ターニングポイント 第37話衝突
霧が晴れた。
松本軍本陣で大群が向かって来るのが薄っすらと見えた松本徳博は
「何か?こちらに向かって来るのは味方か、もう金崎軍をやっつけたのか?」
保守幹介は顔を真っ青にして震える声で
「お屋形様、違います、あっあっあれは金崎軍でございます」
松本は驚き
「かっ金崎‼なぜだなぜもう来ている!!」
「これは我の策がばれていました」
松本は慌てる保守幹介の肩をポンと優しく叩いて
「大丈夫だ、落ち着け」
松本は大声で皆に向かって
「ただちに迎え撃つ準備を!」
「はい」
金崎は松本軍の兵の数を見て
やはり予想どおりだった。
金崎は自分の予想が当たった事で意気揚々と
「皆さん、松本軍が見えてきました一気に攻め込みますよー‼」
「おーおー‼」
「経丸さんついて来て下さいよ」
「はい‼」
いよいよだな!
経丸は気持ちが高ぶり馬上から大きな声で
「気持ちー‼気持ちー‼」
経丸の言葉に興味を示した金崎は
「なんです?その言葉は」
経丸は笑顔で
「大切な人がよく言っている言葉なのです」
「そうですか、この戦に勝ってその人と喜べるといいですね」
経丸は笑顔で
「はい」
金崎を先頭に金崎軍は松本軍本陣の中心に突っ込んでいく。
金崎軍は大将の金崎が真っ先に突っ込んでいく。
普通、戦は大将が死んだら終わりなのだから大将は一番後ろの一番守られているところにいるものである。
しかし金崎は士気を上げるために真っ先に敵陣に斬りこんで行くのである。その姿を小さい頃に見た経丸は金崎の戦法を少し受け継いでいるのである。
金崎軍は雪崩のように松本軍に襲い掛かる。
保守幹介は慌てて
「まずいこのままじゃ、お屋形様お逃げくだされ」
「慌てるな幹介、窮地の時でも動じてはいけない我がここで逃げれば士気が落ちるここは我慢じゃ」
保守幹介は強い口調で
「しかし逃げなければお屋形様の命が危のうございます」
「我のために戦っている兵をおいて我だけ逃げることはできぬ、それをするぐらいなら死んだ方がましじゃ」
保守幹介は松本の言葉に泣きそうになりながら「お屋形様―‼」と叫んだ。
松本はこのように家臣や村人を大切にする大名だった、だから人望がありそのため松本軍は結束力がある。窮地に追い込まれてからの松本軍の粘りは凄まじかった。
保守幹介は大声で
「お屋形様を殺すわけにはいかない、皆奮闘しろー!」
「おー!」
松本軍は士気が上がり粘り強く戦っている。
しかし金崎は次々と松本軍の兵を倒して遂に松本徳博の姿を捉えた。
「経丸さん、行きますよ」
「はい」
「我こそは金崎国子、松本徳博覚悟しろー‼」
松本は真顔で
「あれはまさか、偽もんだろ」
保守幹介は恐怖で震えながら
「お屋形様、あれは金崎本人です」
松本は驚きながらも
「大将の癖にここまで来るとは大したもんだ」
松本は戦前とは別人のように窮地でも動じずドーンと構えている。
次々と松本軍の兵は金崎に突っ込んでいくが金崎はいとも簡単に蹴散らしていく。
金崎を見て経丸は
金崎様はやはりすごい、私も頑張らなくっちゃ
次々とくる松本軍の兵を経丸も蹴散らしていき残るは松本と保守のみになった。
金崎は低い声で
「覚悟しろ、松本徳博」
金崎と経丸はどんどん松本徳博に近づいて行く。
今から一時間前の妻女山では
松本軍最強の武将と日ノ本に名を轟かせている歳は四十代体格の良い片腕の武将武士疾風が大声で
「今からこの妻女山にいる金崎軍を一網打尽にするぞー!」
「おー!」
武士疾風率いる松本軍の別働隊は士気を上げた。
妻女山にいる士郎達は
稲荷が士郎に
「士郎、足音が聞こえて来たぞ」
いよいよだな
士郎は不安と興奮が入り混じった気持ちになっていた。
落ち着かなきゃ
士郎は大きく深呼吸し大声で「気持ちー‼気持ちー‼」と叫んで自分を奮い立たせた。
片倉は冷静に皆に
「皆、迎え撃つ準備だ」
「はい‼」
皆は準備を終えて不安な面持ちで戦闘まで
流れていく時間を耐えている士郎はそれを見て皆の不安を取り除こうと
「皆、声を出そう。そうすれば少しでも不安は取れるさ」
士郎は大声で
「せぇーの!」
「気持ちー‼気持ちー‼」
皆は一斉に声を出して心を一つにした。
それぞれが各地で決定的な戦へと発展していきそうな雰囲気を出していくのであった。




