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第3話 私に厳しい世界

車に飛び込んだ、と言っても自殺とかしたわけじゃないよ。

なんていうのかな、死にたがりが自爆した、というのかな。


目の前で、車に轢かれそうになっている子供を助けるために、身代わりに私が轢かれたというのが顛末で…。

それを自爆というのは、絶対に間に合わないのと分かっていたのに飛び込んだから。

何で飛び込んだかというと、わかんないです。

ただ、ひとつだけ確実なのは「私よりこの子の方が生きるのに相応しい」と思ったからかなぁ。


両親もいない、誰にも愛されていない、世界から見放された私より、きっとこの子の方が世界に愛されている。

だから死ぬのは私。

私の方が死ぬのに相応しい。


そう思ったら、自然に体が動いていた。


ごめんなさい。

ここまで嫌々ながら育ててくれた親戚の皆さん。

転校ばかりで、すぐにいなくなるのに、勉強を教えてくれた先生。

ちょっとだけの間なのに、クラスメイトになっちゃったみんな。

何の恩も返せずに死んでごめんなさい。


もし生まれ変われたら、その時は………




 「……って、どうして、こんな人に生まれ変わるかなぁ!?」


 「うるせぇぞ、ガキ! 黙って座ってろや!」


馬車の中で思わず叫ぶと、たちまち同席していたおじさんの怒声が飛ぶ。

くそっ、考えていたことが思わず口に出てしまった。


生まれ変わったら、必ずみんなの役に立つ人間になりますと誓ったのに、よりによって嫌われ聖女とか、何の嫌がらせだ。

この世に神はいないと呪った人間が聖女とか、皮肉が効きすぎてるだろ。

先ほどシリアス調に語ってしまった私のモノローグを返していただきたい。


 「ったく、そんなに興奮すんじゃねぇ。

  そんなに騒がなくても、もう王都は目の前だぜ」


どうやらおのぼりさんの田舎娘だと思われたらしい。

まぁ、否定はしないけど。

だが遠くに見えてきたお城が見えてくると、そんな愚痴は引っ込んでしまう。


 「うわぁ……」


高い尖塔が突き出し、白く輝いているのが周辺国にもその美しさを称えられたイシュメイル王国の居城・トラヴィス城。

それをぐるりと高い塀が囲んでいるが、その高さと規模に圧倒される。

この壁の向こうが居住区だとすれば、相当な規模だ。

向こうの世界で、初めて千葉にある夢の国を訪問した時の興奮が蘇る。


すみませんね、そんな俗な例えしか浮かばなくて。


城門で衛兵と手続きを行うと、馬車はゆっくりと城壁の中へ進んでいく。

そこはまさに中世のおとぎ話の世界。

出店が立ち並び、人々が行き交う商業区域を抜けると、居住区へと進む。

その中のひとつ、「角笛亭」という集合住宅の一室が、これからの拠点となる。


そして私が通うべき聖トラヴィス魔法学園は……

ここからはるか遠く離れた閑静な土地に、堂々と鎮座していた。

まじかよ、すっげー遠いじゃん。

電車もバスもないのに、ここからどうやって通うの?

いや、お金もほとんどないから、あったとしても使えないけどね!

馬車だって毎日使えば安くないし、学割なんて概念もないだろうし…


まぁ、貴族様がお通いなさる場所なので、雑多な場所に建てるわけにもいかないだろうし理解はできるんだけどさ。

話を聞けば、むしろ平民が入学するケースの方が稀みたいだし。

ああ、エリーよ、聖女エリーよ。

私たちが知らない裏で、貴女はこのような逆境と戦っていたのですね。

そりゃ、ハングリー精神も養われるわ。


気を取り直して下宿のおばちゃんに元気に挨拶する。


 「こんにちは!今日からお世話になりますエリー・フォレストです!」


 「お金はきちんとあるのかい?下宿代が一日でも滞ったら追い出すよ!」


いきなり追い出される話をされた。

何なのよ、この世界は!

出会う人全員、好感度マイナスからスタートしているんじゃないかしら!?


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