↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女リリスは男に戻りたい  作者: 夕凪真潮
第二章 撃ち砕け火の門番
23/35

第22話

更新遅れてすみません……


 無表情なハイエルフの女性の、細く白い足がしなるようにボクの右側から攻めてきた。

 足が腕に当たり、インパクトが伝わる瞬間、身体中を覆っている練った魔力をより濃厚に出力させる。

 まるで硬い鉄同士がぶつかったような音が響き渡り、その反動でハイエルフの女性が後ろへと軽業師のように大きく跳んだ。

 地面に着地した瞬間、手に持ったミスリルの細剣を前に突き出して、ボクの方へと突進してくる。

 それに合わせるようにボクも両手を前へと突き出し、濃厚な魔力を放った。

 その魔力がボクの目の前に一瞬で集まり、盾を形成していく。


 魔力の盾に突き刺さった細剣は、まるで粘土に突き刺したかのように埋まり、細剣を絡め取って突撃の勢いを無くして行く。

 それを感じ取ったハイエルフの女性が、一気に高魔力を細剣へと伝える。

 易々と魔力の盾を切り裂くかと思えたが、濃密な魔力が泥水のように細剣の鋭い切れ味を無くし、そして勢いが止まった。


<凍える魂、凍れる槍、凍てつく風>


 練った濃厚な魔力で盾を作りつつ、その余剰分(・・・)で詠唱を始める。


<氷に秘めし射抜く槍>


 詠唱と共にボクの頭上に煌く氷の槍が生み出された。

 その槍がハイエルフの女性へと矛先を向けた。


<氷の槍(アイシクルランス)!>


 バシュ! という音と共に、氷で出来た鋭い槍がハイエルフの女性を襲うものの、彼女は一瞬で軌道を読んであっさりとかわした。

 氷の槍はそのまま地面へと深く突き刺さり、そして消えていった。


「はいっ、合格ですぅ」

「ふぅ、疲れたぁ」


 ハイエルフの女性、ララさんは、さっきまでの無表情から打って変わって笑顔満載になりました。

 ボクはそれを合図に、放出していた魔力を止めます。

 魔力の盾に絡められていた細剣が自由に動くようになると、ララさんは鞘に戻しながら「長かったですねぇ」と言ってくれました。


 ここはエレンドさんの家の裏手にある、ちょっとした庭です。

 天気の良い日には、ここで洗濯物を干したりしているんですけど、ここ一ヶ月ほど魔闘氣の訓練場として使っていたりします。

 魔力操作の出来る人なら、多少使えるレベルになるまで五日で覚えられるところを、ボクは一ヶ月かかりました。


 長かった……。


 しかもボクの場合細かい操作は一切やらず、魔力量で押し切った力任せの大出力で自分の周囲を囲うようなやり方です。

 普通の人がそれだけの魔力量を放出していれば三分で魔力切れになるけど、ボクは丸一日やっても余裕。

 更にそれだけ使っていても余っている魔力で、魔法すら普通に使えます。

 それだからこそ、魔力を通せば鉄をも簡単に断ち切るミスリルの細剣を、魔闘氣だけで止める事が出来ているのでしょう。


「でもこれでかなり強い魔法を受けても大丈夫ですよぉ。しかも魔闘氣を使いながら呪文を操るなんて、卑怯ですぅ」

「その魔法をあっさりとかわしたララさんに言われるのは、何となく腹が立つよね」

「槍の一本だけなら、軌道を読むのは簡単なんですよぉ。しかもー、撃つ直前に先端がどこを狙っているのかわざわざ教えてくれていましたしぃ」


 そりゃ槍の横の部分に当たってもそれほどダメージは入らないし。


「この魔闘氣でファイアドラゴンの炎の息吹(ブレス)も大丈夫かな?」

「魔力量を増やせば増やすほど、魔闘氣の防御力はあがりますぅ。でもさすがにドラゴンブレスにチャレンジするのは危険ですぅ」


 ファイアドラゴンの吐く炎の息吹(ブレス)は超高熱で鉄すら溶かすほど、との噂です。

 そして迷宮にはドラゴンの上位種である、古竜(エルダードラゴン)がいると伝わっています。


 迷宮が発見されてから三百年、人類が到達した最下層は八十階。

 その八十階のボスが古竜(エルダードラゴン)だったらしい。

 八十階まで到達した冒険者六名のうち四名が古竜(エルダードラゴン)に倒され、残る二名が命からがら逃げ出せたと伝わっています。


 迷宮の最下層へ行くには、必ず古竜(エルダードラゴン)を倒す必要があります。

 下位種の単なるドラゴンの息吹(ブレス)が防げないようでは、古竜(エルダードラゴン)には絶対勝てないでしょう。


 それに二十階層のボスがドラゴンの亜種であるAランクの魔物、ファイヤドレイクです。

 こいつも、ドラゴンの息吹(ブレス)に比べれば劣るものの、驚異的な熱量の息吹(ブレス)を吐いてくるそうです。


 でもまずは十一階層のエレキシャドウだね。


「リリスは免許皆伝したのか?」

「とりあえず使えるようになった感じですね」


 声をかけてきたのはエレンドさん。

 相も変わらず片手には蒸留酒です。


「ならばそろそろ迷宮に潜るかの。さすがに金が尽きてきた」

「うっ、それはごめんなさい……」


 ボクの訓練のせいで、この一ヵ月他のみんなは何もしていませんでした。

 いや、エレンドさんはリティの防具を作っていましたけど。

 さすがにミスリルはもう無いけど、極薄の鉄を幾層にも重ね合わせて作った鎧です。

 普通の鉄の鎧に比べれば防御力は低いものの、その分軽く出来ていて、スピード重視のリティにはぴったりです。

 更に彼の鎧と同じく音の出にくい構造になっている、エレンドさん自慢の一品。


「じゃあ明日、魔闘氣の実戦訓練がてら十階まで行きましょう」

「そうじゃの。リティの防具の調子も見てみたいしの」

「えええぇぇぇぇ?! またあの大きなオーガーですかぁぁぁぁ!」

「ララさんは先日、その大きなオーガーの頭を細切れにしてたよね」

「今度はオーガーの角を綺麗な状態で残して欲しいものじゃ」

「必死だったんですぅぅぅぅ!」


 オーガーの角は十階層の中で、一番高額に買い取ってくれる素材です。

 意外なことに煎じて飲めば漢方薬のように使えるし、割と硬いのでそのまま短剣の素材にも出来るし、更には魔法の触媒にも使えたりします。


「あれ、そういえばリティはどこに行きました?」

「鎧を着たまま走りに行っておる」

「まだ走っていたんですか」


 リティはエレンドさんに鎧を作ってもらった日から、それを着たままマラソンをしています。

 今までの革鎧に比べれば重いし、身体に馴染ませるためにも必要なのはわかるけど、よく毎日走れるものだよね。

 ボクなんて革鎧ですら重くて我慢できないくらいなのに。


「日々訓練じゃ」

「エレンドさんはお酒ばかり飲んでるです!」

「これはわしにとって栄養剤じゃ」


 お金が無いと言っていましたけど、蒸留酒代でなくなったんじゃないでしょうか。


「では明日潜るということで、いいかの?」

「はい!」

「はうぅぅぅ~、またあの暗い陰険な迷宮に潜るのですかぁぁ」

「それがアークの冒険者の仕事じゃよ」


 そう言ってエレンドさんは、蒸留酒をぐいっと煽りました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。