ターニングポイント第83話帰還
士郎、経丸、片倉、海老太郎、稲荷は城兵に囲まれていた。
「これはさすがにヤバいですね」
士郎は経丸の怯える表情を見て自分が感じている恐怖な気持ちを押し殺して笑顔で
「大丈夫、大丈夫問題ないよ」
片倉は士郎と稲荷に目配せをして
「そうだな、士郎君の言う通り問題はないな」
海老太郎は目を輝かせながら
「二人ともカッコイイですね」
士郎は上機嫌で
「だろ、カッコいいだろ見直したか?」
「はい、見直しました」
片倉は士郎とは対照的に
「集中しろ!蹴散らすぞ‼行くぞ海老太郎君」
「あっ、はい」
片倉が石垣を背にしている兵に狙いを絞って「懸命守覚‼」と叫びながら突っ込んでいく。海老太郎はあまり理解せず「ひびせいちょう!!」と叫びながら二人に付いて行き片倉と稲荷共に城兵を蹴散らしていく片倉と海老太郎が必死で作った包囲の穴を士郎は経丸の手を引っ張って思いっきり走りその勢いでジャンプし石垣に登り経丸をお姫様抱っこした士郎に片倉は
「士郎!殿を頼んだ‼」
「任せろ!」
士郎はそのまま石垣から覚悟を決めて「気持ちー‼気持ちー‼」と叫びながら飛び降りた。
稲荷はその隙に城壁をつたって包囲から脱出したのであった。。
片倉と海老太郎は背中を合わせて城兵に向かって構え
「海老太郎、やれるだけやりますか」
海老太郎は大きな声で
「はい、頑張りましょう‼」
その頃飛び降りた経丸を抱えて飛び降りた士郎は思い切り背中を地面に打ちつけて起き上がれないでいた。
「士郎、大丈夫、ねぇ大丈夫‼」
士郎は痛みで振り絞る声で
「殿、揺らさないでくれ背中に響く」
士郎と経丸の元に稲荷が来て
「おい、士郎大丈夫か?」
「チビる、それがしに構わず殿を安全な場所に連れて行ってくれ」
経丸は士郎の言葉に
「何言ってんの!そんなことできるわけないでしょ‼」
「いいからいけ」
経丸は怒鳴るように
「士郎、死ぬつもりなの‼」
士郎も経丸に怒鳴り返すように
「死ぬわけないだろ!それがしはまだお前を幸せにしてないんだから‼」
士郎は経丸の手をぎゅっと握って
「大丈夫、必ず経丸の元に帰るから」
「わかった約束よ、破ったら許さないから」
「うるせぇ!早くいけ」
経丸と稲荷は萬崎の本軍に戻ったのであった。
萬崎は戻って来た経丸と稲荷に
「おっ、無事でしたか」
「私達は無事でした」
「それはよかった、ところで士郎達は?」
「片倉さんと海老太郎君は城に取り残され、士郎は動けない状態で城の石垣の下にいます」
泣くのを堪えながら言う経丸に萬崎は返す言葉がなく振り絞る声で「すまない」というのが精いっぱいだった。
萬崎の言葉に経丸は強い口調で自分にも言い聞かせるように
「大丈夫です、皆必ず私の元に帰って来ますから必ず、必ず帰って来ますから」
「そうだな、あいつらは必ず帰って来るよ」
経丸と萬崎は固い握手を交わした。
「殿、敵は支城から援軍が来るとの情報を得て勢いを増しました、これ以上は危険です。ここは引きましょう」
家来の言葉に爺やも
「そうです殿、ここは引きましょう」
萬崎は立ち上がり
「ふざけるな!ここで逃げたら命を懸けて城を攻めてくれた者に申し訳ないだろうが‼」
その頃山根孝のいる陣営では
「山根さん、支城から城兵が溢れ出てきてこのままじゃ萬崎軍は総崩れになるのでしょうか?」
凛の質問に山根孝は
「いや、総崩れにはならないそろそろ来るはずだ」
「何が来るのですか?」
山根は爽やかな顏で凛に
「そのうちわかりますよ」
「申し上げます、山根殿今支城に琵琶の軍勢が攻め込みました」
山根孝は少しにやけて
「来ましたか、これで支城の兵は城に釘付けになるでしょう」
「なぜ琵琶軍と豊影軍がここに?」
「私は戦が始まる前に琵琶殿に援軍を要請していたのですよ」
「なぜ琵琶軍は最初から戦に参加しなかったのですか?」
凛の質問に山根孝は
「琵琶軍が援軍に来るとわかっていたら恐らく敵は戦をしなかった。しかし我々が支城を無視して進軍したことによって我々は袋の鼠と思った敵方は戦をすることを決意する。そして勝てると敵方が思った時に援軍が支城を次々に落とすと敵方に怯えて逃げ出す兵が続出するすると士気はダダ下がり軍として機能しなくなるところに吉報を聞いて士気が上昇した我らの軍が襲い掛かる結果は火を見るよりも明らか」
凛はメモを取りながら
「さすが、山根殿勉強になります」
「そうですか、はは」
「稲荷殿、我が兵達に援軍が来たと伝えてくれ」
「はい、わかりました」
稲荷は全速力で観音寺城まで走って行った。
片倉と海老太郎は
片倉は息を切らしながら
「海老太郎君、まだいけるか?」
「はい、いけます‼」
へとへとで限界を迎えている二人の元へ
「琵琶軍が支城を次々と落としてその勢いでこちらに援軍に来ました」
この稲荷の一言で敵は動揺し残っていた萬崎軍の兵は息を吹き返した。
「稲荷、ありがとう、いい情報だ」
息を吹き返した萬崎軍とは対照的にみつわ軍は逃げ出す兵まで出て来た。その混乱に乗じて片倉と海老太郎は稲荷と共に城を抜け出し士郎のいる場所に向かった。
目をつぶって倒れている士郎に片倉は
「死んでしまったか、生意気だったけどなんだかんだいい奴だったのにな」
海老太郎は士郎に手を合わせて
「士郎さん、安らかにお眠りください」
片倉は涙を手で拭いながら
「じゃあ、ここに埋めてやるか」
「そうですね」
片倉と海老太郎は士郎の体に砂をかけ始めた。
「おい、やめろ生きてるんだぞ」
いきなりしゃべり出した士郎に海老太郎は慌てて
「死体がしゃべりました悪霊が付いている早く埋めましょう」
思いっきり砂をかけまくる海老太郎を片倉は止めて
「おい、まさか生きてる?」
「生きてるよ、背中を打ちつけて痛みで動けないんだよ」
海老太郎は士郎にかけた砂を払って士郎を起き上がらせて思いっきり抱きつき
「よかったですね生きてて、この世に感謝ですね」
士郎は震える声で
「あ、もうこれで背中の骨粉々だ」
「えっ、あ!あ!すみません」
「もういいよ、てっかチビる。それがしが生きていること気づいてたろ」
稲荷は真顔で
「まぁね、呼吸しているの見てたから」
士郎は稲荷の言葉に頭に来て強い口調で
「じゃあ、何で二人が死んだと思って砂をかけた時止めないんだよ」
「止めてって言われなかったから」
士郎は声を震わせながら
「お前、殺してやる」
稲荷は士郎を煽るように
「頑張れ」
「くっそー、覚えていろよ」
稲荷、いつも影が薄いって士郎に言われているからその仕返しか
そう思った片倉はふふっと笑った。
皆で士郎を背負って萬崎軍の本陣まで帰るのであった。




