第十五話「下校」
「本気で言ってます?」
「私がウソついてると?」
「いえ……」
「決まりね。じゃ、放課後鈴木君の教室に行くわ」
「あぁ~。教室に来るより下駄箱のところの方がいいような」
「そう?じゃあそうするわ」
音葉は、担担麺を食べる。辛かったのか軽くむせる。
「大丈夫ですか!?」
俊樹は、自分のコップに入っている水を渡す。音葉は、ためらわず水を一気に飲み込んだ。
「はぁ~。ありがとう鈴木君。あ、水全部飲んじゃった」
「いいですよ。水がなくても食べられるんで」
ヒレカツを一切れ箸で摘んで口の中へ。音葉は、飲んで空になったコップを見る。
「この水……」
「どうしました?」
「鈴木君飲んだ?」
「いえ、飲んでないです」
「そう。もし飲んでた間接キスだったね」
今度は、俊樹がむせる。口の中のヒレカツを出さないように必死で口で押える。
「あわわ。ごめんね。大丈夫?」
「ん、んっ。だ、大丈夫です。急に変なこと言わないでくださいよ」
「……別に変なことじゃないと思うんだけどな」
「何か言いました?」
「ううん。何でもない。さぁ食べちゃいましょ」
教室に戻ると先に一也が戻って来ていた。
「よぉ~モテ男」
「それは、褒め言葉かな?」
「あぁ~羨ましい羨ましい。あんな数の後輩に囲まれて」
「モテるって罪だな」
スパーンっと綺麗な平手打ちを一也の額を叩く。
「イテテテ。てか、さっき町田先輩と飯食ってなかった?」
「あぁ~。空いてるから一緒にどう?って言われたから」
「なぁ、俺が思うに町田先輩、意外とお前のこと気になったりしてるんじゃないか?」
「何故そうなる」
「だってお前のことふってるんだぞ。普通ならそこでさようならだ。なのにあのお嬢様出現してから必ず町田先輩は、お前の前に現れてる」
「確かにそうだが……」
俊樹は、ここ何日か自分の身の出来事思い出す。
「ひょっとして今日放課後何かあるか?」
「す、鋭いな」
「内容は?」
「さっき飯食ってたらあのお嬢様から電話が来て、今日一緒に帰らないかって」
「それでそれで?」
「まぁ、一緒に帰ることになったんだけど、町田先輩に電話の内容教えたら私も一緒に帰るって」
一也は、俊樹の右肩をポンッと叩いて横に並んぶ。
「……俊樹。女とかかわる時は、気を付けろよ」
「そ、それってどういう」
一也は、それ以上何も言わなかった。その直後、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
放課後になり下駄箱で靴に履き替えて音葉を待つ俊樹。しかし、なかなか音葉が出て来ない。何かクラスで用事で出来たと思う俊樹。すると、いつの間にか校門の方でこの間みたいに、学生の人だかりが出来ている。まさかと思いながら俊樹は、校門の方へ走り学生たちの間をするりと抜けると思った通り、中心で音葉と美咲が向かい合っていた。
「あ、俊樹君」
美咲と目が合う。俊樹は、二人の間に入り音葉に向かい合う。昨日の帰りみたいな状態。俊樹の背中にピッタリ付く美咲。
「町田先輩何かしたんですか?」
「何もしてないわ。鈴木君を待っていたら校門にその子がいたから来ただけよ」
「……そうですか」
「それじゃ帰りましょうか。皆さん、ここにいても何もありませんわ。帰宅してください」
音葉にそう言われ周りにいた学生たちが散らばり少しづついなくなる。
「俊樹君。あの人……」
「えっと。美咲さんと電話してる時町田先輩傍にいて、電話の内容教えたら私も一緒に帰るって言い出して」
「えぇ~二人っきりが良かったのに」
「そこの二人」
「「はい」」
ニコッと笑みを浮かべて音葉が言う。
「帰りましょ」