新たな見習いメイド3
ジラルドが一通り挨拶をされ終えた頃、会場の明かりが徐々に暗くなっていった。ジラルドは用意された専用の椅子に座り、イザベラとステラはその後ろに立っていた。
「皆様、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。私は司会を務めさせていただきます……」
そう言って段上に上がった司会が説明を始めていく。そしてマーティンの挨拶も終わると、早速奴隷紹介が始まった。
「今回紹介する奴隷は選りすぐりの30種です!ゆっくりと紹介していきますので、どうぞお料理の方を堪能しながらご覧ください。」
それと同時に奥の方からさまざまな料理が運ばれ、ジラルドの前のテーブルに次々と置かれていく。個別の料理ということで、毒が入っている可能性には一層警戒する必要があるが、イザベラの観測魔法には何ひとつ反応してはいなかった。
「メイド長、私の分は……」
「もちろんありません。」
本気なのか冗談なのかわからない口調でステラがそう呟く。イザベラにしか聞こえないくらい小さな音で、ステラの腹の虫が鳴っていたのでイザベラは本気だったのだと考える。
「ステラ。毒味だ。」
しかしジラルドにもしっかりとその音は聞こえていたようで、ステラにそう命令した。本来であれば観測魔法一つで済むことをわざわざ食べて判断するという、そのいつもと違った行為をしたからかステラもそのことに気付いたようだ。少し顔を赤くしながら、毒味をおこなっていた。
「好きなだけ食べるといい。私にはこの食事は合わんようだからな。」
運ばれてきた料理は一般的に見れば絶品料理だ。しかし、グルンレイド領で作られている、たとえば異世界の知識をふんだんに取り込まれている料理と比べると、劣っているものだった。
「それでは1人目を紹介いたします。まずは金貨50枚から!」
するとゆっくりとステージの上を1人の少女がある始めた。腕や足にはなんの枷もないが、奴隷契約書によってしっかりと縛られている。逃走などを図った場合は、すぐに足などを固定されてしまうことだろう。
「最初は一般的な奴隷、という感じですね。」
「ふむ。」
しかし次々と紹介される奴隷は、半獣人やマーメイドなどの珍しい種族もちらほらいるようだった。
「次はこちらの少女。種族は人間、先ほどまでの奴隷と比べると見劣りしますが、若さがあります!金貨50枚から!」
どこでも買えるような普通の奴隷だった。この会場ではこの少女を購入しようと考えるものなどどこにもいなかった。しかし……
「ご主人様。」
「ふむ、すばらしい!」
そのような言葉をつぶやくと、ジラルドは10と書かれた札を高く掲げた。
「じゅ……十倍……が出ました!他には……。」
司会がそう叫ぶと周囲がザワザワと騒がしくなった。それもそのはず。なんの変哲もないただの少女に原価の十倍の値段をつけたのだ。
「グルンレイド、辺境伯様に決定いたします……。」
視線がこちらに集まるが、ジラルドは気にすることなくワインを口にしていた。
「それでは次に……」
次の奴隷の紹介に移るが、ジラルドはすぐにでもあの奴隷の少女を手元に持ってきて欲しかった。
「あの魔力量……すごかったですね。」
「メルテに匹敵するのではないか?」
ムムツの谷へ赴いている3人のメイドの中で最も魔力密度が高かったのがメルテだった。いや、正確には“今後魔力密度が大幅に上昇する可能性がある“のがメルテだったのだ。それらを判断するには生半可な観測魔法では無理である。生命の微弱な性質の波を察知できるほどの、異常か観測力が必要となる。
「あれほどの素質を持ったものを金貨500枚程度で購入できたのは想像以上の成果だ。」
「あの少女をすぐにでもこちらへ移動させてもらうように打診しますか?」
「いや、いい。規則に従うとしよう。」
そしてしばらくすると、異質な少女がステージへと上がっていた。
「次は戦争によって崩壊した街のたった1人の生き残り。小さな体ですが力仕事が可能です!金貨60枚から!」
「立て続けに……。」
イザベラはそのように呟く。今紹介された少女も今後の成長に期待ができる魔力だったのだ。
またしてもジラルドは10という札を掲げてその少女を落札していた。




