宝箱
ダンジョンの4階についた。敵とは戦闘はしていない。1階~3階までは洞窟のエリア。4階から6階まで森林と草原エリア。なぜかダンジョンに巨大な森林と草原があるエリア。ここでしか採れない薬草や動物がいて小銭稼ぎにはちょうどいい。ダンジョンの地図が売っているので最短距離で4階まで到着した。今日の目的は4階でお金を稼ぐことだ。バッレクはかなり不安である。
4階に出てくる強敵はオークというモンスター。2足歩行で体がでかくて力が強い。人間並みの知能がある種類なので集団で襲い掛かってくる。手に持つ武器も厄介でたとえ棍棒でも、巨大な体から振り下ろされて直撃したら一発であの世逝きだろう。
バッレクは人より優れた『目』で光る物体を発見した。ラコに周りを警戒してくれと小声で言うと、まるで猿のようにするすると大木を登っていく。町一番の長さを誇る塔と同じくらいある木まで登る。木の枝に黒い鉄と木でてきている宝箱があった。
「黒か……」
普通の木の宝箱は罠がない代わりに、大したものがない。
黒の鉄と木の宝箱は、罠がある代わりに、お宝が入っている可能性が高い。(罠が無い可能性もある)
小さな宝箱をリュックに入れて、するすると下に降りる。
「ちょっと、上で何をしていたの?私を一人にしないでよ!」
「ごめん、ごめん。大木の上にあった宝箱を見つけたから機嫌を直して」
両手で収まりそうな宝箱を見せると、ラコはそれまでの不機嫌そうな顔がなくなり笑顔になる。
ラコが警戒なく宝箱を開けようとするのを注意する。
「罠が仕掛けてあるかもしれないから。魔法で調べてくれ」
「私そんなことできないよ」
「えっ、じゃあ何が出来るの?」
「攻撃魔法が得意よ。あとは、支援魔法が少しね」
「分かった。何とか自力で開けてみる」
離れた大木に上り上から宝箱を落とす。衝撃で宝箱は開いて中身が零れる。
下に降りて何が入っていたのか確認する。銀色の薄い板みたいなものだ。
「はずれか……。見つからなそうな宝箱だから何かすごい物かと期待して損した」
「いらないなら私に頂戴」
そのままひったくる様に掴むと、銀色の物体を大事そうに布で包みしまい込んだ。
「ドロップ品も欲しいからモンスターを狩ろうか。はぐれ個体を狙う」
警戒しながら歩き、泉まで着いた。ここは単体のモンスターが遭遇しやすい場所である。
いたいた。巨大なまだら模様の怪鳥が水を飲んでいる。こちらには気づいてないみたいだ。
ラコと目を合わせる。
呪文を唱えて杖を怪鳥に向けると、すさまじい熱の塊が発射される。離れた所にいるのにその呪文の強力さを知る。怪鳥は消え去り、アイテムが落ちていた。
アイテムをしまう。それからはぐれ個体を何体か見つけて同じ作業にはいる。
ラコにかなり無理させたので、とっておきの場所に案内する。
「洞窟なのに明るいのね?モンスターはいないの?」
「ギリー……いや、知り合いに教えてもらった場所だ。モンスターもいないから安心してくれ。明るいのはまあ、いいじゃないか。夕食の準備をするからゆっくりしてて」
テキパキと夕食の準備をする。3人で旅をしていた時はバッレクが飯の準備をしていた。2人は店を出すというだけあって、料理も美味しかった。しかし、一番年下で下っ端だということを理解していたので、積極的に雑用をこなしていた。
食べ終えて片付けもした。暖かいスープにパン。スープの材料はダンジョンで採った新鮮な野菜を使った。満腹になったのでそのまま寝た。