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2.

 私はとりあえず部屋から出た。

 ウォーレンにはいろいろと言いたいことがあるけれど、まずはリンダだ。

 彼女には、言いたいことがたくさんある。

 私はリンダのいる部屋に到着した。

 ノックすると返事が聞こえたので、扉を開けて部屋の中に入った。


「あら、レイラ。どうしたの、浮かない顔して。まるで婚約者に別れを告げられたみたいな顔だわ」


 リンダはベッドで寝たきりになったまま、下品な笑い声を上げながらそう言った。

 私の怒りは、ますます膨らんでいった。

 しかし、怒ったところで状況は好転しない。

 私は努めて冷静に彼女に話しかけた。


「リンダさん、状況はすべてわかっているのでしょう? あなたがウォーレンをそそのかして、私との縁を切るように彼に迫ったのはわかっています」


「そうよ。私とウォーレンは、愛し合っているの。だから、邪魔者のあなたにはこの屋敷から出て行ってほしいのだけれど」


「私が出て行く? 冗談でしょう? この屋敷は、私のものです。出て行くのはあなたたちです」


「そうね。でも、そんなことをしていいのかしら? あなたが親切でこの屋敷に私を住まわせていることは、周りの人なら誰でも知っているわ。この屋敷のご令嬢は、なんて親切な方なのだろうと、皆が口を揃えて言っているのよ」


「ええ、そうですね。それがどうかしたんですか?」


「いえ、そんな状況で私を屋敷から追い出すと、あなたは世間からどういう目で見られるかしら? 金持ちの道楽で病弱な女性の看病をしていたけど、面倒になったから追い出した薄情な人だと思われるんじゃない?」


「そ、それは……」


 確かに、リンダの言う通りだ。

 渋々とはいえ、私は自分の意志でリンダを屋敷に住まわせることにした。

 それなのに、病弱な彼女をいきなり外に放り出すのは、酷なことである。

 世間からの風当たりが強くなるのも、容易に想像ができる。

 しかし、それは……。


「でもそれは、あなたが()()()()()()()()の話でしょう?」


 私はリンダに尋ねた。

 彼女が病弱だというのは、そもそも彼女がウォーレンの気を引くためについた嘘なのだ。

 以前、彼女は自慢げに私にそう話していた。


「ええ、そうよ。でも、ウォーレンを含めて周りの人は皆、私が病弱だって信じている。あなたがいくら周りの人たちに病弱ではないと訴えても、誰も耳を傾けないわ。あなたはまさに、オオカミ少年のように思われるだけよ。その気持ちを味わいさせたくて、私はあなたにだけ病弱ではないと話したの。あなたがいくら周りの人に説明しても、無意味なの、これがある限りね」


 リンダはそう言うと、私に一枚の紙を見せてきた。

 彼女が重い病気だと証明する診断書だ。

 そう、これがあるから、彼女はあんなに強気なのだ。

 彼女は全財産を叩いて医師を買収して、偽の診断書を書かせた。

 そして、その効果は絶大だった。


 確かに彼女の言う通り、周りの人たちはリンダが病弱だと信じ切っている。

 私は以前、周りの人たちに彼女は嘘つきだと言ったが、逆に私が嘘つき呼ばわりされてしまった。

 あんな思いは、二度と御免である。

 

 しかし、実は状況は悪くない。

 私は最近、あることを知ったからだ。

 リンダはそのことを知らないから、あんなに強気でいられるのだ。

 私はそのあることを、リンダに教えてあげることにする。


「あなたはまだ知らないようですけれど、先日ある知らせを受けたんです」


「何? いきなり何の話をしているの?」


「実は、サイモン先生がご病気で亡くなられたのです」


「え……」


 リンダは最初、ただ驚いているだけだった。

 しかし状況を理解したようで、その顔がだんだんと青ざめていくのが、手に取るように分かった。

 私はその様子を見て、微かに笑みを浮かべた。


 もちろん、彼女が青ざめたのには、ある理由がある。

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