予感
返事は決まっていた。男性のフォルスにした。奴隷商も分かってましたよとばかりに頷く。
バッレクは別の部屋に案内される。女はそのまま待機している。
奴隷商から奴隷の証である、奴隷の首輪の注意事項と説明を聞く。これがあれば主人と認められた者に危害を加えることができなくなる。主人と一定の距離を離れなくなる。主人の命令に聞かなければならない。自分で奴隷の首輪を外すことができない。主人と奴隷商意外に外すことができない。無理やり外そうとすると、体に電流が流れる。かなりの痛さで大の男が泣きなくなるそうだ。この4つだと大まかに説明された。
少し時間と説明に手間取った。黒い首輪を装着して契約が完了した。
「バッレクだ。よろしく。ダンジョンに行くけど問題ないですか?」
「……うむ。問題ありませぬ」
フォルスを選んだのには理由がある。第一にダンジョンに必要なのは肉体的な強さ。頼りになる前衛は役にたつのは経験済み。ケイトも捨てがたいと考えたが弓矢には金がかかるし、連携が未知数だったので戦士のフォルスにした。フォルスの装備と保存食を整えたら貯金も尽き果てた。防具を買うお金はなくて安い中古の剣を買った。今日は疲れたので、もう寝ることにした。直ぐに寝れた。
翌朝、朝食を酒場で取り、フォルスのギルドカードの手続きを完了した。
「僕の職業は(見習い)盗賊です」
「ほう」
盗賊と言ったのは少しでも自分を大きく見せるためだ。舐められたらいけない。
ダンジョンに向かうまで、これからの方針を話す。
「見ての通りメンバーは僕と、フォルスの2人しかいませんので、モンスターとの直接的な戦闘は避けたいと考えています。僕は盗賊なので、敵に見つからないようにするのは得意です。薬草や宝箱を中心に見つけていきたいと考えています。フォルスにはどうしても戦闘が回避できない場合に援護をお願いします。僕も戦闘には参加しますが、はっきり言って弱いです。ところでダンジョンに潜ったことはありますか?」
「うむ。ここのダンジョンなら単独で5階までならいけるな」
「5階ですか。それは心強いです。僕は4階で稼ごうと思ってるので。あと、待遇の話もします。ご飯は1日2食出します。毎日ダンジョンにいるという訳にもいかないので、休日もあります。その日は自由に過ごしていいです」
「ほう。これは良いご主人様に巡り会えたかなぁ。あまり期待しないでおくよ」
入り口には太っちょのダニーがいた。口をもぐもぐと動かして何か食べているようだ。
「おはよう、ダニー。昨日の忠告通り奴隷を買いました」
「おうよ。年配者の忠告は聞くもんだぜ。それにしても、数日寝込んでたのに、もうダンジョンか?少しは休んだほうがいいぜ」
「若さの特権ですよ。(本当はお金が無いので稼がないといけない。うまくいけば2度とダンジョンに行かなくて済むかもしれない)」
「そっか。気ぃつけろよ」
ダニーはちらりと奴隷のフォルスを見る。
マヌケと馬鹿にされている僕にも気にかけてくれる。ダニーは良いやつだ。
確か妻と娘が一人いるらしい。
顔見知りだけど、しっかりカードを見せてダンジョンの中にはいる。
偽造されていないかや、カードの有効期限が切れてないかみているらしい。
ダンジョンの入り口は洞窟のような真っ黒な穴を開けている。吸い込まれるように2人は中に消えた。
「今日はどんなお宝を見つけられるかな?」
楽しみでしょうがない。まだ1階にいるけど、今日もきっとお宝を発見できる『予感』がする。