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まえがき
もうまもなくに、わたしの死期が差し迫っていることを、先日医師から告げられた。
あいにくわたしには残り少ない余命を共に過ごす人も、整理すべき財産も持ち合わせていない。短いながらに持て余した時間を、だから、こうして書き物に費やすことにした。
遺言とか遺書の類ではない。どうせ読む人もいない走り書きの中で、穴に叫ぶように罪を告白しようと考えたのだ。
わたしはこの一年間、とある少女に恋い焦がれた。まだ身体も充分に成長しきっていない、赤いランドセルがよく似合う彼女を浅ましくも愛し、彼女の人生を狂わせてしまった。罪が露見しなかっただけの犯罪者である。
ただ一つ弁明するならば、彼女は明確に愛というものを欲していた。もちろん、わたしのような欲にまみれきったそれではなく、家族や、あるいは天上の人から与えられるべき無私にして無償の愛である。わたしは彼女をそう愛そうとした。この通り失敗し、今は独りで死を待つのみであるのだが。
どうか彼女が、しかるべき人からそのような愛を与えられて生きていることを願うばかりである。