第九話「ファーストデート4」
二人は、電車の中。美咲に聞くと今日のデートは、ここまでらしい。二人が乗る最後尾の車両には、誰も客が乗っていない。いや、二人ではないかもしれない車掌がいる。といっても仕切りで見えていない。美咲は、満足そうに俊樹の右側に座ってガッチリ腕にしがみ付き、肩に寄り掛かりスヤスヤ眠っている。膝の上に落ちないように犬のぬいぐるみ。もし、この場に人がいればどこからどう見てもカップルに見えるだろう。俊樹は、一日中美咲に腕を掴まれていたがこれだけは、慣れることができないでいた。ふと見る美咲の横顔と視線を下げると綺麗に胸の谷間が出来ている。顔がカっと熱くなり目線を上にそらした。が、俊樹も男。ゆっくりジワジワと視線を下に向けていくと。
「どこ見ようとしてるのかなぁ?」
美咲が目を覚まして俊樹の顔をジッと見つめて問う。
「い、いや、何処も見てませんよ」
俊樹の額に冷や汗がツーっと下に向かって降りていく。
「どうしたの?汗かいてる」
美咲は、ポケットからハンカチを取り出して俊樹の冷や汗を拭う。
「あ~。美咲さんがずっとくっ付いているからかな~」
「私が悪いのぉ?そんなに熱い?」
「そ、そんなに熱くは……」
「じゃ、いいでしょ!」
さっきより強めに腕に抱きしめる。俊樹は、心の中でやれやれっと思った。
俊樹が降りる駅に近づいて二人は、ドアの近くに移動した。
「もう、お別れだね」
「今日は、楽しかったですよ。あまり女子と遊んだりしないんで」
「あまりじゃなくてしたことないんじゃない?」
「……鋭いですね」
「フフッ。ねぇ、また、誘ってもいいかしら」
「そうでね。また、どこか行きたいところとかあったらメールでもして下さい」
「本当!?嬉しいな。俊樹君って優しいよね」
「そうですかね?普通だと思いますけど」
「そんなに優しいのにどうして彼女出来ないのかしら?」
「痛い!美咲さん。それは、俺の心が痛みます」
「あ、ごめんなさい」
俊樹の地元の駅に到着してドアが開く。電車から降りて振り返る俊樹。
「じゃねぁ~バイバイ」
犬のぬいぐるみのしっぽを掴んで横に振る。少し笑って俊樹も手を振った。電車が発進して電車を見送った。
「さてさて、家に帰りますか」
最後尾だったため階段まで距離がある。急がずゆっくりとした足取りで歩く。すると、スマホが鳴った。画面を見ると美咲からのメールだった。
『今日は、本当にありがとうございました。部屋にぬいぐるみ置くからね。また、俊樹君と色んなところデートしたいな。ゆっくり休んで下さい。 美咲』
「律儀だな」
美咲のメールの文章を読んで思わず笑ってしまう俊樹。