表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/23

1.

 今日新しく買った紅茶を飲もうとしていると、突然部屋の扉が開かれた。

 入ってきたのは、私、レイラ・ハミルトンの婚約者であるウォーレン・ラッセルだった。

 ノックもせずに無礼だなと思っていると……。


「お前との婚約は破棄だ。おれは、幼馴染の彼女とこの屋敷で暮らす。当然、お前はこの屋敷から出て行け」


「えっと……」


 あまりにも突然のことで、私は言葉を失っていた。

 ノックをしなかった無礼など、どうでもいいくらいの衝撃である。

 まあ、次にノックをしなかったら、注意くらいはするけれど。

 さて、まずは彼とその幼馴染であるリンダ・エスパーザが、どういう関係なのかを確かめなければならない。 


「あのぉ、どうしてこんな展開になったのか、一から説明してもらえませんか?」


「わからないのか? おれは、リンダを愛してしまったんだ。この屋敷で一緒に暮らすうちに、彼女への気持ちこそが真実の愛だと気付いたんだ。だから、おれは彼女と結婚する。当然おれたちの愛の巣に、お前は必要ない。だから、この屋敷から出て行け」


「なるほど……、そういうことでしたか。わかりました」


 もちろん、わかりましたというのは、状況を理解したという意味であって、彼の言い分に納得したわけではない。

 

 どうやら、ウォーレンは幼馴染であるリンダとの真実の愛に目覚めてしまったらしい。

 病弱な彼女を看病するために、彼女をこの屋敷においてくれという彼の頼みを聞いたら、このありさまである。

 恩を仇で返すとは、まさにこのことだ。


 病弱で寝たきりである彼女がこの屋敷に来たのは、約一年ほど前だ。

 その時も渋々了承したのだけれど、まさかこんなことになるなんて。

 いや、まあ、彼女の本性を知ってからは薄々感じていたけれど……。


 婚約破棄に関しては、正直どうでもいい。

 今更、ウォーレンに対しての愛など、あるはずもない。

 問題は、もう一つの方だ。


 えっと、私をこの屋敷から追放?

 いったい、どんな思考をすれば、そのような決断に至るのか、まったく理解できない。

 私ごときでは理解できない、彼の深い思考の末の決断という可能性もあるが、彼の思考が浅い可能性の方が遥かに高い。


 言いたいことはいろいろある。

 あり過ぎて、何から言えばいいのかわからない。


「おい、何をぼさっとしているんだ。話は聞いただろう? おれはリンダと二人きりで過ごしたいんだ。さっさとこの屋敷から出て行け」


 ウォーレンの言葉を聞いて、私は大きくため息をついた。


 あのぉ、どれだけ自分がおかしなことを言っているか、わかっていますか?

 えっとですね、この屋敷は私のものなのですけれど、そのことは理解していますか?


 あ、ついでに言うと、あなたは騙されているだけで、幼馴染の彼女は病弱なんかじゃありませんよ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ