第十九話「一泊二日 3」
「いらっしゃ~い。予定より早かったわね」
家から出て来たのは、女性。おそらく俊樹の祖母なのであろう。しかし、美咲と音葉は、驚いていた。何故なら53歳の祖母と俊樹は、言っていたがどこからどう見ても、30代前半の顔立ち50代に見えない。
「お姉さん。こんにちは、紹介しますね。こちらは、同じ学校で先輩の町田音葉先輩」
「は、初めまして。町田です」
「隣は、お嬢様学校に通っている。神代美咲さん」
「ご、ご機嫌よう」
「町田さんに神代さんね。よろしくね。私は、トシちゃんの祖母の佳苗。気軽にカナちゃんって呼んでね。トシちゃん、両手に花ね」
「や、やめて」
「さぁ、中に入って」
三人は、家の中に入る。中は、とても広く部屋の一つ一つが畳み重視。
「トシちゃんは、こっち。二人はこっちね」
荷物を部屋の隅に置く。真ん中の引き戸を横に動かすと二人の部屋と繋がっている。
「三人ともこっちおいで」
呼ばれた方に行くとリビングのテーブルに、お菓子と飲み物が用意されていた。
「座って座って」
美咲、俊樹、音葉の並びで椅子に座ると三人が座った後に、向かい合う形で祖母が座り。
「で、トシちゃん。どっちが本命なの?」
「唐突に何聞いてるんですか!」
「え?普通聞くでしょ。こんな可愛いお嬢さん二人もつれて泊まりに来るなんて」
「可愛いのは、確かですけど」
「ちょ、鈴木君」
「あ、あぁ。すいません」
「フフッ。青春してるね。まぁ、ゆっくりしてって何かあったら呼んで私二階にいるから」
と言って祖母は、飲み物とお菓子の袋を一つ持って二階に行ってしまった。
「なんかすいません」
「なんで謝るの俊樹君?」
「いや、なんか祖母が本命はどっちだとか可愛いだとか」
「気にしてないからいいよ。それより、俊樹君が私たちのこと可愛いって言ってくれて嬉しかったよ」
「そこは、触れないでください」
「音葉ちゃんも実は、嬉しかったんでしょ?」
「聞かないでよ」
そう言っているが音葉の耳が赤くなっている。照れているのか暑さなのか分からない。
「俊樹君。カナちゃんて本当に50代?見た目は、どう見ても30代前半見えるんだけど」
「もうカナちゃん……。50代ですよ。初めて会った人は、50代に見えないって言いますね」
「一人暮らしなの?」
「はい、ちなみに仕事してるらしいんですけど教えてくれません」
「気になるね」
「本当に何してるか……あ、庭にある車庫には、フェラーリありますよ」
「……謎ね」
「謎ですよね」
俊樹と美咲が祖母のことで話し合っている最中音葉は、ポッキーをリスのようにカリカリっと食べていた。
「……可愛い」
耳は、さらに赤く真っ赤になっていた。