ターニングポイント第112話武士
武士疾風は死ぬ間際走馬灯が頭の中を駆け巡った。
回想
武士は農民の家の長男として産まれた。
産まれた時から左腕がなかった為幼い頃近所の子供達によくいじめられた。
そのたび母は泣きながらが
「疾風ごめんね、私がちゃんと産んであげられなかったばっかりに」
武士疾風の父は幼い頃に戦死し幼い頃から女で、一つで育ててくれた母が自分のせいで泣いていると思い凄く心を痛めた。
母の泣いている姿をもう見たくないと思った武士疾風日ノ本一の武将になって母親を安心させるんだと思い、毎日懸命に鍛錬に励んだ。
武士疾風は鍛錬を続けて十年経った十八歳の春
「よし、どこかの大名に仕官して出世して母上に豊かな暮らしをしてもらうぞ」
武士疾風は仕官しようと色々な大名のところに行ったがどこの大名も農民の出でましてや片腕の大士疾風など雇ってはくれなかった。
「もう、次でダメだったらおとなしく農民をやるか」
そういう思いで武士疾風は松本屋形を訪ねた。
武士は大声で門番に向かって
「仕官しに参りました」
門番は不思議そうに武士疾風をジロジロ見て
「どこの出の者だ」
「私は農民の出です」
門番は呆れながら
「農民の出?ここはそのような者が来るような場ではない」
「お屋形様に合してください」
「バカを言うな、寝言は寝ていえ」
大士疾風はまったく相手にもされなかったそれもそのはずその頃の松本家は、まだ成長途中とはいえ大大名であった為、大士疾風は当主の松本徳博の父に会う事すら出来なかった。
大士疾風がしつこく門番にお願いしているところに十二歳の松本徳博がたまたま通りかかった。
「おい、何をしておる」
門番は慌てて
「これは若殿、この身分の低い者が仕官させてくれとしつこくて」
松本徳博はいきなり門番の胸倉を掴んで
「身分が低い?ふざけるな、人を身分で勝手に括って判断するな」
松本徳博は武士疾風に
「我が門番が無礼な事申して申し訳なかった」
と丁寧に頭を下げた。
「何で松本家に仕官したいのですか?」
「いや、仕官出来るならどこでもよかった我は母上に豊かな生活をして欲しいから仕官したいんだ」
松本徳博は冷たい顔で
「ほう、どこでもよかったんですね」
武士疾風は
やべぇ、しまった。
武士疾風の表情を見て松本徳博はいきなり笑いだし
「あなた、素直で面白い!!」
武士疾風は褒められて少し照れ臭そうに笑った。
「仕官したいと申していますが私の父に仕官するのは無理です」
「そんなぁー」
声を出して落ち込む武士疾風に松本徳博は
「しかし、私になら仕官していただけますがどうしますか」
武士疾風は松本徳博の言葉にパァーと明るい表情になって
「若殿は長男ですか?」
「長男ですが」
「長男なら次期当主じゃないですか!」
「まぁ、順当に行けば」
武士疾風は大声で
「おっしゃー!未来の松本家当主に仕えられるんだ‼」
これが武士疾風と松本徳博の最初の出会いであった。
松本徳博に仕えた大士疾風は武功を立てていき出世していったある時
「疾風、お主の母君をここに呼んできて欲しい」
「えっ、母上を」
「そうだ、是非挨拶をしたい」
「いや、私の母などお屋形様に紹介するほどの者ではありません」
松本徳博は武士疾風の胸倉を掴んで
「ふざけるな、お前を女で一つで育ててくれた立派な母親だろうが‼」
松本徳博掴んでいた手を離して小さな声で
「わかったら連れてきて参れ」
武士疾風は慌てて母親を連れて戻って来た。
松本徳博は丁寧に武士疾風の母親に挨拶をし母親も慌てて
「うちの愚息がいつもお世話になっております」
と畳に額をつけて挨拶をした。
「母君は今、一人暮らしですか?」
「はい、田舎で細々と暮らしております」
「そうですか、もしよろしければ疾風に屋敷を与えるのでそちらに住まわれてはいかがでしょうか」
松本徳博の言葉に
「えっ、私に屋敷を与える‼」
「あぁ、今までずっと活躍してもらっているからな」
武士疾風親子涙を流しながらペコペコと頭を下げたのであった。
回想終わり
お屋形様は私の母上を大切にしてくださりりそのおかげで私は親孝行をすることができたし、お屋形様が縁談を用意してくれたから私は結婚も出来て勇と蒼馬も産まれました。
お屋形様、私も今そちらに行きます。またあの世でもお仕えさせてください。
日の本一最強の武将はこうして生涯に幕を閉じたのであった。




