マヌケ
ギルド職員のリロは困っていた。自分はおしゃべりで御節介焼きだとも自覚している。
目の前には田舎から出てきたらしい、若くまだ子供の兄妹。兄は年齢の割には体が大きくて、力が強いらしい。こちらが親切心から忠告しても、聞く耳も持たないだろうねぇ。妹の方は年相応の背丈。杖とローブ姿から魔法使いだと想像できる。
ザッカリラ町はダンジョンによって栄えている。一攫千金を夢見る若者が多く訪れて、夢半ばに去っていく。死亡事故や、モンスターの攻撃により、体の一部に重大な障害が残る場合もある。
リロは毎年多くの冒険者の若者を見てきた。その経験からこの2人はダンジョンで死ぬと何となく分かっていた。
『バッソ兄弟』のチームは乱暴だし、『剣と盾』あのグループは20後半以上しかいないから若い子は話しに入りにくいだろうねぇ。
10代半ばで、この子たちを育ててくれるような子が誰かいないかねぇ。
リロは隣の受付に並んでいる男を見た。
栗色の髪。身長は高くもなく、かといって低いという訳でもない普通。目に覇気はなく死んだような濁った茶色い瞳。茶色のローブは相当使いこんでいるらしく、所々破れたり、汚れている。革の胸当てに頭にも革の頑丈そうな帽子をかぶっている。ザッカリラのギルドでは、3度も仲間に裏切られた『マヌケ』のバッレクと知られている。わたしから言わせてもらえば、裏切られても死ぬことはなくしぶとくダンジョンで小銭を稼いでいるの知っているので、不死鳥のごとく蘇り生きているだけ『幸運』だと……。この子がいたねえ。
「アロンに紹介したい子がいるねぇ」
「ギルド職員のくせにしつこいぞ。俺たち『無敵兄妹』に仲間なんて必要ねえよ。俺様の剣と妹の魔法がありゃあ、怖くねえ」
「兄さん、失礼でしょう。謝って。それに、話を聞いて損はないわ」
「エリサがそこまで言うのなら……。きついことを言ってすまなかったな。少し興奮していたようだ。取りあえず、話だけでも聞きたい」
次の日までに紹介すると職員のリロに説明された。そこまで言うんだ。待ってやろう。さて、俺様達に見合う、優秀な冒険者を紹介してくれるんだろうな?
時間が余ったので、ダンジョンの地図を買う。ついでに、装備の点検した。情報屋に金を掴ませて、めぼしい冒険者の名前を聞いた。
ギルドの2階。酒場の隅にあるテーブルで職員のリロと若い男がいた。年齢は俺様と同じくらいか。強そうには見えねえや。
「初めまして。バッレクです。年は16で職業は盗賊です」
「アロンだ。今年で15になる。みての通り戦士だ。モンスター如き、一刀両断に斬ってやるよ」
「私は妹のエリサ。今年で13になるから一番下になるわ。見習い魔法使いだから、覚えてる呪文の数は少ないの。余り期待しないでね」
「あとは本人たちで話あってねぇ」
おしゃべり職員のリロはそのまま出て行った。
「バッレクって言ったか?お前強そうに見えないんだが、俺たちについて来れるか?足手まといはいらねえからさ」
「4階までなら一人で生存可能な力はあります。あと、僕は盗賊なので敵を見つけるのが上手いので、敵を回避して行動できます」
「うん?ちょっと待って。それじゃあ、モンスターと戦わないってことなの?どうやってお金を稼ぐつもりよ」
エリサが詰め寄る。
「4階なら珍しい薬草もあります。モンスターと戦わなくても、細々となら生活できるお金は入るでしょう」
「あのよぉ、俺たち手っ取り早く稼ぎたいんだよ。ちまちましたことより、でっかいことをしたいんだ」
「そうですか。それなら話は決別ですね。僕は日銭を稼ぎたいので失礼します」
「おう、さっさとどっかに行けや。お前の顔は二度と見たくないぜ」
その後、その兄妹を見た者は誰もいなかった。




