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極悪辺境伯の華麗なるメイド  作者: かしわしろ
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新たな見習いメイド3

海底神殿から帰還し、カルメラさんへの報告を終えた私たちは、自分たちの部屋へと向かっていた。

正直に言えば、体はとっくに限界を超えている。海底での戦闘、あの機械との死闘、そしてシーズロマンスの光——すべてが濃密すぎて、今はただ早くベッドに倒れ込みたかった。


リアもアナスタシアも同じ気持ちだろう。三人とも口数が少なくなっていた。

宿舎の廊下を歩いていると、見かけない顔ぶれとすれ違った。


「……メイド服。銀色のバッジ。」

私は思わず呟いた。銀色のバッジは見習いの証。つまり、私たちと同じ立場の人間がいるということだ。相手側もこちらに気づいたのか、その場に足を止めた。

三人。私たちが来た頃、見習いは私たちだけだった。


「私たちが来たときは、見習いは私たちだけだったから……新人?」

リアが首をかしげながらそう問いかけると、三人の新しいメイドが答えた。


「お初にお目にかかります。この度新たにグルンレイドのメイドの一員となりますクレアと申します。」

「オリビアです。」

「レイリンと言います。」

ここに来て数日というところだろうか。しかし三人ともグルンレイドの礼が様になっていた。まだ自分の魔力をほんの少ししか乗せることができていなかったが——それでもこの三人が凡人ではないということはわかる。礼に魔力を乗せるというのは、教わってすぐにできるようなことではない。


「初めまして。私は見習いのメルテ。同じ見習い同士だし、敬語は使わなくていいから。」

「アナスタシアですわ。」

「リアです。よろしく!」

本当はもう少し話をしたかった。どこから来たのか、どんな魔法が使えるのか、いくつなのか。気になることはいくらでもある。リアもアナスタシアも同じだろう。リアなんかは目をきらきらさせていたし、アナスタシアも好奇心を隠しきれていなかった。


でも今は、体が限界だ。


「それじゃあ、また。」

私がそう言うと、リアとアナスタシアも軽く手を振って、三人で自室へと足を速めた。新人たちには申し訳ないが、今は一秒でも早くベッドに辿り着きたい。


「新しいメイドかー。」

部屋に入るなりリアがそう言った。荷物を置く手も止めず、もう完全にお風呂モードに入っている。


「後輩ですわよ!」

アナスタシアが嬉しそうに声を上げた。


「多分同期だと思うけど。」

私がそう返すと、アナスタシアは少し不満そうな顔をした。まあ、先輩気分を味わいたい気持ちはわからなくもない。


お風呂の準備をしている最中も、お風呂に入っている時も、三人の話題は新しいメイドのことでもちきりだった。あれだけ疲れていたはずなのに、こういう時だけは元気が出るらしい。


「最初はこの屋敷で過ごすだけでも大変だからね。」

リアがお湯に肩まで浸かりながらそう言った。私とアナスタシアもうなずく。その理由は多々あるが、一つは至るところに飾られている絵画のせいだ。


「アーティファルトの絵画。」

「そう! 今でも近づけない絵とかいっぱいあるし。」

ご主人様は美しい絵画を集めることも好まれていて、その中でもアーティファルトという芸術家が描いた絵を特に気に入っているようだった。ただ、その絵の中には見ただけで死に至るような恐ろしいものも数多く存在する。美しさと危険が隣り合わせという点では、この屋敷そのものを象徴しているような気もする。


「私たちも最初はかなり移動を制限されていましたわよね?」

「あの三人も多分そうだよ。」

移動を制限されたとしても、本館一階には食堂や大浴場、謁見の間といった主要な施設が集まっているので、生活の面で困ることはない。そして見習いたちの部屋は宿舎の一階なので、こちらも問題はなかった。


「そういえば私たちの部屋にも一つあるよね。」

リアが湯船から顔半分だけ出してそう言った。


「"虚無を拾う老人"という題名でしたわ。近くにいると魔力伝導率が低下するとカルメラさんがおっしゃっていましたが……。」

「そうだね、今となってはそんなに気にならないね。」

最初の頃はあの絵の近くにいるだけで魔法の精度が落ちて、訓練にも支障がでるので一時的に外してもらっていた。しかし今では魔力密度が上がったおかげか、ほとんど影響を感じなくなっている。あの三人もいずれはそうなるのだろう。


「絵は上手だよね、絵は。」

リアが苦笑しながらそう言った。


「絵は……そうですわね。」

アナスタシアも同意する。実物を完璧なまでに模写した絵から、躍動感に溢れた絵まで様々なジャンルがあるのだが、不思議と人を惹きつけるものがある。効果さえなければ素直にすばらしいと言えるのだが。

そんなことを話しながら、私たちはゆっくりとお湯に浸かった。海底神殿での疲労が、少しずつお湯に溶けていくようだった。


「……ねえ、あの三人、どんな子たちなんだろうね。」

リアがぽつりとそう呟いた。


「明日になればわかるよ。」

「そうですわね。きっとカルメラさんが紹介してくださいますわ。」

湯気の向こうで、アナスタシアが髪を絞っていた。

新しい仲間。その言葉が、疲れ切った体にほんの少しだけ温かさを足してくれたような気がした。

身なりを整え終わると、私たちは部屋に戻った。ベッドに倒れ込んだ瞬間、意識が遠くなっていくのを感じた。明日はきっと、今日よりも賑やかな一日になるだろう。

そんなことを考えながら、私は眠りに落ちた。

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