ターニングポイント第120話 見物
「見て、見て。空に一つも雲がないよ」
「ホントだね。凄い青空だぁ!」
海老太郎とひのがはしゃいでいる横で
「今日はいい天気でよかったですね。殿」
凛の言葉に経丸は笑顔で
「うん、ホントね。絶好の京都見物日和だわ」
士郎は片倉に
「ところで地図無くて場所わかるのか?」
「持っているから大丈夫だ」
自信満々の片倉に士郎が
「地図なんか誰が用意したの?」
海老太郎が得意げに
「士郎さん、僕が描いたんですよ。京都全然詳しくないんで勘で描いたんですけど」
「そんなもん、何の役にも立たない捨てちまえ」
海老太郎は悲しそうな顔で
「えーそんなぁ!士郎さん、酷いですよ」
「酷くない。お前の地図を見て行動したら道に迷う!」
「いいじゃないですか、道に迷ったって道に迷うこそ旅の醍醐味ですよ」
「おっ、名言みたいなのが出たな」
「片倉さん、僕の事褒めてますか」
片倉は笑顔で海老太郎の頭をなぜながら
「褒めてるよ、褒めてるよ」
士郎は笑顔の片倉の顔の前に地図を突きつけて
「やい、片倉!あんた海老太郎を甘やかしすぎだぞ」
片倉は笑いながら
「わかった、わかった。冗談だからホントはちゃんとした地図持ってるから」
士郎は
「なんだよ。持ってるなら最初からそれ出せよ!」
片倉は笑顔で
「海老太郎君のユニークな地図を紹介したかったから」
海老太郎は嬉しそうに
「やっぱ、片倉さん優しいですね」
海老太郎に褒められて片倉は照れながら
「そうかなぁ」
士郎はイチャイチャしている片倉と海老太郎の頭を海老太郎が描いた地図を丸めて筒状にして二人の頭をはたいた。
「ねぇ、何してんの行くよ!」
経丸の掛け声に士郎達は経丸の元へ向かったのであった。
経丸達はまず清水寺に向かった。
清水寺の坂の前で経丸が
「もう、この坂を登れば清水寺よ」
ひのがいきなり
「あっ、私俳句を思いつきました」
面白そうだと思った士郎は
「おっ、言ってみ」
「はい、言います」
ひのは目をつぶって両手を胸に押し当てて
「京都かなきよみずてらは京都かな」
士郎は
「京都です、清水寺は京都です。二回も確認するな!」
とツッコんだ。
海老太郎が手をあげて
「僕もやる!僕もやる」
「よし、やってみろ」
海老太郎もひのと一緒で目をつぶって両手を胸に押し当てて
「みんないる一度はおいでしみずてら」
「おい、お前勝手に清水寺の読み方を変えるな!」
ツッコむ士郎に
「だって、きよみずてらだと字余りになるんだもん」
「それはお前の俳句の都合だろ。この寺はきよみずてらって言うんだ‼」
天羽家のメンバーは清水寺に入った。
「おー!これが清水の舞台から飛び降りると言われる清水寺か」
感心している片倉の隣で士郎は震えながら
「おい、おいここ高すぎやしないか」
経丸は悪ノリで後ろから士郎の両肩を揺らして
「そんなに高くないと思うけどな」
「おい、経丸やめてくれ」
恐怖で叫び出す士郎を経丸は面白がりニヤニヤしながら
「恐いの?ねぇ、恐いの?」
「やめてくれ、ホントにやめてくれ」
必死の士郎に
「なんか、奢ってくれたらやめてあげる」
「わかった。奢るから、奢るからやめてくれー‼」
経丸はやめてあげた。
士郎は吐き捨てるように
「これがほんとのゆすりだ」
「おっ、士郎君うまい!」
「うまいじゃねぇよ。馬鹿野郎!」
逆ギレしてくる士郎を片倉は大笑いしたのであった。
経丸は笑顔で
「ねぇ、皆!士郎が皆に美味しい物奢ってくれるって」
経丸の言葉に
「えっ!皆に奢るの⁉」
経丸は笑顔で
「うん、皆に!」
「ふざけんなよ!お前に奢るのだっておかしいのに」
「じゃあ、もう一回ゆすろうかな」
「ごめんなさい、奢ります。奢らせてください」
経丸は満面の笑みで士郎を指さし
「うん、それでよし」
士郎は経丸に聞こえない声で
「経丸、覚えてろ。必ず後で仕返ししてやる」
ひのがウキウキしながら大きな声で
「稲荷さんが美味しい店知ってるって!」
「おっ、いいですね。その店にしましょうよ殿」
「そうだね、凛ちゃんそこにしよう」
士郎は大きな声で
「稲荷!お前美味しくなくていいんだぞ!安い店紹介しろ」
士郎の言葉に稲荷はため息交じりで呟くように
「はぁ、ケチだな。士郎」
「おい、てめぇぶっ飛ばしてやる‼」
経丸は稲荷に襲い掛かろうとする士郎の後ろに付いて
「稲荷さんに乱暴するとまたゆすりますよ」
士郎はピタッと動きを止めて
「すみません。絶対に乱暴はしません」
経丸は笑顔で
「それでよろしい」
士郎は大声で
「くっそー‼」
経丸は士郎の肩を軽く叩いて
「どうしたんですか士郎さん。ゆすられたいんですか?」
士郎は首が取れるくらい必死に横に振り回して
「いえ、違います。何でもありません」
天羽家の皆は稲荷が紹介した店に付いた。
店に入ると士郎は稲荷の頭をひっぱたいて
「バカか、お前。ここうなぎ屋じゃないか?」
稲荷はキョトンとした顔で
「え?士郎ウナギ嫌いだったけ?」
士郎はもう一発稲荷の頭をひっぱたいて
「バカ、値段だよ。値段!」
「いいじゃん、美味しいんだから」
「バカ、よくねぇんだよ。それがしの奢りなんだぞ」
稲荷は少し呆れながら
「ケチだな、士郎は」
士郎は問答無用で稲荷の首を絞めようとするが経丸と凛に止められた。
片倉とひのと海老太郎はこの揉め事にまったく興味を示さず席に座り笑顔でウナギの松七つを頼んでいた。
士郎は慌てて
「バカ、お前松を頼んだのかお前らなんか梅の下の草でいいんだよ」
海老太郎は真顔で
「士郎さん、梅の下はありませんよ」
「バカ、そんなこと知ってるわ。お前らなんか他の客の残り物で十分だ」
この発言に皆は士郎を冷ややかな目で見る。
士郎は皆の目線に動揺しながら
「なんだよ。それがし奢るのに何でそんな目で見られなきゃいけないんだよ」
ひのが運ばれて来るウナギを見て
「あっ、ウナギ来ました」
「おい、無視かよ。ってもうウナギ出来たのかもしかしてこの店作り置きしてんじゃないのか?」
この発言に今度は店主までもが士郎の事を冷ややかな目で見る
士郎はいたたまれなくなりながら両手を合わせて
「いただきます」
天羽家のメンバーはウナギを堪能したのであった。




