放たれていた。
どこにも照明器具を持っている様子はない。
女の子の手のひらから発光しているようにしか見えなったのだ。
「お嬢さん」
呆気に取られていると、局長という役職で呼ばれた男性が美玖に話しかけてくる。
目の前の出来事が、自分に起きている出来事が、頭の中ですぐに処理出来ずに反応が遅れる。
その様子を察してか、局長はまた片膝をついて美玖に目線を合わせるとゆっくり話しかけた。
「お嬢さん、突然の出来事の連続で混乱しているのは承知しています。しかし事態を収拾するために、教えていただきたい。あなた方は全部で何名、こちらに迷い込んだのですか」
「え、えっと……」
美玖は命の恩人である彼の問いかけに答えようと、記憶を掘り返す。
バスに乗っていたのは何人だったか。
(えっと、まずは運転手さんでしょ? それから怒鳴ってたサラリーマンのおっさん、髪を掴まれたOLに、もう一人年配のおばさん、あとは私服で暗そうな大学生か社会人かどっちつかずの男の人……?)
指折り数えて確認する。
多分これで全部だと確信し「私を入れて六人だと思う」と答えた。
するとすぐさまその情報を全員に共有する。
「マヨイは全部で六名だ! 全員揃っているか確認を急げ!」
「あ、でも……サラリーマンのおじさんは、多分殺されたと思うんだけど」
小さく片手を挙げて美玖はサラリーマンの件を話した。
すると局長は気難しそうな顔から険しい表情へと変わり、さっきとは少しトーンの違う声で部下らしき人たちに向かって命令する。
「一人手遅れの者がいるらしい! ご年配の男性だ。ヨリ、至急蘇生術を行使しろ!」
「わかりました」
ヨリと呼ばれた女性は、さきほどの紫色の髪をした美人だった。凛々しい表情をしたヨリは、再び敬礼をしてからサラリーマンの遺体を探しに向かう。
【出現モンスター】
・オーク
外見は醜悪な豚。二足歩行、両手は四本指で武器なども扱える。申し訳程度に布の腰巻などを付けている。身長は二メートルほどで、集団を取りまとめるリーダーなどは二メートルを優に超える個体もいる。
人間の言葉は通じない。マヨイ保護局の局長が所持している翻訳アミュレットでも、会話によって彼らと意思疎通することは不可能。
ほとんどがオスで、人間の女性を襲うことで個体を増やしている。好戦的で種の増殖という本能で生きているので、よく民家などを襲う。
物理攻撃はもちろん、特に魔法攻撃が有効。オークの肉は不味いので食用には向いていない。素材としては牙や爪、臓器のいくつかが薬の素材となる。
定期的にギルドから討伐依頼があり、一集団の壊滅と素材売買によって一応の収入源にはなる。




