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プロローグ
怪物と戦う者は、その過程で己も怪物とならないように心せよ
──フリードリヒ・ニーチェ
この国を一望できる塔の最上階、そこで二つの人影が対峙していた。
白装束の男に対峙するは黒装束の男。
そのうち白が口を開いた。
「なぜここまで来た」
呟いた声に黒が俯いていた顔を上げる。
目深に被ったフードに隠れていた顔──髑髏の仮面が白い男を見据える。
仮面の市亜から聞こえてきたのは低いくぐもった声だった。
「決まっているだろう。お前を殺されないようにするためさ」
その言葉に白装束の男はある結論に辿りく。
「あり得ない」
自分に言い聞かせるよう呟いた男は、次の句に殺意を漲らせる。
「殺してやる」
宣戦布告に黒い髑髏の男──死神は嘲るように咽喉を鳴らして答えた。
「いいぜ、俺を殺せるかどうか──試してみるかい」