第四十九話「見舞いと頼み事」
事故から10日後。午後2時。今日音葉は、美咲と共に俊樹が入院している病院に向かっていた。一昨日。俊樹からの電話に出ると俊樹の母からで、面会が出来ると言われた。一人で行くよりも美咲と一緒に行くことを決めた。病院は、学校と同じ町にあり駅からバスで直通で10分ほど。お互い別々の花束を持つ。
「俊樹君。元気かな?」
「きっと大丈夫よ」
「でも、音葉ちゃんから電話が来たときは、ビックリしたんだからね。いきなり俊樹君が事故に遭ったなんて、気絶するかと思ったんだから」
「なんて言えば良かったか分からなかったから、そのまま言ったんだけど」
「まぁ、嘘をつくより率直に言ってくれた方がよかったか」
そうしているとバスは、病院に到着した。あらかじめ俊樹がいる病室を聞いていたので、すぐにエレベーターに乗り5階で降りる。
「えーっと。ここね。508号室」
「個室みたいね」
「個室の方がいいでしょう」
音葉がノックをしようとすると。
「ちょっと、待って」
「どうしたの?」
「深呼吸させて」
大きく2回深呼吸する美咲。つられて音葉も2回深呼吸したあとノックをした。
「は~い」
中から聞こえてきたのは、どこかで聞いたことがある女の子の声だった。音葉と美咲は、顔を見合って首を傾げる。音葉がドアを開けると。
「あ、音葉先輩。美咲さん!」
「お久しぶりです」
ベットに上体だけリクライニングで起き上がっている俊樹と結愛がいた。
「俊樹君!!」
俊樹を見るなり美咲は、俊樹に抱き着いた。
「み、美咲さん。痛い痛い!」
慌てて離れる。
「ご、ごめんなさい。つい嬉しくなっちゃって」
「……体は、大丈夫なの?」
「花束預かります」
心配そうに病室に入って行く音葉。結愛は、二人から花束を預かる。
「意外とって感じですね。体の数か所を打撲で額を少し切った感じで右足が骨折しただけでした」
「救急車に一緒に居たから分かるけど、よくこれくらいですんだね」
「俺もそう思います。あんなトラックにぶつかってこの程度ですんだなって」
「聞いて下さいよ!トラックにぶつかったのって猫を助けるためだったんですよ!」
「えっ!猫ってあの場にいた黒猫?」
「あ、はい。信号で待ってたらあの黒猫が飛び出してそこにトラックが来たので、無我夢中で助けに行ったらこうなっちゃいました」
笑う俊樹。
「俊樹君は、優しすぎます。もし、当たり所が悪かったら大変でしたよ。それこそ死んじゃってたかもしれなかったですよ!分かる?悲しむ人がどれだけいると思ってるの?」
「ごめんなさい」
美咲に怒られる俊樹。
「でも、良かった。本当に」
優しく頭を美咲に撫でられる。
二人が病室に来てからしばらくして。
「私花瓶に水入れてきます」
「じゃ、花持つから手伝うわ」
「ありがとうございます」
結愛は、花瓶。音葉は、花束を持って病室から出て行った。残された二人。
「美咲さん。お願いがあるんですけど」
「何かしら?私にしかできないこと?」
「はい。美咲さんならきっとできるはずです」
「なんでも言って力になるから」




