第十三話「何故そこまで」
「うぅ~。俊樹君。この人怖いよぉ」
美咲は、音葉の態度に恐怖感を感じて俊樹の後ろに隠れてチラチラ音葉を見る。
「貴女は、なんでそんなに鈴木君にくっ付いているの?」
「え?だって俊樹君優しいんだもん」
「……」
音葉は、無言のまま俊樹の後ろに隠れている美咲を引き離し、美咲の正面に音葉その後ろに俊樹になる。
「鈴木君から離れなさい。彼は嫌がっている」
「そ、そんなことないよね俊樹君?」
「えぇ……」
「鈴木君は、貴女の無理やりなデートに嫌々付き合わされて分からないのかしら?桜水は、女子高だから男の人と刺激が欲しいんでしょ?」
「お、町田先輩。言いすぎじゃ」
「いいのよ。ここまでしないと付いた虫は、取れないわ」
「そ、そんなんじゃ……私は……ただ」
音葉に一方的に言われて目から涙が溢れはじめそれが落ちる。力が抜けてしまったのか膝から地面に着いてしまう。俊樹は、ポケットからハンカチを取り出して、美咲の元に駆け寄り涙を拭いてあげる。
「鈴木君。何しているの?」
「女の人が泣くの俺、耐えられないんで」
「……俊樹君」
俊樹は、音葉に向き合う。
「町田先輩。いくら何でも言いすぎます」
「私は、鈴木君の為を思って」
「だからって泣かせては、いけません!」
「……。そうね。さようなら」
音葉は、回れ右をして駅に向かって行ってしまった。俊樹は、呼び止めることが出来ずただ立ち尽くすだけだった。
音葉が去ってからしばらく俊樹と美咲は、駅前のベンチ座っていた。美咲が落ち着かせるため隣に座る俊樹。
「ごめんね。泣いたりして」
「い、いえ」
「あの人は、いつもあんなに怖いの?」
「全然違いますよ!いつも明るくて優しい先輩ですよ」
「……そうなんだ。余程俊樹君の大事にしてるのかな」
「まさかぁ~」
「鈴木君。正直に言ってほしいんだ。あの人が言ったみたいにこの前のデート嫌々だった?」
「そんなことないですよ。まぁ急なデートの誘いだったのでアタフタしましたけど、俺は、町田先輩が言ってたことは、思ってませんから」
「……本当に?」
「本当ですよ」
「俊樹君って本当に優しいね。ありがとう」
電車に揺られて窓の外をジッと見ている音葉。
「……なんで、あそこまで強く言ってしまったんだろう」