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ターニングポイント第105話徳博

経丸達が完膚なきまでに松本軍に負けたと知らせを受けた萬崎は


「松本が攻めて来るのか、厄介だな」


 萬崎はかつてない窮地に追い込まれた。


 その頃京都の将軍屋敷にいる稲毛は松本軍の快勝の知らせを聞いて


「おし、よくやった松本。このまま一気に萬崎をぶっ潰せ」


 子供の用に無邪気にはしゃいで喜んだのであった。



 松本軍は勢いに乗ったまま凶暴寺と戦って苦戦している萬崎軍をぶっ潰すため進軍の速度を速めていたが


「大変だ、お屋形様の体調が良くないらしい」


 いきなり松本徳博が体調を崩したことによって松本軍は一旦進軍を止めざる得なかった。

 

 松本徳博は息子の和樹と家臣達を集めて


「もう、死期が近いらしいな」


 武士疾風は松本徳博の手を強く握って


「お屋形様、そのような事を申さないでくだされ絶対に治りますから」


 松本徳博は優しい表情で


「ごめんな、自分の体の事だからよくわかるんだ」


 松本徳博の言葉に日の本一最強の武将、武士疾風は泣き崩れた。


「ごめんな皆、志半ばで俺は生涯を終える事なったけど和樹が後を継ぐ和樹の事を頼む支えてやってくれ」


 家臣達は皆涙を流した。


 松本徳博は家臣達を退けさせ和樹だけをその場に残した。


「和樹、すまないな。急にこのような形で後を継がせる事になって」


 和樹は震える声で


「父上」


 松本徳博は真剣な顏で


「いいか、今からいう事をしっかり聞いてほしい」


「はい」


「当主になるという事は困りごとの連続だ。もし松本家の力だけではどうしようもできないと思ったら金崎国子を頼りなさい」


 和樹は松本徳博の言葉に驚き


「金崎を頼る⁉金崎は我らの長年の宿敵じゃないですか」


「金崎国子は凄く優れた立派な武将だ俺はプライドを捨てられなかったから金崎国子に頭を下げられず長年争う事になってしまった。金崎国子を敵に回した事が俺の人生で唯一の後悔だ」


「でも、金崎国子が今さら松本家の味方になってくれるんですか」


 松本徳博は力強く


「なってくれる!必ずなってくれる‼」


「わかりました」


 松本徳博は和樹の手を握って


「後は頼んだぞ」


「はい」



松本徳博は山梨家を領土とする名門松本家に生まれた。


松本徳博は名門に生まれたがために松本家の当主になる事は決定事項だったが、徳博は武術の才能もなく体の弱い冴えない子供だった。そのため家臣の中では、徳博を当主にするのを反対する者が多くいた。


 その声を吹き飛ばすために徳博の父猛将、


武房は徳博に竹刀を持たせ毎日家臣の前で自分と戦わせ、本気で半殺しにした。虐待とも取れる厳しすぎる仕打ちに徳博は文句を言わず父、武房に立ち向かった。その姿を見ている家臣は誰も徳博が松本家の当主になることを反対しなくなるどころかほとんどの者が本気で徳博を応援するようになっていった。


徳博は稽古が終わると毎回武房と温泉に入っていた。武房は徳博の体を丁寧に洗いながら


「お前も強くなってきたな」


「父上が日々私をしごいて下さるお陰です」


「徳博、新潟にはおまえより少し年下で武術の天才少女がいるらしいぞ」


「武術の天才少女ですか。私とは真反対ですね」


「今度、その少女と戦ってみないか?」


 徳博ははっきり


「いや、お断りします」


「なぜ断る」


「私は松本家の当主になる男。いくら天才とはいえ年下の少女に負けたとなれば末代までの恥さらしです」


「大丈夫だ、負けたって恥でも何でもないむしろ戦わずして逃げる方が当主になる男としてとして恥ではないか」


 言いくるめられた徳博は天才少女と一対一で戦う事になった。


徳博は武房と共に新潟の春日山城に行き春日山城の道場で初めて天才少女にあった。


 徳博から見た天才少女の第一印象は


 なんだ?背も小さいし可愛らしい普通の少女ではないか


 徳博はそう思いながらも竹刀を手に持った。


 天才少女が竹刀を手にもって構えると徳博は


 違う、さっきとは全然オーラが違う


そして二人は相まみえたが徳博は天才少女に終始圧倒され何回戦っても一度も勝てなかった。


 打ちのめされた徳博は


天才は違う。凡人の俺が普通に努力してたんじゃ一生勝てない。凡人が天才に一対一で勝とうとするのが間違っているんだ。


 この天才少女こそが後に徳博の終生のライバルとなる金崎国子だった。


徳博はその日を境に武術の努力だけではなく積極的に民達の声を聞きに行って民達のための国づくりを行ったり、良く家臣達と一緒に温泉に入ってコミュニケーションを図ったり家臣の意見を聞き入れる会議を月一で開いたりして家臣との団結力を深め地道な努力で日ノ本一最強の騎馬隊を作り上げていった。


松本徳博は凡人から日ノ本屈指の大名になっていった。努力の武将だったのである。




 松本徳博は数日後、家臣達に見守られながら山梨の民のために少しでも強い国にし他国から攻められることのない平和で豊かな国ににしようと戦に明け暮れた、五十三歳の人生に幕を下ろしたのであった。

 

武士疾風は家来達が皆松本徳博の遺体から離れた後松本徳博の手を強く握って


「なぜ、なぜ今死なれた!お屋形様‼」


 大声で泣き叫んだのであった。


 松本軍は松本徳博の遺体を丁重に扱いながら山梨に引き返したのであった。


松本軍が自分達に向かわず山梨に引き返した事に不審に思った萬崎は山根と大内を呼び寄せ


「山根君、勤ちゃん、松本軍に何かあったな」


 山根は首をかしげながら


「そうですね、勢いに乗っているのに急に進軍をやめるのはおかしいですよね」


「魔王、私が松本軍の様子を探って来ます」


「勤ちゃん、よろしく頼む」


「はい」



 三日後

「魔王、松本徳博は死んでいました」


 萬崎は勤勉の言葉に驚き


「松本徳博が死んだ⁉なぜだ!」


「多分、病気です」


「そっか」


 横で聞いていた山根が


「魔王今が絶好の好機です」


「今が好機?」


「松本徳博が死んだことで包囲軍の士気はかなり下がったと思われますこの機に凶暴寺並びに上城、琵琶連合軍と戦ってかたを付けましょう」


「いいや、この機に凶暴寺と琵琶、上城連合軍と同盟を結ぶ」


「同盟、魔王らしいですね」


「あぁ、元はと言えば凶暴寺にも琵琶、上城連合軍にも恨みはないからな」


「でもな、この戦の原因となった将軍を俺は絶対に許さない将軍だけは潰す」


 萬崎は最強の大名松本徳博が亡くなって士気が下がった凶暴寺と琵琶、上城連合軍と同盟を結ぶことに成功した。



 そして萬崎は将軍、稲毛を討つべく京都将軍屋敷に向かった。


 京都の将軍屋敷で稲毛は


「おい、どうすんだ萬崎が攻めて来る誰か奴に立ち向かう奴はいないのか」


 稲毛の家臣は冷静に


「松本徳博が亡くなって他の大名達は士気が下がり萬崎と同盟を結びました。もう誰もいないでしょう」


「ふざけるな!」


 将軍稲毛は思いっきり家臣に肘置きを投げつけた。


 

 萬崎軍は包囲し将軍屋敷に火を放ち将軍、稲毛を捕縛した。


 勤勉は萬崎に捕縛した将軍、稲毛を差し出した。


「お前は、自分がやった事わかっているのか?」


「お前だと、貴様将軍に向かって何という言葉遣いだ」


 萬崎は冷静に


「将軍?わらわせるなてめぇは敗軍の将だろうが」


「貴様、将軍をバカにしていると痛い目会うぞ」


「黙れ、てめぇは俺の質問に答えろ、もう一度言う。自分がやった事わかっているのか?」


「俺のやったことは間違ってない、お前が間違っているんだろうが‼」


「こいつ、何もわかってない。切り捨てろ」


 将軍、稲毛は萬崎の言葉に慌てて


「待て、悪かったのは勝手に挙兵した凶暴寺や琵琶、上城連合軍や松本軍だ!俺は悪くないだから斬らないでくれ」


 人のせいにしてみっともなく命乞いをする将軍、稲毛を見て萬崎は怒りを通り越してあきれ果てて


「お前なんか、斬るにも値しない」


 と吐き捨ててその場を去った。

 

 将軍、稲毛は京都から追放しこの戦は一旦終戦したのであった。








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