ターニングポイント 第34話温泉
金崎の居城春日山城では
「殿―‼」
家来が慌ただしく金崎の前に現れた。
金崎は酒を飲んでいたが落ち着いた感じで一杯お酒を口に運んでから
「どうなされました?」
「たくさんの国衆が来ております」
「わかりました、こちらにお呼びください」
国衆達が慌てながら
「金崎様」
「どうなされました?皆さん」
「松本徳博に攻め込まれ城を落とされました
「我も同じ」
我も我もと次々と声が上がった。
「金崎様、松本を討ち取ってくださいお願いします」
金崎は一つ間を置いて
「わかりました、私に任せてください」
依頼を快く承ける金崎に家臣が
「お待ちくだされ殿、お断りくだされ松本の騎馬隊は強いですから我らにたくさんの犠牲が出ることは必須ですよ」
家臣が戦いたくないというのも無理はない松本徳博とは山梨を拠点としている日ノ本一と言われている騎馬隊を率いている三十代後半の身長は百五十七センチの女性の金崎とは違い百八十二センチありスラっとしていてイケメンで頭もよく武術にも優れている完璧な大名である。
「助けを求められたら見捨てずに助けるそれがこの家の家風ではないですか」
「しかし今までと相手が違いすぎます」
「金崎家は義を重んじる家助けを求められたらそれに答えなければいけないのですよ」
金崎は家臣の意見を受け入れずに戦うことを決意したのであった。
数日後大多喜城では
「殿、金崎様より手紙が届いてます」
「どれですか?」
経丸は稲荷から渡された手紙を読んだ。
読んでいる経丸の横で片倉が
「殿、なんて書いてありましたか?」
「今度戦があるから援軍を頼むと」
「ほー戦ですか、相手はどこですか?」
「松本です」
片倉は驚きながら
「松本って、太松亡き後最強と言われている男ではないですか?」
「そうですが金崎殿なら勝てますよ」
「殿、太松は最強と言われてても油断したから萬崎に負けましたけど松本は絶対に油断などしない、しかも強いのに慎重に考えて行動を取る男でございます相当な強敵でございます」
「確かに強い相手です私らだけで戦うなら全く勝負にもなりませんが金崎殿がついておられる。ましてや私達が主軸として戦うわけではありませんから。あくまで援軍ですから」
「しかし、援軍でも大敗すればこの前みたいに我らの中からもたくさんの犠牲者が出るんですよ」
「でも、私達前に踏み出さないと確かに戦は恐いけどここで逃げたら二度と戦えなくなる気がして」
殿は恐怖に打ち勝つために前に進もうとしてるんだ。それなのに俺は逃げようとして
片倉は自分の逃げ腰の姿勢に腹が立った。
深く深呼吸をして戦う覚悟を決め
「殿、すみませんでした。殿のいうととおり戦いましょう」
「片倉さん、ありがとうございます。片倉さんが共に戦ってくれれば私の恐怖心が少しやわらぎます」
「殿、もったいないお言葉」
片倉は深く経丸に頭を下げた。
「片倉さん、皆さんに金崎殿の元へ援軍に行くことを伝えてその支度をお願いしてください」
「はい、わかりました。しかし留守番は誰にさせますか?」
「あっ、そうですね、どうしましょうか?」
いきなり部屋のふすまが開いて
「風のように速い、双子の弟、風神、うーた」
「雷のように光り輝く、双子の兄、雷神、ひょーた」
「天からこの世を支配する天神にして大多喜の番長、デモン」
三人は右ひじを左手で持ってひじを伸ばしたり曲げたりしながら陽気な声で
「俺たち英雄だ~‼」
経丸と片倉はビックリしながら
「いきなりどうした」
デモンはニコニコしながら
「殿はどこにいるって海老太郎に聞いたらここまで案内してくれた」
「海老太郎さん勝手に人をあげちゃダメですよ」
海老太郎は少し慌てながら
「いや、この人達が殿に用があるって言うから」
「それでも」
片倉は間に入って
「まぁ、いいじゃないですか今回は、海老太郎次は一旦殿に断るんだぞ」
「はい、わかりました。すみませんでした」
肩を落とす海老太郎を見て遼太は
「番長、なんか海老太郎に悪い事しましたね」
「ほんとだな、今度飯でもおごってやるか」
海老太郎の落ち込んでいる様子をずっと見ているデモンに経丸は
「今日はどういった要件ですか?」
「片倉さん今日こそ経丸様をいただきに来たぞ」
片倉も茶番に協力しようと大声で士郎を呼ぼうとしたその時
経丸は何かひらめいたような顔で
「あっちょうどいいところに片倉さんこの方々に留守番を頼みましょうよ」
片倉は経丸に茶番を悟られないように驚いた顔で
「殿、正気ですかこいつらは殿を連れ去ろうとしている人間ですよ」
「大丈夫ですよ、この方々は悪い人じゃないから」
「留守番ってなんだ?」
デモンの言葉にうーたは
「主人や家人など外出中、その家を守ることまた、その人」
デモンは少し大きな声で
「留守番の意味を聞いてんじゃねぇよ‼」
「そうですか、さすがに番長でも留守番の意味くらいはわかりますか?」
デモンは少し笑いながら
「お前バカにしてるだろ」
えっ、なんで笑ちゃってるの?
と思ったうーたは涼しい顔で
「いや、しておりません」
経丸はデモンの手を取りデモンを下から見上げて
「デモンさんお願いします、留守番してくれませんか?」
「はい、喜んで」
うーたはあきれた感じで
「番長、経丸様を連れ去りに来たんじゃないんですか?」
デモンはドヤ顔で
「バカだぁ、経丸様に頼られてるんだ、応えるのが男だろ」
ひょーたも同調するように
「そうだ、そうだそんなことも悠太はわからないのか?」
うーたはため息をつきながら
「まぁ、二人がそれでいいなら」
その様子を見ていた片倉は
この三人この世で一番悪役ができないんじゃないだろうか
こうして留守番は決まり経丸達は金崎家に向かって出立した。
春日山城
「金崎様、ただいま参陣いたしました」
金崎は経丸の手を固く握り
「よく来てくれました、経丸さん」
「この前は殿達がお世話になりました」
片倉は深々と頭を下げた。
金崎は優しい口調で
「あなたが片倉さん?」
「はい」
「経丸さんをよくここまで立派な武将に育て上げましたね」
片倉は慌てて
「とんでもございません、私など殿に何もできなくて」
経丸は二人の会話に割り込むように
「謙虚にならないでください片倉さんあなたは私の自慢の家臣ですから」
殿
嬉しそうな片倉の横で士郎は
「経丸、それがしはどんな家臣?」
「税金みたいな家臣」
「それがしを税金だと」
怒る士郎の横で海老太郎は片倉に
「税金って何ですか?」
「まぁ簡単に言えば厄介な荷物ってこと」
「片倉さん、税金の意味知ってるんですか?」
片倉は笑いながら大きな声で
「知ってるから説明してんだろ」
とツッコんだ。
海老太郎は真顔で
「じゃあ、士郎さんはお荷物なんだ」
「やかましいわ‼」
皆笑ったのであった。
金崎は優しい口調で
「疲れているでしょうから温泉でも入って来て下さい」
経丸達は声を揃えて
「ありがとうございます」
天羽家の皆は金崎の言葉に甘えて大きめの温泉に入った。
「殿、こたびの戦ですがどうお考えですか?」
ダメだ、温泉とはいえ士郎に裸を見られてるのは恥ずかしいなぁ
「殿、聞いておられますか?」
やっぱりお湯で少し隠せるとはいえやはりなぁ
「殿!」
片倉、は大きめな声で言った。
「うわぁビックリした、なんですか片倉さん?」
「こたびの戦、どうお考えなのですか?」
戦?そんなことより今をどう過ごそうか考えているのに
「まぁ、なんとかなりますよ」
「殿、もっと真剣に考えられた方がよろしいかと」
士郎も片倉に同調するように
「ほんとだよ、しっかり聞けよ」
「いや、ほんとにそうだよね」
経丸は自分の言葉に反抗すると思っていた士郎は小さな声で
「えっ、なんか素直だ」
片倉はパーンと大きく手を叩いて真剣な顏で
「今回の戦ですが、天下を決めるかも知れないですよ」
ヤバいなんも頭に入って来ない
ヤバいもう無理
バッシャン
「とっ殿、殿が倒れた引き上げるぞ。皆手伝って」
士郎と片倉は経丸を抱えた。
「しかしなぜ経丸は倒れたんだろう?」
凛は士郎の言葉に呆れた感じで
そりゃ、あんたとはいってんだから興奮してのぼせたんでしょ
大事な戦を前にこんな状態で経丸達は大丈夫なのだろうか?




