第十六話「行先は……」
俊樹と美咲は、並んで歩き音葉は、二人の前を2メートル離れて歩いている。俊樹と美咲は、音葉が気になって中々話す内容が思い浮かばなく、どうしようか困っていた。次第に駅に近づいてきて色々店が目につくようになる。その時、突然音葉が立ち止まり道路の反対側の店を見つめた後、二人に向き合い見つめいていた店を指さし。
「あそこの店に入らない?」
指さした先は、おしゃれなカフェだ。どうやら今日オープンしたみたいだ。店の前で数人の客が列になって並んでいる。
「私も入ってみたいです!」
「それじゃ行きましょ」
音葉と美咲は、道路を渡る。少し遅れて俊樹も後に続き列に並んだ。
「今日オープンだったんだ。知らなかった」
「貴女はここのこと知ってたの?」
「え、えぇ」
再び沈黙。このあと三人の番に回るまで会話がなく20分待って店に入ることができた。
店の中は、少し薄暗いがランプが淡く照らしてくれて、とても雰囲気が良くずっといたくなる感じがする。今日がオープンってこともあり満席なのだが、話し声があまり聞こえない。三人は、店の一番端のテーブル席に案内された。音葉と美咲が向かい合うように座った。俊樹は、迷った。どっちの隣に座ろうか。
「俊樹君。早く座ったら?」
「鈴木君?」
二人は、俊樹を見る。考える俊樹。ずっと立ってるのも変なので俊樹が出した答えは。
「失礼します」
音葉の隣に座った。一瞬美咲が悲しそうな顔をしたように俊樹は見えた。一つのメニューに三人は、見てどうしようか考える。
「俺ちょっとトイレ行ってきますね。アイスカフェオレ頼んでおいてください」
「分かったわ」
席を外して店員にトイレの場所を聞いて中に入った。
「ハッ!二人だけにして大丈夫だったかな」
俊樹は、手を洗っている時に気がついて急いで戻ってみると。
「本当に!?」
「そうなの。あそこの店のケーキ凄い美味しいなの!」
二人は、俊樹がいないうちに打ち解けたらしく、すごい楽しそうに笑って会話していた。
「じょ、女子ってなんだかスゴッ……」
戻って音葉の隣に座った。
「頼んでおいたわよ」
「あ、ありごとうございます」
「俊樹君!俊樹君!音葉ちゃんすっごく可愛いんだよ」
「お、音葉ちゃん?」
「音葉ちゃんね。こういうカフェとかね一人で入るの恥ずかしんだって」
「もう~やめてよ美咲。鈴木君に言わないでよぉ~」
「やだぁ~」
「……これが女子のなのか」
「何か言った?鈴木君」
「な、何でもないです」
「お待たせしました」
注文していたのがきた。俊樹は、アイスカフェオレ。音葉は、紅茶のダージリンとチーズケーキ。美咲も紅茶らしくイングリッシュ・ブレックファスト・ティーとモンブラン。
「美咲さんってよく紅茶飲んだりするんですか?」
「飲むよぉ。私の家は、色々紅茶を取り揃えてるから」
「さすがお嬢様ね」
「お嬢様なんかじゃないよぉ。ねぇねぇ。この三人でどこか行かない?」
「美咲は、何処に行きたいの?」
「何処でもいいよ」
「適当ね」
「う~ん。なら今度の土日に俺の祖母の家一泊します?」
「そこ田舎?」
食いつく美咲。
「田舎……周りに家とかありますけど平屋の一軒家で静かなところですよ」
「じゃそこ行きましょ!」
テンションが上がる美咲。一方音葉は。
「いいのいきなり。急に行くってなったら困るんじゃないの?」
「あとで電話して確認しますけど大丈夫だと思いますよ」
「そう?平気かしら……」
乗り気じゃない様子。
「じゃ電話して大丈夫ならメールしますね」
「はーい」
「……分かったわ。あ、鈴木君。私のメアド教えておくわ」
こうして今度の土日三人は、俊樹の祖母の家に一泊することに決まった。そして、この一泊が今後三人を大きく変えることになるは、まだ誰も思ってもなかった。