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13.

 (※リンダ視点)


「えっと、あの……」


 私は、車椅子から立ち上がり全力疾走してしまったことに対する言い訳を、必死に考えていた。

 まったく、迂闊だった。

 ウォーレンからプレゼントしてもらったバックを盗られて、気が動転していた。

 そのせいで何も考えず、バックを取り戻すことしか頭になかった。

 自分が病弱(設定)だということを、すっかり忘れてしまっていた。


 私は、どうしたらいいのかしら……。


 あ……、まずは、車椅子に座らなければいけない。

 そのことに気付いて、私はよろめきながら車椅子に座った。

 よろめいたことで、少しは病弱だと思ってくれたらいいのだけれど……。


 いや、どうやら無理があったようだ。

 どう見ても、ウォーレンも周りにいる人たちも、私に対して疑念を持っているのは確実だ。

 それは、彼らが私に向けている目を見れば明らかである。

 どうにかして、彼らが納得する答えを用意しないと、私の病弱が嘘だとみんなにバレてしまう。

 私は必死に考えた。

 そして、みんなが納得しそうな言い訳を思い付いた。


「あ、あれはね、愛の力よ! あのバックは、あなたがくれた大切なバックでしょう? 私にとっては、愛する人がくれた大切な宝物なの。それを取り返すために必死だったわ。だから、体からパワーが溢れたのね。一時的とはいえ、病弱な私が走れるようになったのだから、愛の力って偉大だわ! ねえ、ウォーレン、あなたもそう思わない?」


 私は彼からの返事を待った。

 しかし、彼は何も言わない。

 ただただ、軽蔑のまなざしをこちらに向けるだけだった。

 今までは何とか誤魔化してくることができたけれど、ここ最近は、彼の前で病弱らしからぬ動きをし過ぎた。

 そのせいで彼の中では、私に対する疑惑の芽が少しずつ育っていたのだろう。


 そして今回のことのせいで、完全に私のことを嘘つきだと疑っているというわけか……。


 私が何を言っても、信じてくれる雰囲気ではなかった。

 そして、ウォーレンの周りにいる人たちも、彼の味方だった。

 彼らは私に対して、「彼に嘘をついていたのか」とか「詐欺師だ」とか「最低の人間だ」などと、好き勝手言っている。


 しかし、私は彼らの言葉に反論することができなかった。

 病弱な人間にはありえない動きをして、それを大勢に見られてしまったのだ。

 私が何を言っても、彼らを納得させることは不可能だった。


 ウォーレンが、私を置いてこの場から去ろうとした。

 彼は私に背を向けて、歩き始めた。


「ちょっと! 待ってよ、ウォーレン! お願い! 私の言ったことを信じて! あれは、病弱な私が必死に頑張ったから舞い降りた奇跡なの!」 


 私は必死に呼びかけた。

 しかし、彼は何も答えてはくれなかった。

 それどころか、振り向くことすらしてくれなかった……。

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