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魔女リリスは男に戻りたい  作者: 夕凪真潮
第一章 四人の冒険者、集う
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第1話



「リティ、水浴び終わったよ」

「はーい」


 ボクは水浴びを終わらせて服を着るとリティに声をかけました。

 狭い賃貸の狭い風呂だし、順番を決めて一人ずつ水浴びをするのが決まりごとです。


 でもそれは却って幸い。

 元男で転生者のボクとしてはね。

 何の因果か知らないけど、異世界へと転生して女になってしまいました。

 幼馴染の姉というか、妹のようなリティだけど、やはり異性、今は同性だけど、一緒にお風呂は恥ずかしいしね。



 さてボクたちは迷宮都市アークの冒険者ギルドに所属しているE+ランク冒険者です。

 ちなみにボクが魔法使いで、リティが魔弓士。


 魔法使いはメジャーな職業だけど、魔弓士というのは珍しい職業です。

 普通の弓士は矢を放つけど、魔弓士は魔法で作った矢を放つ。

 矢を購入しなくてもいいし、矢を持つ必要がないから荷物が軽くなります。

 しかし魔力切れを起こしてしまうと、何も出来なくなるけど。

 いえ、それは魔法使いも同じだけど。

 魔法使いのように汎用的に使える魔法こそ使えないものの、逆に一本の弓を放つのに必要な魔力量が魔法よりも少ないのがメリット。


 そんなボクたちは迷宮都市アークで小さな部屋を借りて住んでいます。


 このアークという町は、ど真ん中に迷宮の入り口があります。

 いえ、迷宮の入り口を囲うようにして作られたのがアークという町。


 この迷宮には様々な魔物が潜んでいて、しかも最下層にはリッチロードというアンデッドの王が鎮座していると言われています。

 しかし百階層以上あるとも噂されている迷宮で、過去誰一人として最下層まで到達した人はいません。

 到達した人がいないのに、なぜリッチロードなんていう災害指定の魔物が居ると言われているのは分からないけど。



 そしてボクの目的は、リッチロードに会って男になる魔法を教えてもらう事。

 一応リティにもボクが転生者で元は男という事を話してはいるけど、私たちの年だと良くかかる病気だね、と言って信じてくれません。

 本当の事なのにな。



「リリスちゃん、また大きくなってる」


 ボクが脱衣所兼風呂場から薄着で出てくると、リティが不満そうにボクを見てきました。


「え? 何が?」

「言わなくてもわかるでしょ。私のほうが一つ年上なのになぜこんなに差がついた!」


 ああ、胸ですか。

 確かにリティのは小さい。

 元々狐の獣人はスリムな体型の人が多いし、仕方ないのでしょうけど。


「知らないよ。でも、こんなに大きいと戦闘の時邪魔だよ?」

「邪魔と言えるくらい欲しいよ」


 リティは自分の胸を手で上げで大きく見せようと努力しています。

 だからそんな風にするのは、ボクの目に毒なんだけど。


「はいはい、分かったからさっさと水浴びしてきてよ」

「うー、年長者としての威厳がなくなるよ。いつか追い抜くからね!」

「その時を永遠に待ってます」


 勝者としての余裕かっ、と言いながらリティは風呂場へ入っていった。

 ボクは苦笑いをして部屋に戻ると、ギルドの依頼表が小さな机の上に鎮座していた。

 あとで提出してこないと。


 森の中でオークたちを退治したあと、匂いがきついとリティに言われて一旦家に戻ってきたのです。

 部位が入っている袋は紐で硬く結ばれていて、匂いが漏れないようにされている。

 リティは水浴びすると長いし、ちょっと行って来るかな。


「リティ! ギルドに報告しに行ってくるよ!」

「はーい、行ってらっしゃい」


 風呂場に居るリティに声をかけたあと、依頼表と袋を持ってギルドへと向かいました。



 アーク、というより迷宮は大きな島の中心部にあります。

 そして島である以上、外部との連携には港が必須。

 その港がある町ベルミはアークから徒歩一日半の距離にあり、この二つの町を結ぶ街道がアークのライフラインとなります。

 迷宮内で魔物から取れる素材だけでは人間生きていけません。

 島の中では資源が極端に少なく、武具に必要な鉱山なども当然ないのですから。

 食料も魔物の肉だけならばたくさんあるが、それ以外だって当然必要。


 必然的に外部から鉄や胴といった鉱石類、そして食料を購入し、代わりに魔物から取れた素材を外部へと売る。

 こうしてアークは成り立っています。


 アークは島の東側にある森へ向かって城壁が作られています。

 この森ははるか昔、まだ町が出来る前に迷宮から出て行った魔物たちが住んでいるところ。

 昨夜オークたちを討伐した場所もこの森になります。

 そして北側、特に街道に沿って万里の長城のような壁が作られています。


 その迷宮の入り口周辺が町の中心部となっています。

 入り口の周りは高い城壁で囲われており、その城壁の出入り口にギルドの建物が建って外へ魔物が出られないよう封じています。

 ただし作られた当初は、だけどね。

 今ではギルドに属した冒険者でないと入れないためのものになっていたりする。


 アークの町は当初は数百人だったけど、時代を経て今では二万人を超えるほどの大きさになりました。

 そのために町の拡張も過去2度あったらしい。

 その都度城壁が新しく外側へと作られ、城壁と城壁の間に人が住むようになっていきました。

 内部の城壁に行けばいく程、家賃が高くなっていくのは仕方ない事。

 一番外側の城壁の更に壁際が一番安いところになっています。

 そんなところに住むのは、ボクたちを含むお金のない冒険者ばかり。


 遠いんだよね。


 町の一番外側から中心部へ行くには片道一時間近くかかる。

 ぶっちゃけた話、ボクたちの家から町の中心部へいくより外壁の外にある森のほうが遥かに近い。

 このため迷宮へ潜るより森の魔物討伐のほうが多くなるのは仕方ないこと。

 迷宮へ潜って疲れ果てて戻ってきて、更に家まで一時間も歩く気になれないですしね。


 二つ目の城壁の門を潜り抜けました。

 ここまで三十分。

 一番外側の城壁内は無秩序に建てられた建物のため、道が入り組んでいる。だから時間がかかってしまいます。

 これは万が一、魔物に侵入を許してしまっても良いようにとギルドのお偉いさんは言っているけどそれは嘘だよね。


 単に無計画で町を広げた結果。

 町を作るシミュレーションゲームを昔やったことがあるけど、無計画に作るとちょうどこんな感じになるしね。


 そこから更に三十分をかけてようやくギルドまでたどり着きました。

 人口二万人を擁する迷宮都市アークの中心部です。


 ひときわ高くて大きく石で出来た、歴史的建造物の風格を漂わせている建物。

 入り口は大きく開けられていて、中は千人くらい楽に入れるほど大きな広間になっています。

 冒険者ギルドの受付ホール。

 依頼受付、依頼報告、鑑定、支払、その他相談等、五つのコーナーに分かれています。

 依頼を受付て、報告し、依頼料を支払カウンターで受け取る。

 場合によっては鑑定カウンターで素材の鑑定をお願いすることもあります。

 だいたいこのような流れになっていますね。


 このアークに在籍している冒険者の数は万を超える。

 つまり住人の半数以上が冒険者です。

 何しろ常時数百人がたむろしているし、効率よく回さないと時間がかかって仕方ないだろうしね。


 ボクはその中の依頼報告へと向かいました。



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