健太と妹
遅れてしまいすみませんでした。
自転車がない、それにカバンも健太が身につけていた物以外無くなっている。
「どうして無いんだ。もしかしてこっちの世界に戻ってくる時、持ってなかったから」
とりあえずトンネルの出入り口まで探すも見つかる気配が無かったため、ひとまず歩いて家へと帰ることにした。トンネルから健太の家までは10分位で着くため、そこまで時間は掛からなかった。
家に着くまでに考えなければならないことは、自転車とガバン類の紛失についての言い訳と学校への言い訳だ。異世界に行ったと正直に言っても、方法を教えないと信じてもらえない。今回トンネルを通った事がトリガーならば、明日もう一度試せるが違っていた場合説明がつかない為、容易に話せない。
そんな事を考えているうちに、健太は家に着いてしまった。
「た、ただいま」
「あっ、お兄ちゃんお帰り、私も今家に帰って来たところだよ」
なるべく平常心でいる事を意識しながら、家の中へと入った。健太は3人兄弟の真ん中上に姉がいて、下に妹がいる。姉は既に社会人で、父と共に異世界についての研究をしている。健太が最後に見たときは黒髪のショートで、大人びた雰囲気にキリッとした目が多くの男には魅力的に見える。それに胸も。
妹は今年高校受験を控えた中学3年生で、姉とは性格も胸の大きさも真反対だが、姉に憧れており黒髪のショートにしている。
「あれお兄ちゃんガバンは?」
「ん、あー、ガバンな。あっガバン学校に置いて来ちゃった」
「何やってるのよ、ドジね」
妹の笑った顔を見て、少し落ち着いた健太。
「そういえば、なんで今日こんなに遅いんだ?もう8時になるっていうのに」
「えっ、あーそう!図書館にいたの!」
少し焦っている様子、そして普段かくはずのない汗を見て健太は少し違和感を感じた。そこで健太は少し探りを入れることにした。
「そうかならいいけど、あんまり遅くならないようにしろよ、危ないから」
「うん、わかったよ」
「うん、先風呂入るなら早く入れよ。俺も入りたいから」
「えっ、あっ、うん。でもなんで?」
「お前汗かいてるから、てっきり風呂に入りたいんだと思ってな」
「えっ、あっうん入るよ。急いで入ってくるから待ってて」
「あいよ」
あきらかに様子がおかしい、何かを隠している感じだ。汗をかく、それは走って来たから。図書館に行くことはあっても、こんな時間までいたことはない。健太はそれらから導き出された答えを考えると、一つの結論にたどり着いた。
「男か」
そのことを確信した健太はなぜかとても冷静になり、そのまま二階にある自分の部屋へと向かった。
「あら、健太お帰りなさい、ご飯できてるわよ」
「うん、ありがとう。着替えてくるよ」
リビングの扉を開けて出てきた母の言葉にも冷静に対応するも、以前健太の顔は無表情だった。
そして自分の部屋に入ると急に足の力が抜けて、その場にひざまづいた。
(くそー!妹に先を越された!彼女いない歴=年齢の俺にはできない体験を先にしやがって!)
顔を上げると両目から大量の涙を流し、叫んだ。
「ちっきしょーーーーーーー!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その頃、風呂に入る為制服を脱いでいる妹は顔を硬らせていた。
実際、健太に言った図書館に行っていたのは本当でたまたま帰りが遅くなっていたのだ。
「遅くなっちゃった、急いで帰らないと」
自転車に乗り急いで帰りトンネルに差し掛かると、前方に健太がいた。
(あっ、お兄ちゃんだ)
「おーいお兄ちゃー」
妹が健太に声をかけようとした瞬間、トンネルの中が光り、次の瞬間健太は居なくなっていた。
「えっ、おにい・・・ちゃん?」
トンネル全体を探しても、見つからない。
そして数分後またトンネルが光だし、家の方の出口に出てきた。少し隠れて中を見てみると、健太がいた。
(えっ、お兄ちゃん今どこから)
そして健太が家に帰ろうと妹の方へ歩き出すと、急いで自転車で帰った。
「お兄ちゃん一体なにが・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
同時期異世界、左目から血が出ており右目しか開いていない少女。その近くでは胴に大きな穴を開けた生物が血を流して倒れている。右足を引きずり、身体中至る所から血が流れながら、健太の自転車やバックへと歩みよる。
自転車を見た後、バックの中身を調べると健太の生徒手帳が出てきた。
「け、ん、た」
健太はまだ知る由もなかった、今後彼に起きる悲劇を。
読んでいただきありがとうございます!
この続きが読みたい方は是非ブックマーク、感想よろしくお願いします!
また十時台に投稿できればしたいと思いますのでよろしくお願いします。