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15/23

15.

 (※リンダ視点)


「えっと、単なるかすり傷程度ですね」


 というのが、階段から派手に落ちた私に対する、先生の診断だった。

 気を失っていた私は病院へ運ばれ、精密検査を受けた。

 そして、その結果がこれである。

 現在部屋には先生と私、そして、ウォーレンとレイラがいた。

 

 ウォーレンとレイラは、私がまた医師を買収して病弱ということにしてもらわないか、それを見張るために付き添ってきたらしい。

 まったく、余計なことを。

 とはいえ、私にはもう、医師を買収するほどのお金はないのだけど。


「もう一度聞きますが、本当に階段から落ちたんですか? ちょっとその辺で転んだ程度の怪我ですよ」


「えっと、階段から落ちたのは本当です」


 私は先生に答えた。

 さらに続ける。


「あの先生、本当に私の体、なんともないのですか? 階段から落ちたのに、かすり傷程度だけなんて……。何か、後遺症とかありませんでした? 私、少し病弱気味でして……」


「いや、精密検査をしたけれど、特にそういったことはありませんでしたよ。おかしな人ですね。普通はかすり傷だと聞けば喜ぶものなのに、まるでもっと大怪我の方がよかったかのような言い方だ」


「えっと、それは……」


 私は言葉に詰まった。

 しまった、あまりに露骨過ぎただろうか……。

 階段から落ちたことで、本当に病弱になっていればいいと願っていたのだが、残念ながらそういうことはなかったらしい。


「階段から落ちたのにこの程度のけがで済むなんて、あなたの体はとても丈夫だということです。いやあ、羨ましいですなぁ。病弱だなんてとんでもない。それとは真逆です。あなたの体は、まさに健康体そのものですね」


 私は先生の言葉にショックを受けた。

 ついに、医学的に私は病弱ではないと証明されてしまったのである。

 それどころか、階段から落ちてもかすり傷程度で済む丈夫で健康な体だった。


 私は、隣にいるウォーレンとレイラの様子を覗き見た。


 ウォーレンは、何も言わない。

 私の診察結果を聞いても、喜ぶわけでもなく、怒るわけでもない。

 しかし、目が虚ろな感じがして、少し怖かった。


 レイラはというと、こちらを見て微笑んでいた。

 彼女からすれば、やっとこの時が来た、という感じだろう。

 悔しいが、彼女の思い通りの展開になってしまった。


 私は絶望していた。

 これで、何もかも終わりだ。

 私の病弱は嘘だと、完全に証明されてしまったのだから。

 しかし、私は甘かった。


 何もかも終わりだと思っていたのに、これは、私の絶望の始まりに過ぎなかったのだった……。

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