第十八話「一泊二日 2」
電車に乗り座席に座る音葉と美咲。二人の前に吊革に掴まって立つ俊樹。二人が会話している間俊樹は、スマホで乗り換えの電車の時間をチェックする。
「俊樹君。叔母様のお家までどれくらいなの?」
「このあと一回乗り換えてバス乗って……向こうに着くのは、三時間ぐらいですね」
「三時間……結構遠いんですね」
「大体祖父祖母の家って時間掛かりません?」
「私のお家は、もういないんですよ。だから、行ける友達とか凄く羨ましいです」
「私のところは、電車で1時間半ぐらいかな」
「いいないいな~」
「鈴木君のお祖母さんは、おいくつ?」
「いくつだ思います」
にやける俊樹。考える二人。
「じゃぁ、88歳」
「そうね。75歳かしら」
「……53です」
「「えぇ~!!」」
予想していたのと大きく差があったのでとても驚いている。
「祖母は、18でお母さん産んでで、お母さんも18で俺を産んでます」
「53のお祖母さん若すぎ!」
自分の太ももをポカポカ叩く美咲。
「ちなみに本人の前でお祖母さんとか言うと不機嫌になるんで注意してください」
「なんて呼んだらいいのかしら?」
「お姉さんって言っとけば大丈夫です」
「お姉さんね。分かったわ」
それから、1時間ほどしたら電車を乗り換え再び電車に揺られる。次第に窓から見える景色が変わり始め、住宅街が少なくなり田んぼや畑が多くなってきた。美咲は、小学生みたいに窓の外を見てはしゃぐ。そんな姿を見て笑ってしまう俊樹とその俊樹の笑っているのを音葉は、微笑む。
出発してから二時間後。駅に降りた。周りを見渡すと住宅街だが人通りは、ほとんどない。田んぼが所々ある。二人のカバンを持ちロータリーのバス停の時刻表を見る。バスの本数は、1時間に一本だけ。時計を見る。
「あ、来ますよ」
「ギリギリね」
「危なかった~」
俊樹の言った通りその直後にバスが到着した。バスに乗り込んで一番後ろの席に美咲、音葉、俊樹の順に座る。三人のほかに乗ってくる客はいなく、数分後出発した。住宅街から田んぼの傍の道を走り、その景色を珍しそうに見ている美咲。
「ここからどのくらいなの?」
「20分ぐらいですね。予定より早く着きそうです」
「着く前にメールしておいたら?」
「そうですね」
俊樹は、スマホを操作して祖母にメールを送信する。すると、1分後。すぐに返信が返ってきた。文章は、『了解。寄り道しないですぐにいらっしゃい』っと書いてあった。
停車ボタンを押して三人は、バスを降りた。降りたところは、コンビニの前でところどころ一軒家が建っており道路を挟んだ反対側は、田んぼが広がっている。
「へ~コンビニ出来たんだぁ」
「前までなかったの?」
「はい、何か買うってなったら車で一時間ぐらい離れたスーパーまで行かなきゃならなかったんで」
「大変ね」
「祖母の家あそこですよ」
俊樹が指をさす先に向かう。
「……ここ?」
「そうです」
祖母の家は、周りの家とは明らかに違う二階建ての平屋。庭もとても広く車が何台停められるであろう。家の周りは、手入れされた植木が何本もある。俊樹が先行して歩きその後ろを音葉と美咲が歩く。玄関の前で立ち止まりインターホンを押した。
「はーい」
中から声が聞こえゆっくりと玄関が開いた。