滅亡トルコ
市街は一面の火の海だった。匈奴はまだ知られていない新型の火器を用いたようだった。ぼくは、御厨に忍びこんで、そこいら一面に散らばっている瓜や種子を貪り食っていた。
悠久のタスマン・トルコ帝国-それが、こんなにもあっけなく滅びてしまうとは!
ケチのつきはじめは、チャルディラーンでの会戦だった。大砲が火を吹き、敵のサファヴィー軍が総崩れになった、と思ったその時、大地を揺るがす轟音と稲妻、白熱する光がトルコ軍のはるか後方を襲ったのだ。
スルタンは死亡、わけのわかる者はだれもおらず、トルコがアッラーの怒りを買ったのなら、一人ひとりの頭に各人の名前がアラビア語で書かれた(アラビア語。当然、ペルシア語じゃない)石が当たるはず、アッラーの怒りを買う覚えはござんせん、などと言ってみても、いまさら詮のないことだった。
星回りが、悪かったのだという。スルタンが、神を怖れぬ(別の機会なら、開明的な、と言われたろうが)人だったため、最悪のハウスで、会戦をはじめてしまったのだという。ぼくは、アッラーのみ心なら、そういうこともあるのだろうな、と言うことしかできない。
ぼくたちは、かつて世界史上で知られたことのない、民族の絶滅に直面しているのではないか、この三日ほど、そういう考えがよぎったりする。ひょっとしたら、ぼくたちはユダヤ人のように猿に変えられてしまうのかもしれない。
バナナを食べて、タイヤにぶら下がるのも悪くないなと、ちょっと思った。