リーダ―
「うん、ちょうど仲間を集めようとしていた所なのでいいですよ。僕は……。ちょっと待ってください。『マヌケ』ってどういうことですか!?」
反射的に仲間になると返事をしてしまったが、見知らぬ相手にマヌケ呼ばわりされる謂れはないはず。ふ~ん、といかにも私知ってますよ、という訳知り顔でバッレクを上から見下している。
「お宝の金貨を仲間に盗まれたんでしょう?それも金貨100枚!ダンジョン産の金貨は混じりなしの純金。通常の金貨より高値で取引されているのは知ってるわよね?」
「そ、それくらい知ってるよ。何でそこまで詳しい情報が洩れているの?」
金貨のことは初めて知った。アンからも聞いたことはなかった。たまに数枚銀貨や金貨を見つけても、換金は『リーダー』であったギリーに任せていた。
疑問に思っていることを少女に聞く。
「あのおしゃべり職員のリロに話したのが悪いのよ。あの受付のおばさんは喋るスピーカーよ。あの人に話したらその日のうちにザッカリラの町中に噂は広まるわ」
「そんなこと。し、知らなかったよ。誰も教えてくれなかったし」
「馬鹿ね。情報収集を怠ったマヌケが悪いのよ」
「だからマヌケって言うのは止めてくれよ。僕にはバッレクという素晴らしい名前があるんだから。この名前は風のように素早い――」
僕の名前の由来を教えてあげようとしてもちっとも聞いちゃくれない。
「マ ヌ ケ。私はえっと、ラコ。そう、ラコね。今年16歳になる。職業は魔法使いよ。マヌケは今いくつなの?」
「……13歳だ。見習い盗賊をしている。前衛だけど、戦闘は期待しないでくれ。専門はお宝を見つけることだ。ところで、ラコはザッカリラのダンジョンは何階まで行った経験があるの?」
「そうね。5階までは一人で行けるわ」
「5階!?」
ザッカリラのダンジョンは地下10階まであるとされる。1階~3階までを上層。4階~6階までを中層。7階~10階までが下層。下に行くほど敵も手強くなる。かつてのギリーのメンバーたちとでも4階までが限界だった。5階層は敵も多くなるので3人では厳しい。最低でも熟練のメンバーが4人、チームに必要になる。4階でも3人だけなら稼げるのでいつも、4階か3階で仕事をしていた。
それが……ラコという正体不明の少女は5階に一人で行けるというのか。
「僕は4階までしか行ったことがありません。それも2人いたサポートつきです。ラコの足手まといになるのでは?」
「い、いいの。ほら、私って魔法使いじゃない?いくら私が天才でも、前衛がいないとやっぱり不安なの」
「僕は見ての通り軽装です。盗賊だし戦闘向きの職業じゃないです。他に前衛を担当する仲間は?」
バッレクは栗色の髪に、身長も小さく、幼い顔つき。使い古した、革の胸当てと革の帽子を身に着けている。強力なモンスターの突撃に耐えられそうには思えない。
「仲間はいないよ。信じられるのは自分だけよ。それに頼れる仲間を探してたんでしょ?」
詳しい契約をする。見つかった財宝は全て2等分でいいとのことだった。もっとゴネてくると思ったがあっさり決まった。
「じゃあ、『リーダー』は5階に挑戦したことのある私ね」
バッレクは反論できなかった。強いヤツがリーダーになるのは当たり前のことだ。リーダ―には決断力と仲間を引き連れる強さがいる。弱いヤツには仲間は着いていかない。ダンジョンとは弱肉強食の世界である。
明日からダンジョンに行くらしい。
魔法使いのアンを見ていたので、魔法使いが戦闘に役に立つことは知っていた。




