第三十話「今の気持ち」
三時間目が終了して喉が渇いた俊樹は、一階に下りて自動販売機に向かっていた。ここ最近音葉と美咲に会ってなく、美咲から電話が来ても運が悪くその時、出れなくかけなおしても今度は、美咲が出ないとすれ違いが起きていた。
「えっと……」
お金を入れてボタンを押す。取り出してフタを開けて一口、炭酸のコーラが渇きを潤す。窓の外を見ると四時間目が体育の男子生徒がグラウンドに出てきた。
「外暑そう……」
「あれ、鈴木君」
呼ばれて振り向くとそこに音葉がいた。
「音葉先輩!」
「そこまで驚くことはないでしょ」
「す、すいません」
音葉も自動販売機で飲み物買って、フタを開けて俊樹の隣に立つ。
「勉強頑張ってる?」
「あ、はい。まぁまぁです」
「授業中寝ちゃだめだよ?」
「寝ないように頑張ってます」
そのあと、会話が途絶えた。しばしの沈黙の後。
「美咲と会ったりしてるの?」
「いえ、あの一泊からは、一度も。電話は、何度か来たりかけたりするんですけどお互い気が付かなくって」
「……そう」
「音葉先輩。一泊した時俺と美咲さん散歩に行ったじゃないですか」
俊樹の目を見て飲み物を飲みながら頷く。
「あの時、美咲さんに告白されたんです」
「え……」
突然のことで頭の中が真っ白になり呆然になる音葉。
「告白されて嫌じゃなかったです。まさか、美咲に言われるとは思ってなくって」
「それで?」
「返事は、保留です。だって俺、音葉先輩に告白して玉砕してそんなに日が経ってなかったんで、すぐに自分の気持ち変わらないですし」
「……」
「でも、美咲さんと付き合ったらどうなるのかなって思います」
「すずっ」
音葉が喋ろうとした時、タイミングが悪くチャイムが鳴ってしまった。
「何ですか?」
「うんん。何でもない」
歩き出す俊樹。音葉は、振り返って呼び止めようとしたが声が出なかった。気が付けば手が小刻みに震えていた。
「あ、音葉先輩」
俊樹が振り返って。
「俺は、まだ音葉先輩のこと好きですから」
そう言って走り出す。気持ちがまだ音葉にあると言えた俊樹とそれを聞けた音葉。二人は、その日なんだか幸せと感じた。




