達郎のビッグな心
掲載日:2026/03/31
達郎は驚いた。考えたこともなかった。隣の席の桜さんにノートを見せるなんてことが起きうると言うことを。
四時限目の授業が終わり、昼休みに入る頃。突然、桜は私に話しかけてきた。
「達郎くん、ノート見せてくれない?板書写せてないところがあってさ、少しでいいから」
私はもちろん、いいよと言った。けれど、すぐにノートを渡すのはためらった。それを彼女は不思議に思ったみたいだった。
「ごめん、やっぱり恥ずかしいや。放課後でいいかな」
自分の気持ちに嘘をついたことはあるけれど、なんだかこの時は嘘をつくのは良くないと思ったんだ。
桜は分かったと言って、じゃあ放課後に見せてね、見せれなくてもいいから、その時は友達に聞くことにすると言った。私は達郎。まだノートを他の人に見せたことはない。見せる機会がなかったし、そういう風になったとしても、なんとかなるだろうと考えていた。けれども実際に見せる場面に出くわすと、どうも緊張と恥ずかしさが重なって、ノートを見せる行為は胸から心臓が飛び出るのではないかと思ってしまった。




