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魔女リリスは男に戻りたい  作者: 夕凪真潮
第一章 四人の冒険者、集う
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第4話


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

「きゃーーーー!!」


 悲鳴を上げながら、狭い通路を駆けていくボクたち二人。

 そして後ろには十頭ばかりの犬型の魔物が、ボクたちを追いかけてきてたりします。

 Eランクのサーベルウルフです。

 一匹一匹なら大した敵じゃないけど、さすがに十頭も居れば脅威。

 走りながら呪文詠唱なんていう器用な真似はできないし、リティだってこんな状況だと弓を放っても到底当たらないと思う。


「リ、リリスちゃんっ! もっと早くっ!」

「そ、そんなこと言ってもこれ以上は無理っ」


 ボクは運痴ですし、体力も致命的にありません。

 逃げてから数分しか経ってないけど、もう息が上がってきています。

 これでも前の人生に比べれば遥かに体力は多いけど、こっちの世界では殆ど無いに等しいのです。

 冒険者として体力がないのは致命的と、今日実体験しました。

 あとは今日の教訓を今後生かせる事ができたらいいな。


「そんな大きいの二個もぶら下げてるからだよ!」

「そ、それは関係ないでしょっ!」


 確かにたゆんたゆんと揺れるのは鬱陶しいし邪魔だけど、こんな時に言うことじゃないよね?!

 それにしても、なぜこんな状況になったかと言えば……。



 オーガを倒したあと十階層から戻っていく途中の事でした。

 普段は周囲の気配を探る感知魔法をかけているし、リティも獣人だから人間より遥かに鼻が良く、そうそう奇襲を喰らうことはありません。

 しかしそれは階層内にいる時だけであって、上や下の階層へと移動している最中に効き目がなくなります。

 階層の移動とは魔素の境目を渡るからリセットされるのだとか、階層は本来別の次元にあってそのつなぎ目を渡るからとか色々な説があるけど、原因はどうであれ感知系の魔法が突然消えてしまうのは事実。

 それと移動途中は一切匂いがしない、とリティも言っていますしね。

 ですので、基本的に別階層へ移動した瞬間に魔法をかけなおします。


 ですが、まさか階層を降りた瞬間に、十頭ばかりのサーベルウルフとこんにちは、するとは思ってもいませんでした。

 普通魔物は階層の階段付近には近寄ってきません。

 これは魔素が途切れる為だと言われています。

 でも階段近くにこれだけの数がいたということは、誰か冒険者が逃げてきたのでしょう。そしてサーベルウルフが諦めて、しばらく階段下でたむろっていたというところかな。


 もちろんそのまま十階層へ戻って逃げたのですが、何を思ったのか彼らもボクたちを追いかけて十階層に来たのですよ!

 魔素の関係から魔物が階層の移動を行うことは少ないけど、出来ないわけじゃないんですよね。


 逃げたは良いけどこのままだと追いつかれて、彼らのご飯になってしまいます。

 しかし十階層にはボス部屋があります。あそこには扉があるので、逃げ切れれば助かる見込みがあります。

 更にボスはさっきボクたちが倒したばかりだから、あと一時間くらいは沸きません。


 ……でもボス部屋って一番奥なんだよね。

 そこまでボクの体力が持つとは思えない。

 こうなると、残りは他の冒険者に助けてもらうこと。

 迷宮内は意外と広くて他の冒険者とかち合うような事は少ないのですけど、ボス部屋や階段付近なら可能性が高くなります。

 その他にもおいしい魔物が多くいる場所ですね。

 特に階段からボス部屋までの間、一番近い通路なら誰かいる可能性が高いはず。


 という事で、一路ボス部屋まで逃げている最中なのでした。



「はあっ、はあっ」


 徐々にボクのスピードが落ちてきました。


「大丈夫?!」


 リティがボクの手をひっぱりながら言ってくれるけど、もうそろそろ限界。

 それにまだボス部屋まで半分というところ。

 これじゃ到底逃げ切れるものじゃないですね。


 ぱっと後ろを見ると、サーベルウルフ以外にも数体ほど魔物が追加されていました。

 確か二~三匹ほど、ジャイアントフロッグやファイアビートルとすれ違った気がしますから、きっとそれらも追いかけてきているのでしょう。

 この横幅五メートル程度しかない通路で、どうやって魔物とすれ違ったのか、走るのに夢中だったボクには分かりませんけど。


「こうなったらあの通路を曲がった先で奇襲かけよう」

「そ、それよ、りも、リティは、このま、ま逃げ、て」


 もはや言葉すらうまく紡ぐ事が出来ない状態。

 でもリティだけなら、逃げ切れるはず。

 そしてボクが囮になれば、もっと可能性が高くなる。


「ばかっ! そんな事できるわけないよっ!」


 即座にリティは拒否してきました。

 それはそれで嬉しいんだけど、でもこのままだと二人ともご飯になっちゃう。

 それならボク一人だけのほうが良いよね?


 意を決したボクはリティの掴んでいる手を振り払ってその場に立ち止まりました。


「あっ?!」


 振り払われたリティは急停止したけど、ボクは逃げてと叫んでから短縮詠唱ショートスペルを唱えました。

 先頭を走っていたサーベルウルフがボク目掛けて飛びかかってくるのが視界に入ります。


<風よ!>


 思いっきり魔力を使って風を起こすと、飛びかかってきていたサーベルウルフが風に押されて吹き飛ばされました。

 他の魔物たちも一瞬動きがとまります。


 でも本当に一瞬だけ。


 今度は三頭が唸り声をあげながら、ボクの正面と左右に分かれて飛びかかってきました。

 うわ、連携取れているなぁ。しかも僅かに時差までつけちゃって。

 風を起こせるのは人間一人分程度の幅だけ。

 どれか一頭を押し返しても、残り二頭に襲われてしまう。


 ……おわった。


 諦めて目を塞いで、その時を待ちました。

 初めてだし、痛くしないでね。

 そう馬鹿な言葉が浮かんできたのはここだけの話です。





これで書き溜めてた分終了です。

週末頑張れるかな>w<


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