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ターニングポイント第64話兄妹

 萬崎は村井と別れ自分の城那古野城に戻った。


 あれ門番もいないなんて不用心だなぁ


「おい帰ったぞー」


 萬崎の声に誰も反応しない。


 おかしいなぁみんなどこ行ったんだろう。


まぁ疲れたから部屋で一休みするか。


 萬崎はそう思い城の中に入って行った。


 自分の部屋に向かう途中萬崎は爺やの後ろ姿を見つけて


「あっいるじゃんか、おーい爺や」


「とっ殿、どこへ行っておられたんですか」


 慌てて走って来た爺やに萬崎は


「ちょっとな、それより皆はどこへ行ったのだ?」


「何をおっしゃてるのですか、皆殿を探していたんですよ‼」


 爺やは珍しく怒り気味に萬崎に言った。


 萬崎は素直に


「すまない爺や」


 申し訳なさそうに頭を掻いている萬崎の横で爺やは大きな声で


「皆さん、殿が見つかりました」


 その声に家臣達が集まった。


 萬崎が見つかったとの声が聞こえた天子は勢いよく走って来て集まっている家臣達をかき分けて萬崎に抱きついて


「殿、今までどこに行っていたんですか?」


「もしかして心配してくれてたのか」


 天子は萬崎を突き放して


「当たり前でしょ、どれだけ皆に心配かけたと思ってるんですか」


「皆悪かった、すまなかった」


 萬崎は素直に家臣達に頭を下げた。



翌日、萬崎は家臣たちを広間に集め


萬崎は上座にあぐらをかいて座り真剣な表情で


「今日は皆に大事な話がある」


「えーこの度智江は琵琶殿と結婚することになりました」


 家臣達はざわついた。


「やはりあの噂、本当だったのか」


「でも殿が嫌がっていたんじゃ」


「くっそー智江様みたいな美人を琵琶にとられるなんて」


「皆静かに」


 萬崎の一声で皆はすぐに静かになった。


「そういう事なので智江の結婚式を盛大にやって送り出したいと思うので皆準備よろしく」


 智江は萬崎に驚いた様子で


「兄上、反対してたんじゃ」


「そうですよ殿、いきなりどうなされたんですか頭でもぶつけましたか」


 爺やは「失礼します」と言いながら萬崎の頭にこぶができてないか確認した。


「な、わけあるか」


 萬崎は爺やを突き飛ばした。


「智江、こっちにこい」


 萬崎は智江の手を引っ張り馬に乗せて人気のない見晴らしのいい高台に連れて行った。


「智江、今までありがとな。お前が俺の妹で本当によかった」


「兄上」


「今まで俺はうつけと呼ばれ周りからは全く信用されてなかったけどお前はずっと俺を信用してくれた、俺とっても嬉しかったんだぜ」


 萬崎は泣きそうになりながら智江の頭をなぜた。


 智江も目を赤くしてうるうるしている。


「琵琶殿は釣りの接待も上手い、いい奴だきっとお前を幸せにしてくれるだろう」


「釣りの接待が上手い?」


 智江は何の事だろうと思い溢れ出そうになっていた涙が引っ込んだ。

 萬崎は慌てて


「なんでもないよ」


「いや、釣りの接待って気になりますよ」


「いやぁ、それはだな」


 勘の鋭い智江は


「あっもしかして琵琶殿を見に行ってくださったんですね」


「いやぁそのまぁ用事があってそのついでだ」


「兄上」


 智江は萬崎に抱きついた。


 萬崎はそれに対してグッと堪えて智江を離して


「お前はこれからは須貝家の事を第一に考えないとダメだ、いいか俺の事より須貝の家を優先して幸せになれよ」


 萬崎の言葉を聞いて智江は萬崎家との本当の別れと思い目から涙が溢れ出した。


 智江は振り絞るような声で


「はい」


 こうして萬崎は決意を固め妹の智江を嫁に出すのであった。



 この感動の最中萬崎家では禿げ太郎が泣きながら


「智江様が琵琶に嫁ぐなんて」


 泣いている禿げ太郎に飯田が


「何泣いてんだよ、お前には関係ないだろ」


「関係ないとはなんだ、俺は智江殿を抱くためにこの萬崎家に入ったんだぞ」


「お前、最低だな主君の妹を抱こうって考えるなんて人として終わりだな」


「うるせぇー、じゃあお前は抱くつもりはないのか?」


「当り前だろ!智江様はめちゃくちゃ美人だけど殿の妹君。そんなお方に下心を抱くなんて人間として最低だ!クズだ!この場で切り捨ててやる」


 刀を抜こうとする飯田を爺やは必死に抑えつけた。


 

 智江は寝ようとしたが寝つけずに満月を眺めていると


「智江ちゃん、一杯飲まない?」


 お酒を持って現れた天子に智江は驚きながら


「あっ天子さん、どうしてここへ」


「智江ちゃん寝つけない思って」


 天子は智江の隣に座って智江に盃を渡して酒を注いだ。


「私も殿の元に嫁に行く前は寝つけなかったからさ」


「天子さんもそうだったんですね」


「うん、やっぱり面識ない人の元へ嫁ぐのって怖いよね、どんな人かわからないから」


「そうですよね、私あんなこと言ってたんですけど今さらになって不安になっちゃって」


「でも大丈夫よ、殿がちゃんと相手を見てきてくれたんだから殿がいい奴と言ってるから大丈夫よ」


「そうですよね、大丈夫ですよね」


「大丈夫、もしなんかあっても殿が迎えに来てくれるからだから安心して」


「ありがとうござます」


「天子さん、結婚っていいものですか?」


 天子は満面の笑みで


「とてもいいものよ、智江ちゃんも幸せになりなさい」


「はい」

 

こうして天子のおかげで智江の不安は少し消えたのであった。



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