第二十八話「12時同時刻」
三人で一泊二日を行った次の日の月曜日。時刻12時。桜水女子高等学校生徒会室。生徒会に持ち込まれる生徒の要望用紙に目を通しながら、片手でサンドウィッチを食べ時おり鼻歌が自然と出る生徒会長の美咲。
「う~ん。どうしようかな」
チラッと携帯を見る。もちろん鳴ってもない。だが、美咲は、待っていた。俊樹からの返事を今か今かと。しかし、鳴らないまま時間が過ぎて全ての要望用紙に目を通し終えた。残っているサンドウィッチを食べるのに集中する。
「今日は、ないかな~」
生徒会室のドアが開く。
「美咲。ちょっと来て!」
「どうしたの?」
なんだか急いでいる同級生に呼ばれて出て行く。会長の机に置いてかれた美咲の携帯が鳴った。
同時刻。川北第三高校三年B組。
「音葉どうしたのボーっとして」
「え?そう?」
窓際の席で友達と二人で昼食の弁当を食べていた。
「土日何かあったの?」
音葉の食べるペースが遅くなって、そのうち止まってしまう。
「べ、別に何もないけど」
「最近二年生の男の子と一緒に居るみたいけど」
音葉の身体がビクッと反応する。
「なるほど、その子と何かあったの?」
「す、鈴木君は!」
「鈴木君ね。で、その鈴木君と何かあったの?」
「……分からない」
「分からない?どいうこと?」
「なんだか気になるというかなんていうか……」
「鈴木君のこと好きなの?」
その言葉にすぐに反論しようとしたが落ち着いて窓の外を見る。
「好きかどうか……だって私鈴木君に前告白されて断ったのよ」
「前でしょ?今は、どうなの?一緒に居たりしてここ最近、鈴木君のことどう想ってるの?」
「……私は」
12時。屋上。ホットドックを右手に左手にスマホを持っている俊樹。
「美咲さん。電話に出ないな」
電話をかけた先は、美咲だった。一口食べる。校庭を見たり青空を見たりして俊樹は、一人で考えていた。美咲に告白されてその返事をどうしようか。音葉への気持ちは。
「俺は、どうすれば」
美咲の気持ちに応えるか。それとも音葉への気持ちあきらめずにいるか。
「音葉先輩のことは、好きだけど……告白してフラれたしもう駄目かもな」
屋上のフェンスにもたれて、気持ちの決断ができない俊樹だった。




