ターニングポイント 第122話謀叛
朝四時、本能寺にて
「殿、申し上げます」
いきなり戸を開けられて寝起きの萬崎は目を擦りながら
「どうした、朝から騒々しいなぁ」
「殿、大変です。何者かがこの本能寺を取り囲んでおります」
「はぁ?どういう事だ?」
状況の把握できない萬崎の元に
「殿、松本和彦の謀反でございます」
「兵の数は?」
「松本軍の兵の数は一万を超えると思います」
「わかった」
萬崎は素早く着替えて弓を取って部屋を出て松本軍に応戦した。天子も萬崎と共に戦った。
しかし、松本軍一万超えの兵力に対して萬崎の兵力は女性も合わせて百人を超える位しかいないので当然松本軍の奇襲など防ぎきる事は出来ない。
これ以上の抵抗は無意味だと悟った萬崎は
天子と大和を連れて奥の部屋に入った。
萬崎は二人に向かって丁寧に頭を下げながら
「今まで俺に付いて来てくれてありがとう」
「お前達とはここでお別れだ」
「殿!」
「兄上!」
「大和、お前に最後の頼みがある。お前は俺の首を持って松本軍に降伏し、そして天子と共に落ち延びて欲しい」
「兄上、私もここで死にます」
萬崎は強い口調で
「ダメだ!」
「なぜですか‼」
萬崎は優しい口調で
「琵琶大和はこんなところで死ぬような男じゃない‼生きて、生きて、生き抜いて自分の幸せを掴み取って欲しい」
大和は泣きながらうずくまり
「兄上」
萬崎は大和の背中を優しく叩き笑いながら
「泣くなよ、最後くらい笑って別れようぜ」
「はい」
萬崎は大和に右手を差し出した。大和は溢れ出る涙を拭って頑張って笑顔を作り萬崎に右手を差し出す
萬崎は握手しながら
「今後の人生楽しめよ」
萬崎の言葉にボロボロと涙をこぼしながら
「兄上、今までありがとうございました」
二人は抱き合ったのであった。
大和が部屋を出ると萬崎は部屋の隅にいた天子を呼び寄せて天子の頭をなぜながら
「天ちゃん、今までありがとな」
天子は覚悟を決めた表情で
「殿、私はここで死にます」
萬崎は強い口調で
「ダメだ、天ちゃんには生きて欲しい」
「私は智君が大好き、本当に大好きなの。だから私もここで死にます」
萬崎は天子を抱きしめて
「天ちゃん、その気持ちだけで俺は嬉しいよ。今まで本当にありがとう」
天子は強い覚悟で
「智君が死ぬなというなら、智君が死んだあとすぐに私は自害します」
「天ちゃん!死ぬのは絶対にダメだよ‼」
「智君、最後の私のわがままだと思って私がここで死ぬのを許してほしい」
萬崎は大声で
「俺は惚れた女性には死んでほしくないんだよ‼」
天子は笑顔で
「智君ってやっぱりやさしいなぁ」
天子は萬崎の手を握って優しい表情で
「私、智君のいない世に居たくないですから」
この言葉に萬崎は天子の太ももに顔をうずくまらせて今まで堪えていた涙が滝のように溢れ出し泣き叫びながら
「天ちゃん、ごめんよ!天ちゃんをもっと、もっと幸せにするつもりだったのに」
天子は泣き叫ぶ萬崎の顔を優しく持ち上げて
「智君、大和さんには泣くなって言っていたのに自分が泣いてどうするんですか」
「ごめん、だって、だって天ちゃんを幸せにできないまま殺してしまう事になったから」
天子は強い口調で
「萬崎智之!自分に誇りを持ちなさい‼」
天子は萬崎の頭をなぜながら優しい表情で
「私は十分、智君に幸せにしてもらいましたよ」
「天ちゃん」
萬崎の涙を布で拭いて笑顔で
「私、智君が夫で本当に良かった」
萬崎はぎゅうっと、力強く天子を抱きしめた。
「智君、最後は智君の笑顔が見たいから楽しかった思い出を話し合おう」
萬崎は涙を拭きながら
「そうだね」
二人は楽しかった思い出を話し合った。
最後に天子が
「私、智君と一緒に死ねて幸せだよ。来世も夫婦になれるといいね」
萬崎は天子を強く抱きしめながら
「絶対に夫婦になるよ。俺は天ちゃんをどんな手を使っても見つけ出して俺の嫁にするから」
天子は笑顔で
「うん、楽しみにしているね」
二人は最後のキスをした。
松本軍の放った火の矢が萬崎のいる部屋に突き刺さった。
燃え盛る炎の中萬崎と天子の二人は自害したのであった。
萬崎智之の天下統一の夢はここ本能寺で破れたのであった。




