女子高生による、文化祭リアルメイド喫茶の計
「ファ〜ハァハッハッ」
すまない興奮のあまり笑いが止まらなくなった。
俺はしがない公務員、三十八歳の既婚者だ。今日は娘の通う女子高の文化祭に招待され……てないがやって来た。
◇
「キモいからお父さんは来なくていいよ」
ずいぶん遅い反抗期だな、娘よ。
「照れ屋さんめ。若いお父さんは、あまりいないから自慢したいはずだ」
「それがキモいの」
これが世代間ギャップか。まあ仕方ない。こっそり行くとしよう。
幸い招待カードに身分証があれば有効だ。カードは確保してある。
さて娘よ。格好いいお父さんが友達に騒がれる様を、歯噛みして悔しがるがいい。
……まずは娘のクラスの出し物へ先に行く必要がある。勝手にやって来たのに娘のクラスへ寄らないなど、三日は口を利かなくなる案件だ。
我が愛妻に良く似た娘に育ったものだ。まあメイド喫茶目当てなので、俺も強く言えない。
「待ってろよ、愛しの娘よ」
◇
「――――パスワードが必要です」
「えっ?」
娘のクラスはメイド喫茶をやっていた。しかし、眼鏡っ娘に入り口で止められた。
「娘さんの承認コードの用紙がなければ入れないのです」
マジか。そんな話しは聞いていないぞ。
「勝手に来てもどうせ入れないけどね」
あの時のニマッとした微笑みは、これか。
「一回千円で、イベントクエストに挑戦しますか?」
高い気がするが入店に必要な物のヒントが貰えるそうだ。仕方ないので、料金を払う。
「では、小枝チョコ、碁笥、雨合羽、ビー玉、アサリの貝殻をお持ち下さい」
「はぁ?!」
渡されたメモを見て、俺はかぐや姫かよ、と嘆く。
よく見ると、眼鏡っ娘の背中の青い看板には『愛のチャリティーイベントクエスト付 メイド風喫茶 かぐや姫』と書かれていた。
さらによく見ると、緑の文字で『募金協力していただいた方々にもれなくイベントクエストをプレゼント致します』 ――――そう書かれていた。
「詐欺だ」
俺は涙目で訴える。しかし眼鏡っ娘は動じない。
「違いますよ。ほら、後ろの入口は自由に入れますから」
――――何ですと??
中へ入ると普通に文化祭らしいメイド喫茶だった。
「お父さんなら引っかかると思ったよ」
悪い娘だ。何も言い返せない。珈琲とケーキを持って来てくれ娘が説明する。
「一応、クエストアイテムを集めると料金半額チケットが貰えるんだよ」
悔しいので文化祭が終了までに、クエストをこなしてやった。娘に呆れながら貰ったチケットは二度と使われないが、大切にしまっておいた。
お読みいただきありがとうございました。この物語は、なろうラジオ大賞5投稿作品となります。
・かぐや姫の幻の秘宝五品
蓬莱の玉の枝、火鼠の皮衣、仏の御石の鉢、龍の首の珠、燕の子安貝。
ネタを考えていると、ピンポイントでニュースが流れて来ます。現金払いの頃は、おつりの端数を募金箱に投入してました。チリも積もればではありませんが、募金で集めたお金は困っている方に届いて欲しいものですね。
応援、いいね、評価、ご感想等あればよろしくお願いします。