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21.

 (※リンダ視点)


「……どうして、屋敷が燃えていないの?」


 わけがわからなかった。

 あれだけ煙が充満していたのに、火事ではないなんて、ありえない。

 ただ換気扇を回し忘れたとか、そういうレベルではなかったのだ。


「あれはですね、あなたを屋敷から燻りだすための罠です。あ、燻りだすって、この場合、二重の意味になっていますね、はは……」


 楽しそうに話すレイラ。

 それを見て、ようやく私は理解した。

 そうか、私はこの女に嵌められたのね!

 ……気付かなかった自分に腹が立つ。

 まさか、こんなことになるなんて……。


 それにしても、あの煙の量を尋常ではなかった。

 いったいどうやって、あんなに煙を充満させたのだろう。

 それを、レイラに怒鳴りながら問い質した。


「いえ、特に特別なことはしていませんよ」


 とあっさりと答えた。

 そして、彼女は続けた。



「まず、屋敷の一階にあるキッチンの通気口に、器を入れました。その器の中には、厳選された植物を、湿らせた状態で入れていました。そしてそれに火をつけたのです。この植物は、燃えにくいものを庭師のクレイグさんが選んでくれました。知っていると思いますけれど、煙というのは、不完全燃焼であるほどたくさんでます。通気口は繋がっているので、一階で燻っている煙があなたの部屋にある通気口から侵入して、あなたの部屋は煙で満たされたのです。もちろん、屋敷にいる使用人たちは、事情を知っていました。私は彼らの部屋の通気口を塞ぎました。ほかのすべての部屋も同様です。あなたの部屋以外はですけれど。これで、あっという間にあなたの部屋は煙が充満したのです。そして、当然あなたは屋敷が火事になっているのだと勘違いしました。私の思惑通りに。そしてあなたは、屋敷から燻りだされました。はい、以上で、説明は終わりです」


「こ、こんなことをするなんて……、私は火事だと思って、本当に死ぬかと思ったのよ。こんなひどいことするなんて、あんまりだわ!」


「何を言っているのですか? あなたが今までしてきたことに比べたら、こんなのお遊び程度ですよ。さて、私の説明は終わりましたので、次はあなたの番ですよ」


「私の番?」


 いったい、なんの話だ。

 私が何を説明する必要があるのだろう。


「ここにいる皆さんは、驚いているのですよ。どうして病弱なせいで車椅子で生活しているあなたが、走って屋敷から出てきたのかと、不思議がっているのです。あの噂は本当だったのかと、皆さん訝しんでいます。あなたが病弱なのは嘘ではないかという噂ですね。病弱であるあなたは、当然皆さんに反論したいでしょうから、何か説明すると思ったのですけれど、いかがですか?」


 私はこの状況をどう説明しようかと、必死に考えていた。

 しかし、考える時間が過ぎるだけで、何も言葉が出てこなかった……。

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