ターニングポイント 第53話自分
経丸は士郎が捕まったと言う情報を聞いてから食事もとらず誰もそばに近づけずに一人皆と離れた場所で体を丸めて頭を抱えながら座り込んでいた。
私のせいで士郎が捕まった、私のせいだ、私のせいだ
経丸が一人で悩んでいるところに金崎が近づいて
「経丸ちゃん、ご飯だよ」
経丸は小さな声で
「いりません」
「ダメだよ、もう二日も食べてないじゃんほら皆と一緒に食べよう」
そう言って腕を引っ張る金崎に経丸は
「今はほっといてくれませんか‼」
と怒鳴りつけた。
金崎は黙って経丸の隣に座った。
経丸は我に返り
「すみません」
金崎は優しく経丸を抱きかかえた。
経丸は金崎の優しさに思わず涙をあふれさせながら
「私はどうしたらいいんですか?」
金崎は黙って優しく経丸の頭をなぜる。
「私は金崎殿が羨ましい。圧倒的に強いし優しいし一人でなんでもこなせて弱点もないし大将としても完璧で」
「私は強くもないし自分一人で成功したことないし大将には向いてないんだ」
金崎は優しい口調で
「私は経丸ちゃんが羨ましいかな」
経丸は吐き捨てるように
「どこがですか」
「あなたの心は綺麗だし、人を成長させる力がある」
金崎は悲しい顔で
「私には惹きつける力はないから」
「どういう事ですか?」
回想
金崎は五歳の時に寺に入れられていたが十八歳の時に城に呼び出された。
金崎家は後継ぎを金崎国子の十歳年上の兄に決めていたが病弱なため優秀だと噂されていた金崎国子が呼び出されたのであった。
国子の父の命で金崎国子は金崎家の当主になったが女の国子が当主になることを認めない者も数多くいた。
父が亡くなったその日の夜、突如金崎国子の兄を当主にすると持ち上げる家臣団が結成され金崎家は兄の数男支持派と国子支持派の二つに割れてしまった。
金崎国子はそのことを兄に相談しに行った。
「兄上、私は家中が二つに分かれるくらいなら当主を継ぎたくありません」
病弱で体の細く色白な兄は優しい口調で金崎国子の頭をポンと叩いて
「国子の方が俺より優れている、だからお前が当主にふさわしい」
「しかし、私は兄上と争いたくないんですよ」
「大丈夫、国子と俺は仲がいいんだから争う事などないぞ」
「ホントですか、兄上」
「あーあ」
「兄上、今日は一緒に寝てもいいですか?」
数男は優しい笑顔で
「国子は甘えん坊だな。今日だけだぞ」
金崎国子は笑顔で
「はい」
金崎国子は布団の中で
「兄上、一緒の部屋で寝るのは十何年ぶりですね」
「お前も体は大きくなったが中身はまだ幼い時と一緒で甘えん坊だな」
「甘えん坊、なんかじゃないですよ」
「そっか、じゃあ一人で寝て来なよ」
「今日は一緒に寝るんですよ」
「やっぱり甘えん坊じゃないか」
「うるさいです、早く寝ましょう」
「そうだな」
二人は仲良く寝た。
翌日国子の兄は家臣達を集めて
「皆、この金崎家の当主は金崎国子殿ただ一人そのことを心に刻み込んでくれ」
兄、数男支持派もその場では納得したような態度を取ったが
「やはり、女の当主なんて俺はついていけない」
「そうだ、そうだ女に当主なんて務まらない」
兄支持派は日に日に団結力を高めていったのであった。
そしてついに兄支持派の家臣達は兄の元に集まって
「数男様、あなたが当主になるべきです、女の国子様には当主は無理です」
「そうです、女が当主となれば他国からも馬鹿にされて攻め込まれます」
温厚な兄が恐い顔でピシャリと畳をセンスで叩いて
「誰が何と言おうと、金崎家の当主は金崎国子だ」
家臣達は部屋を出て行ったが
「数男様はなぜ当主になりたがらない、普通長男が当主になるものなのになぜ妹に当主を譲るのだ」
「全くだ、兄上様が当主になる気がないなら
我々が国子様を殺して兄上様を当主にしましょう」
「そうだ、そうしよう」
家臣達は敵国の忍びに金崎国子を暗殺されたってことにしようとした。万が一自分達が殺したってばれても今の金崎家じゃ力のある自分達を処罰しないとわかっていたから金崎国子暗殺計画を結構するのになんの躊躇もなかった。
その夜家臣達は金崎国子を襲ったが間一髪で逃げられてしまった。
この事はもちろん数男の耳にも入った。
翌日数男は逃げ出した金崎国子と家臣達を集めた。
数男は覚悟を決めた顔で
「もう仕方ない、俺と国子で戦をする勝った方が当主これで誰も文句ないか」
金崎国子は慌てて
「兄上、私は兄上と戦いたくないです」
「仕方ないだろ、こうでもしないと皆納得しないんだ」
兄、数男支持派の家臣達は
「そうですよ、戦って蹴りつけましょうよ、我々が負ければおとなしく従うので」
「そうだ、そうだ」
兄、数男支持派の盛り上がりに押される形で数男と国子の戦がおこなわれる事が決まった。
翌日兄数男と国子は激突した。お互い兵力差はほとんどなく戦いは拮抗すると思われたが幼少の時から寺で戦の戦法を学んでいた金崎国子が神がかりな采配と自ら斬りこむ圧倒的な突破力で数男軍を圧倒し完勝したのであった。
金崎国子軍は兄数男を捕らえた。
捕らえられた、数男を目の前にして金崎国子は家臣に
「すぐさま兄上の縄をほどいて」
国子の言葉に数男は強い口調で
「何を言っている国子!」
金崎国子は数男の言葉に困惑しながらも
「何って、戦が終わったから兄上の縄をほどいてと」
「敵将を捕まえて何もせずに縄をほどく奴がいるか」
数男は覚悟を決めて強い口調で
「国子、我が首を刎ねよ」
数男の衝撃的な言葉に唖然とする金崎国子果たしてどうするのだろうか?




