第一話、白黒世界は黒に染る1-2
ぬいぐるみを拾った後、家に帰る祐介。
(真面目そうな彼は逃げられたのかな?)
他人を心配する事が出来る性格な祐介。
ただ、優しいと言えば良いのか、お人好しと言えば良いのか…
「っ!脚、ヒビ入ってるかも…」
祐介が気付いていないだけで、脚は折れている。
ヒビが入っているのは頬骨と腕、それ以外も打撲裂傷等も有り救急車を呼んでも可笑しくない状態である。
(はぁ…メガネどうしよう)
踏みつけられたメガネは、フレームは曲がって、内蔵されているカメラは壊れてしまっている。
(ボヤけて見える外の景色も久しぶりだ…)
慣れた道のりの為、帰ることは差程難しい事では無い。
それでも祐介の足取りは重いものだった。重症の身体もだが
(母さんになんて言おう………)
(もうちょっとで家だ…)
辺りは暗くなり始め、今にも雨が降り出しそうな空。
(あんな所にゴミ?)
ボヤけた視界は道の端に少し大きめの物を捉える。
(ゴミ捨て場はもう少し先のはず、仕方ない持っていくか)
親切心からゴミ捨て場へと持って行こうとゴミを拾いに行く。
「ミャー…」
「!?」
突然の鳴き声に驚く。何せゴミだと思っている方から聞こえたのだから。
(ゴミじゃなくて猫が入っていたのか)
雨が降り出しそうな外に猫を置いて行く事が出来ない祐介は、とりあえず家に連れて帰る事にした。
「家に連れてくけど、大人しくしててね」
「今、ちょっと身体が痛いんだ」
そっと猫を抱き上げる。
猫は言葉が解るかのように大人しくしていた。
「うう、君小さいのに重いね」
「フシャー!」
猫はまるで女性に体重の事を言った時の様な反応をし、腕の中で暴れた。
「ああ、ダメだよ暴れたら!」
言うことを聞かず、降りてしまう。そんな猫を追いかける祐介。
車が近付いているのに気付かずに…
「やっと、追いついた!ごめんね体重のことはもう言わないから、許して」
猫を抱き上げた時、車はすぐ後ろに迫っていた。
(ああ、またか…この子だけは守ろう)
包み込む様に身体を丸くして、猫を守る祐介。
そこで世界は黒く染まってしまった。